2016 Fiscal Year Annual Research Report
バラ科サクラ属に特異な自家不和合性認識機構とその進化遺伝学的な成立過程の解明
Project/Area Number |
15H02431
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田尾 龍太郎 京都大学, 農学研究科, 教授 (10211997)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 剛士 京都大学, 農学研究科, 助教 (50611919)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 果樹 / 受粉受精 / 自家不和合性 / 果樹ゲノム科学 / 組換え遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
バラ科サクラ属果樹の多くは配偶体型自家不和合性を示し,栽培や育種を行う上で大きな障壁となっている.本研究では,これまでに我々が得た研究成果および他のグループが論文等で発表してきた結果に基づいて構築した自家不和合性認識反応の作業仮説を検証する形で研究を進め,サクラ属に特異な自己非自己認識の分子機構を明らかにし,さらにその進化遺伝学的な成立過程を解き明かすために立案されたものである.研究2年目にあたる本年度は,以下の実績を得た. (実験1 バラ科のS遺伝子座の進化学的解析)バラ科内に異なる自家不和合性認識機構が存在する背景には,バラ科におけるS遺伝子座の進化が関与していると考えられる.昨年度までに,全ゲノム配列が公開されているリンゴ,エゾヘビイチゴ,モモの全ゲノム情報を活用して,S-RNase遺伝子の進化系統解析を行い,バラ科のS遺伝子座がバラ科の成立後に重複進化したことを示したが,本年度はサクラ属の花粉で発現するF-box遺伝子の網羅的解析を行い,サクラ属のS遺伝子座の進化過程を定義し,その内容を論文報告した. (実験2 SLFLsのSCF複合体形成能の確認)プルダウンアッセイとqPCRにより,SLFLsがPavSSK1およびPavCul1AとSCF複合体を形成することを確認した.またバインディングアッセイによりPavSLF2が,他のSLFL1やSLFL3よりも,より多くの種類のS-RNaseと結合することを示し,SLFL2がジェネラルインヒビターとしてふさわしい性質を持つことを示した. (実験3 形質転換実験)SLFLsがGI候補である可能性をペチュニアを用いた形質転換実験で検証するための実験を開始し,予備的な結果の報告をした. (実験4 SLFLsによるS-RNaseのin vitroユビキチン化実験)昨年度に引き続きSLFLsによるS-RNaseのユビキチン化を,ユビキチン抗体を用いたin vitro実験により検証したが,これまでのところS-RNaseのユビキチン化はみとめられていない
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標であるサクラ属に特異な自己非自己認識の分子機構とその進化遺伝学的な成立過程の解明には至っていないが,自家不和合性認識反応の作業仮説を検証する形で研究が進展したので,おおむね順調に研究が進んでいると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
バラ科サクラ属の自家不和合性認識機構の解明にあたり,サクラ属植物の形質転換が困難なことがネックとなっているため,合成オリゴヌクレオチドを用いたin vitroにおける遺伝子発現のノックアウトやウィルスベクターを用いたVIGSを利用する予定にしている. さらに自家不和合性共通因子変異体の解析を進めるとともに,in vitroでの花粉管伸長試験により自家不和合性反応を再現させることも目指していく.
|
Research Products
(10 results)