2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞壁マトリックス成分の合成・梱包・輸送と堆積のダイナミクス
Project/Area Number |
15H02454
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高部 圭司 京都大学, 農学研究科, 教授 (70183449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
高野 俊幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (50335303)
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10293911)
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (20734221)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高圧凍結法 / ゴルジ装置 / ヘミセルロース / 生合成 / 超遠心法 / 密度勾配遠心法 / 免疫標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の経費で設置した高圧凍結装置でユーカリ分化中木部を高圧凍結した。凍結試料は-80℃に冷却された2%OsO4アセトン溶液で置換・固定し、室温にもどしてエポキシ樹脂に包埋した。コントロールとして、ユーカリ分化中木部を3%グルタルアルデヒド固定、1%OsO4固定し、エポキシ樹脂に包埋した。両者の試料から、光学顕微鏡用には1μm厚さの横断面切片を作製し、電子顕微鏡用にはおよそ0.1μm厚さの横断面切片を作製した。 光学顕微鏡用切片には多糖類を選択的に染色するPAS反応を行った。細胞壁ならびに細胞質基質の染色性は明らかに高圧凍結試料で高く、水溶性多糖類や単糖類が細胞壁や細胞質基質に保持されていることが推察された。 抗キシランモノクローナル抗体を用いて分化中木部を標識すると、高圧凍結法、化学固定法の試料とも、二次壁形成中の細胞壁が標識された。標識の局在、強さは両者で大きな違いはなかった。 超薄切片は、酢酸ウラニル・クエン酸鉛染色して透過型電子顕微鏡で観察した。高圧凍結試料では、一部に無氷晶で良好な凍結像が得られたが、多くの細胞では高圧による細胞や細胞壁の破壊が起こっていた。試料を入れるホルダー内に気泡が存在するとこのような試料の破壊が生じるとのことから、脱気しながら試料をホルダーに入れ高圧凍結を試みたが、試料が破壊される現象の解消には至っていない。 超遠心法による分化中木部からのゴルジ装置の単離は、実験方法の確立に至った。すなわち、分化中木部から超遠心法によりミクロソーム画分を得て、さらにミクロソーム画分から密度勾配遠心法によりゴルジ装置に富む画分を得るに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高圧凍結法と一般的な化学固定法の試料を比較すると、明らかに前者の方が多糖類の選択的染色法で強く染まる。これは、細胞壁中に存在するであろう水溶性多糖類が高圧凍結法で保持された結果と思われる。 一方、想定外の出来事は、高圧凍結された細胞が、高圧により細胞が破断されてしまったような電子顕微鏡像を呈することである。この原因の1つが、試料中、あるいは試料周辺に気泡が入ることとされる。試料から脱気を行い高圧凍結に供しているが、現時点ではよい固定像が得られていない。 超遠心法によるゴルジ装置に富む画分の取得は方法が確立した段階で、今年度は本格的なゴルジ装置の単離に入る。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は以下の実験を実施する。 ①高圧凍結法による分化中木部の固定法の確立。分化中木部を凍結する前に、試料採取が容易で気泡も入りにくい根端細胞の高圧凍結を実施する。これにより良好な無氷晶の細胞像が得られたなら、ヒノキやユーカリの分化中木部を減圧下において脱気した後、高圧凍結する。分化中木部の良好な無氷晶凍結像が得られたなら、抗キシランモノクローナル抗体、抗グルコマンナンモノクローナル抗体、抗ガラクタンモノクローナル抗体を組み合わせて二重標識を行い、ゴルジ装置の標識を定量的解析する。また、同様の方法を化学固定された分化中木部にも適用してゴルジ装置の二重標識の定量的解析を行い、高圧凍結法との違いを評価する。ゴルジ装置中のヘミセルロースは高アセチル化していることが予想されるため、超薄切片に対して弱アルカリ溶液で脱アセチル化処理を行い、抗体を用いて二重標識を行い、定量解析する。 ②超遠心法によるゴルジ装置の単離と糖分析:ヒノキやユーカリの分化中木部を削り取り、一時的に液体窒素中で凍結保存する。凍結保存された試料を解凍後、超遠心機でミクロソーム画分を得て、さらにショ糖密度勾配遠心法によりゴルジ装置に富む画分を得る。その画分に多糖類が含まれていることを確認した後、MALDI-TOF-MSにより多糖類のアセチル化度を調べる。完成された木材細胞壁から抽出精製されたヘミセルロースより、同様の方法でアセチル化度を調べる。 同様にしてショ糖密度勾配遠心法により得られた様々な密度のミクロソーム画分を用いて、シナピルアルコールやシリンジンの輸送実験を行う。
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Research Products
(1 results)