2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H02483
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岩淵 喜久男 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00203399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 仁 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (10291957)
佐藤 令一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30235428)
松浦 健二 京都大学, 農学研究科, 教授 (40379821)
天竺桂 弘子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80434190)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度に引き続き、液性排除因子の解析をタンパク質解析と発現遺伝子解析の両面から進めた。タンパク質解析には大量の寄主体液が必要であるが、今年は東京近郊の寄主昆虫にノゼマが流行し、この微胞子虫が飼育コロニーに感染するなど予期しない問題が発生した。このためサンプリングに問題をきたしたが、一方、簡易生物検定法の確立、および発現遺伝子の解析からの2個の排除因子候補遺伝子の選定をおこなうことができた。 兵隊幼虫は雌のほうが攻撃能に優れ、異種寄生蜂の侵入に対して増員することができる。一方、液性排除因子については、雄では異種寄生蜂の卵に対しても殺虫活性のあることが確認された。すなわち野外で最も多くみられるmixed brood (同一寄主への雌雄2卵の寄生)では、雌雄の攻撃能の違いが効果的に補足された強力な雌雄協力による防御状態にあることが示され、ネイチャー姉妹誌Scientific Reportsに論文発表した。さらに、その進化理論について投稿論文の準備を進めた。 防御における性的差異は、体細胞の性決定遺伝子dsx によってもたらされるものと推察される。一般に雌型dsxと雄型dsxは、転写の際の選択的スプライシングによって作られることが知られている。本種では、雄型dsxのmRNA配列が予測されており、これを基に雌型dsxのRNAの推定塩基配列を推定した。また、カースト分化を決定する生殖細胞決定遺伝子vasaをクローニングし塩基配列を決定した。この成果について論文投稿の準備を進めた。 雌で起こる環境ストレスによる兵隊幼虫の増員について、飼育温度、高温刺激などの環境要因が兵隊幼虫の増員を引き起こすことを実証した。さらにカースト分化の分子マーカーvasaの発現調節について解析をおこなった。これらの成果について論文作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液性因子の解析では、タンパク質からの解析は微胞子虫感染のため遅れたが、RNAseq等からの解析は予定以上に進捗した。液性因子と兵隊幼虫による異種寄生蜂に対する防御における雌雄の協力に関する論文をネイチャー姉妹誌Scientific Reportsに発表できたことは大きな成果である。また、性的差異の分子基盤となる性決定遺伝子dsxのRNAの推定塩基配列を雌雄について決定、さらにカースト分化で重要な役割を果たす生殖細胞決定因子遺伝子vasaをクローニングし、RNAの塩基配列の決定に至るなど、おおむね順調な進捗といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
液性因子ならびに兵隊幼虫の性的差異に関わる分子基盤の解析を進める。関連が推定される遺伝子の塩基配列と雌雄の胚子発生に伴う発現動態を解析する。また、カースト調節への環境要因の影響について精査するとともに、vasaの発現への影響を解析し、性的差異発現の分子機構解明に向ける。また、雌雄における防御手段の差異について生態学的意味、寄主に対する雌雄同時寄生の意味など、実験を合わせた調査を行うとともに、進化の数理解析研究を引き続き進める。
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Research Products
(5 results)