2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02487
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糸状菌 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化窒素(NO)は、強い細胞傷害活性をもつ活性ラジカルであり、自然免疫系による病原菌の感染防御の機能を持つことが知られるが、病原性真菌のNO応答については不明な点が多い。本研究では、モデル真菌であるAspergillus nidulansの生育のNO耐性に関わる遺伝子を探索した。これまでに、NOジオキシゲナーゼ、新規なニトロソ化ペプチドであるニトロソチオネイン、酸化ストレス耐性に関わる転写因子NapAなどのNOの解毒に関わる因子を見出すことができた。本年度は、昨年までに見出したプロリンの生合成に関わるProCおよびアミノ酸生合成の一般制御が本菌の生育のNO耐性に関与するメカニズムの解明を目指した。本菌は、低濃度のNO存在下ではプロリンや他の多くのアミノ酸の細胞内濃度が上昇し、高濃度のNO存在下では低下していた。さらに、培地へのプロリン添加によってプロリン生合成能欠損株(proA-)のNO感受性が回復したことから、細胞内アミノ酸量がA.nidulansのNO耐性にかかわることが考えられた。一方、本研究で見出したNO耐性遺伝子rbgBのSaccharomyces cerevisiaeにおけるオルソログは、アミノ酸生合成の一般制御に関わると予想されている。A. nidulansのrbgBとアミノ酸生合成関連遺伝子argB、prnBの転写はNOにより活性化されており、アミノ酸一般制御に関わる転写因子cpcAの欠損株ではこのNOによる転写活性化が観察されなかった。またcpcAの欠損はNO感受性と過酸化水素感受性を引き起こした。以上の結果から、転写因子cpcAを介してNOに応答し、アミノ酸代謝系を亢進するというA. nidulansの新たなNO耐性機構が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに見出したNO耐性遺伝子の機能についての生化学的研究を行い、アミノ酸の生合成制御とNO耐性のかかわりについての詳細を解明することができた。今後は、これに関わる細胞内のアミノ酸レベルの変化や生合成遺伝子の転写制御についての解析を進める予定である。その他の課題である二次代謝のエピジェネティック制御については、サーチュインアイソザイム遺伝子の遺伝子破壊株の作製を終えた。また、NO感受性変異株の遺伝学的解析と次世代シーケンサーでのゲノム解読を終えたのでインフォマティクス解析を開始できる状況となった。これは、概ね計画どおりである。
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Strategy for Future Research Activity |
既に見出したアミノ酸関連のNO耐性遺伝子については、今後は、これに関わる細胞内のアミノ酸レベルの変化や生合成遺伝子の転写制御についての解析を進める予定である。二次代謝のエピジェネティック制御については、作製したサーチュインアイソザイム遺伝子の遺伝子破壊株の二次代謝能の解析やクロマチンの生化学・分子生物学的解析を行い、分子機構の解明を行う(平成28-29年度)。また、解読できたゲノム配列のインフォマティクス解析と、候補遺伝子の選抜をとおして、NO感受性変異株の変異遺伝子の同定を行い(平成28年度)、平成29年度以降の機構解明につなげる計画である。
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Research Products
(4 results)