2017 Fiscal Year Annual Research Report
生活習慣に影響する遺伝要因の解析とメンデルランダム化による生活習慣病コホート研究
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15H02524
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
若井 建志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50270989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 恵太郎 佐賀大学, 医学部, 教授 (50217022)
嶽崎 俊郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (50227013)
栗木 清典 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (20543705)
清水 厚志 岩手医科大学, いわて東北メディカル・メガバンク機構, 特命教授 (30327655)
中川 弘子 愛知県がんセンター(研究所), 疫学・予防部, 主任研究員 (70738608)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子遺伝疫学 / コーヒー / 身体活動 / ストレスコーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は生活習慣と関連する遺伝要因をゲノムワイド関連解析(GWAS)により検討し、下記の知見を得た。1.日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)参加者(35~69歳の男女)のうち6,312名における検討にて、コーヒー摂取量との関連が示唆される2つの新規遺伝子座を見いだした(P < 1×10-6)。うち1遺伝子座内の一塩基多型(SNP)rs2074356は、同研究の他の参加者4,949名でもコーヒー摂取量との関連が再現され、2集団を合わせた分析ではゲノムワイド有意(メタ解析のP値 2.2×10-16)であった。2.J-MICC研究の参加者14,088名(探索用 6,403名、再現性検討用 7,685名)において、ストレスコーピングと遺伝要因との関連を検討したところ、感情表出(「いやだと感じていること、思っていることを表情に出す」)および解放(「なりゆきにまかせる」)による対処の個人間変動のうち、それぞれ19.5%、6.6%を説明すると推測された。また遺伝子レベルの解析にて、シナプス成熟制御に関与する遺伝子であるFBXO45が感情表出に有意に関連していた。3.J-MICC研究参加者13,980名での検討にて、余暇の身体活動(4メッツ以上)と関連する新規のSNPが同定され(P = 2.5×10-8)、愛知県がんセンターの病院疫学研究参加者2,036名においても有意な関連が再現された(メタ解析のP値 2.2×10-9、論文投稿中)。 これらの結果は生活習慣に影響する遺伝的要因の決定、生活習慣決定の生物学的メカニズムの解明に有用なばかりでなく、測定の誤りや交絡を生じやすい生活習慣自体の代理指標として生活習慣と関連する遺伝的要因を用いる(メンデルランダム化)ことで、生活習慣が疾患リスクに及ぼす影響の評価にも役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生活習慣と関連する遺伝子多型の検討はある程度、コーヒー飲用および余暇の運動については新規の関連遺伝子座も発見した。しかしメンデルランダム化による生活習慣と疾病リスク、病態との関連の検討は今後の課題に残されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き生活習慣(喫煙、飲酒、食事、飲料摂取、運動、睡眠など)と関連する遺伝子多型を、J-MICC(日本多施設共同コーホート)研究参加者のうち約14,500名について、ベースライン調査により得られた生活習慣データとゲノムワイド関連解析(GWAS)用タイピングデータを用い、GWASにより分析する。関連する一塩基多型(SNP)が報告されている生活習慣に関しては、候補遺伝子についての解析も併用する。既存のGWAS用タイピングデータ、または上記の分析に含まれなかった研究参加者のデータおよびDNA試料を用い、GWASにより見いだされたSNPと生活習慣との関連が再現されるかを検証する。 さらに生活習慣に影響を及ぼす遺伝要因の網羅的探索により得られた生活習慣と関連するSNP(複数の組み合わせも含む)と、疾病リスク、病態との関連を、J-MICC研究参加者において検討(メンデルランダム化解析)することにより、生活習慣と疾病、病態との関連を、交絡要因や因果の逆転の影響を最小限にして検討する。まず生活習慣と関連するSNPと、J-MICC研究ベースライン調査による健診データとの関連を横断研究により検討する。関連を検討する疾病、病態は、高血圧症、糖尿病・耐糖能異常、脂質異常症、肥満・やせ、高尿酸血症、肝機能異常などである。さらに生活習慣と関連するSNPと、がんなど疾病罹患との関連をコホート研究により検討することを試みる。
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Research Products
(5 results)