2015 Fiscal Year Annual Research Report
がんの「分子標的予防法」のヒト予防介入試験への応用
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15H02529
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20186993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 秀樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30351795)
曽和 義広 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70315935)
友杉 真野 (堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
飯泉 陽介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20533178)
渡邉 元樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40723581)
増田 光治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (10305568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子予防 / がん予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)大腸癌細胞株LIM1215(APC経路失活)を用いて、機能性果実飲料の評価を行った。 ①癌細胞増殖抑制能について、コロニー形成試験により評価した。機能性果実飲料は培養液中へ直接添加し、形成されたコロニー数を比較したところ、少ない添加量でコロニー形成を抑制するものが複数見つかった。これら癌細胞増殖抑制能・コロニー形成抑制能の強いものを中心に、フローサイトメトリーにより細胞周期を測定したところ、G1期停止を認めた。また、最も強くG1期停止作用を示した機能性果実飲料を曝露した細胞から抽出したタンパク質をウエスタンブロッティングにより解析したところ、RBタンパクの脱リン酸化即ちRB再活性化がおきていることが確認出来た。②アポトーシス誘導能について、培養液中へ機能性果実飲料を直接添加し、一定時間培養後フローサイトメトリーにより測定・評価した。殆どの機能性果実飲料は同じような添加量でアポトーシスを誘導し、順位付けは難しかった。③抗炎症能について、TNFα惹起によるIL-6誘導抑制能で比較検討したところ、少ない添加量で抗炎症作用を示すものが複数見いだせた。 2)上記の各評価で上位のものを組み合わせて、同様の評価を行った。相乗効果を示したり効果を相殺するような組み合わせは見つからなかったことから、評価した中で最も強い組み合わせを選択した。 3)MEK阻害剤trametinibとRAF/MEK阻害剤CH5126766による大腸癌細胞株に対する作用を評価した。MEK阻害剤trametinibは、LIM1215、SK-CO1(APC経路失活、KRAS変異)やHT29(APC経路失活、BRAF変異、p53変異)といった主ながん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異度合いの異なる細胞株いずれに対しても同様の濃度で強いG1期停止作用を示したが、特にSK-CO1に対しては高濃度で強いアポトーシス誘導効果も示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度の主たる研究計画であったin vitroでの機能性果実飲料の評価を行えた。 即ち、癌細胞増殖抑制能について、コロニー形成試験、フローサイトメトリーにより細胞周期測定、及びウエスタンブロッティングによるRBタンパクの脱リン酸化の3項目で検討した。アポトーシス誘導能についても評価したが、その効果に強弱は見いだせなかった。抗炎症能についても検討した。これらの結果より、RBを再活性化し、抗炎症能を併せ持つ複数の機能性果実飲料を選択した。 また、各評価で上位のものを組み合わせて、同様の評価を行い、評価した中で最も強い組み合わせを選択した。 しかし、機能性果実飲料の評価に関して、抗酸化能の評価については、文献ベースで一部行ったが、実際の実験的評価が終了していない。 MEK阻害剤trametinibとRAF/MEK阻害剤CH5126766による複数の大腸癌細胞株に対する作用を評価した。MEK阻害剤trametinibは、LIM1215、SK-CO1とHT29、主ながん遺伝子・がん抑制遺伝子の変異度合いの異なる細胞株いずれに対しても同様の濃度で強いG1期停止作用を示したが、特にSK-CO1に対しては高い濃度で強いアポトーシス誘導効果も示した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、主にLIM1215大腸癌細胞株(APCの経路失活)を用いて、機能性果実飲料のRB再活性化能、アポトーシス誘導能や抗炎症能を評価し、より効果の強い機能性果実飲料やその組み合わせを探る。また、作用機序の検討も試みる。更に、文献的に報告されているものも含め、機能性果実飲料が実際に抗酸化能を有することを確認する。 一方で、現時点で最良と判断した機能性果実飲料の組み合わせについて、in vivoでの大腸発癌予防効果を評価する。元の計画では、in vivo評価モデルは家族性大腸腺腫症モデルマウスとしてAPCminマウスを用いる計画であったが、AOM-DSS惹起大腸化学発がんマウスを用いるよう計画を修正する。このモデルマウスは、β-カテニン変異(APC変異と同じ経路で発癌促進)を頻回に生じるのみならず、APCminでは殆ど報告がないKRAS変異をも高頻度で生じる。また発がん促進として消化管に炎症を惹起させるプロセスを含む、などから今研究計画に適していると判断した。 家族性大腸腺腫症モデルマウスを用いて、MEK阻害剤trametinibとRAF/MEK阻害剤CH5126766の発がん予防効果とRB再活性化能の評価等を行う。 APCminと同様の遺伝子改変マウスApcD716 マウスに対するtrametinibの発がん予防効果について、局所環境でのStromal cellのCOX-2誘導抑制によると、他施設より報告された(Cancer Sci. 2015;106(6):692-9)が、腫瘍部、腸管上皮細胞でのRB再活性化に関する報告は無く、RAF/MEK阻害剤CH5126766の報告も未だ無い。
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