2016 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞を用いた肺の臓器再生と疾患病態解明のための革新的バイオリソースの開発
Project/Area Number |
15H02537
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三嶋 理晃 京都大学, 医学研究科, 名誉教授 (60190625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (10226681)
半田 知宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (10432395)
浅香 勲 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (10543639)
平井 豊博 京都大学, 医学研究科, 教授 (20359805)
金 永学 京都大学, 医学研究科, 助教 (20456883)
谷澤 公伸 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (20639140)
佐藤 篤靖 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30706677)
佐藤 晋 京都大学, 医学研究科, 助教 (40378691)
伊藤 功朗 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (40447975)
長崎 忠雄 京都大学, 医学研究科, 医員 (40747862)
堀田 秋津 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点講師 (50578002)
小熊 毅 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50601324)
後藤 慎平 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50747219)
室 繁郎 京都大学, 医学研究科, 講師 (60344454)
松本 久子 京都大学, 医学研究科, 助教 (60359809)
小笹 裕晃 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80572015)
永井 宏樹 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (80711605)
陳 和夫 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (90197640)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子細胞呼吸器学 / iPS細胞 / 肺臓器再生 / 疾患モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
肺の再生に向けて、ヒトiPS細胞から分化誘導した肺胞上皮細胞と線維芽細胞および血管内皮細胞を集塊状にした肺芽lung budの開発を進めた。NOGマウスへの移植により腎被膜下への定着は達成できたので、肺への定着を目指して、経胸壁、経気管と手技を工夫して細胞移植を試みたが、すぐには定着は確認出来なかった。一方、腎被膜下については移植した肺芽が3ヶ月以上、定着していることが確認できた。しかし、NKX2.1陽性にも関わらず、SFTPCをはじめとするサーファクタント蛋白質の発現は著しく低下していた。iPS細胞由来のII型肺胞上皮細胞は試験管内では三次元共培養下に長期培養が可能になったが、平面に播くと数日以内にはサーファクタント蛋白質の発現が極端に低下してしまうため、三次元培養と線維芽細胞との共培養がII型肺胞上皮細胞の肺胞幹細胞としての性質を維持するために重要な役割を果たしていることが示唆された。そこで、細胞の移植・定着方法の開発と並行し、線維芽細胞なしでもII型肺胞上皮細胞を長期培養できる因子の同定作業も進めた。培地組成を工夫することにより一定期間、線維芽細胞との共培養なしで、サーファクタント蛋白質の発現を維持することができた。このことから、ヒトiPS細胞から分化させた肺胞上皮細胞を定着させるには移植後の微小環境のコントロールが重要と考えられた。 またバイオリソースの開発に向けては、CRISPR-CAS9によるゲノム編集技術を応用し、疾患モデルとなるノックアウト細胞株の作成やDNA相同組換えによる疾患原因遺伝子の修復、新規レポーター細胞の開発を進めた。また、分化した呼吸器上皮細胞を用いて薬物負荷試験のモデル開発やレポーター細胞に依存しないII型肺胞上皮細胞の単離方法の開発をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度はまず、ヒトiPS細胞から分化誘導した肺胞幹細胞と線維芽細胞および血管内皮細胞を集塊状にした肺芽lung budの開発を進めた。NOGマウスへの移植により腎被膜下への定着は達成したが、経胸壁的には肺への定着は確認できなかったため、ブレオマイシンやナフタレンなどによる肺障害後の細胞定着の条件検討を進め、移植と定着のための新たな手法の開発を進めた。また、腎被膜下に定着したlung budの解析をしたところ、II型肺胞上皮細胞を示すサーファクタント蛋白質の発現が低下していることが分かり、別の細胞に分化してしまった可能性が考えられた。このため、試験管内で線維芽細胞なしでもII型肺胞上皮細胞を分化させずに維持できる条件を検討した。また、レポーター細胞がなくてもII型肺胞上皮細胞を単離出来る手法の開発を進めた。 一方、新規疾患バイオマーカーの探索に向けては京都大学iPS細胞研究所の協力を得て、CRIPSR-CAS9を用いたヒトiPS細胞における遺伝子のノックアウトと呼吸器疾患の責任遺伝子をDNA相同組換えで修復するノックインの技術を確立した。この方法を用いて、時間はかかるが同一ゲノムを背景とした疾患モデル細胞と遺伝子修復後の細胞を高い精度で比較することが可能になった。例えば、Hermansky-Pudlak症候群の原因遺伝子の1つであるAP3B1(HPS2)遺伝子を修復して同一ゲノム背景下での表現系の比較が可能になった。それ以外にもヒトiPS細胞由来の呼吸器系への分化を検出し単離するためのレポーター細胞用ベクターの作成、呼吸器疾患の様々な原因遺伝子のノックアウト細胞株を樹立した。ヒトiPS細胞を用いた試験管内での疾患モデリングは、遺伝子発現だけでは評価が難しく、形態学や細胞動態などのパラメーターもバイオマーカーとして重要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は引き続き、ヒトiPS細胞由来の肺胞上皮細胞を長期間肺に定着させ機能させるための移植方法の開発を進める。特にII型肺胞上皮細胞の組織幹細胞としての機能維持のための微小環境が重要と分かってきたので、その機構の解明を進めることでフィーダー細胞に依存しないII型肺胞上皮細胞の長期培養法の開発にも役立てる。NOGマウス肺への定着の実現には肺芽lung budや脱細胞化肺をはじめとする足場材料を用いた移植法の検討を進めていく。疾患病態研究に向けては、引き続き、作成したベクターを導入したノックイン、ノックアウト細胞株の樹立、稀少呼吸器疾患の疾患特異的iPS細胞の樹立、その遺伝子修復を進め、それらを用いた病態モデリングと研究開発ツールの拡充を進める。また、iPS細胞を用いて得られたバイオマーカーについて、臨床検体を用いた評価も可能なものから進めていく。
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