2015 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究
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15H02552
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山脇 成人 広島大学, その他の研究科, 教授 (40230601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淵上 学 広島大学, その他の研究科, 助教 (40403571)
吉野 敦雄 広島大学, その他の研究科, 助教 (90633727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1)では、うつ病の特異的な神経回路病態を明らかにする目的で、健常人とうつ病患者における安静時fMRI(rsfMRI)の活動パターンを解析した。うつ病100例、健常者100例のrsfMRIデータを用いて、前処理後に脳全体を137領域に分割し、脳領域間における脳活動の時間的相関(機能的結合)を計算した。個人ごとの機能的結合データに診断ラベルを付与し、結合データおよび診断ラベルを用いた教師あり機械学習を行った。また、うつ症状の重症度を示す質問紙得点を用いた機械学習による解析も行い、重症度に関連する機能結合を抽出した。その結果、両者に共通して内側前頭前野を含む約20の結合が選択され、これらの領域の神経活動操作が治療的となりうる可能性が示唆された。 課題2)では、うつ病の症状特異的な神経回路を特定する目的で、ラット内側前頭前野を神経細胞種特異的に刺激し、不安・抑うつ関連行動を評価した。神経活動操作はCingulate Cortex(CgL)、Prelimbic Cortex(PL)、Infralimbic Cortex(IL)と更に細分化した領域で行った。抑制には、Muscimolの微小注入を用い、至適投与量はc-Fosの発現を指標に、標的部位の神経活動が抑制されることを確認した。興奮には、ChR2を発現するAAVを標的部位に導入し、2週後に光刺激を行いつつ行動実験を施行した。興奮の至適条件は、spikeの増加とLFPを指標に検討し、適切な条件を決定した。神経活動の抑制では、行動変化は見られなかったが、亢進では、不安・抑うつ行動が(1)PLでは共に増加、(2)ILでは共に減少、(3)CgLでは変化なしであり、内側前頭前野という脳局所の、更に微小な部位の相違における神経活動亢進が大きく異なる行動変化をもたらすという新規の知見と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1)では、健常者と明らかに異なる結合異常を示すうつ病の神経回路を抽出し、これまでに行った研究で想定されたうつ病の神経回路異常と比較し、内側前頭前野を含む機能的結合とうつ症状との関連が示唆された。 課題2)では、内側前頭前野からの投射先の刺激による行動実験は行えていないが、細分化した脳部位刺激による行動変化が見られ、神経活動操作の至適条件が得られており、残存する課題内容の遂行が速やかに行えると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
課題2)における症状特異的な神経回路の分離を勧める。また、課題3)として、うつ病モデルラットに対して、課題2)で同定した症状特異的な神経回路を標的に、抑うつ症状を惹起する神経活動とは逆の活動操作(興奮性刺激で抑うつ症状が惹起される場合は、抑制性刺激を行うなど)を行い、抗うつ効果を検証する。また、神経活動変化による構造的可塑性として、樹状突起スパインの形態変化を、機能的可塑性としてBDNFの発現変化量を計測し、抑うつ/抗うつ効果の分子メカニズムを明らかにする。 課題4)として、課題1)で同定されたうつ病の神経回路異常をモデル動物を用いた実験により詳細に検討し、Neurofeedback法でターゲットとする脳活動パターンを設定する。その後、Neurofeedback法により特定の結合性やネットワークの変化により、抑うつ症状に変化が見られるか(有効性)を確認すると同時に、安全性についても評価を行う。
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