2016 Fiscal Year Annual Research Report
バイオインフォマティクスを用いたNav1.7阻害剤の創薬による新たな鎮痛戦略
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15H02562
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 充彦 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10263237)
杉山 由紀 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (10468100)
上園 保仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (20213340)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 無痛症 / 遺伝子変異 / ナトリウムチャネル1.7 / パッチクランプ / ウインドウカレント |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)長野県で新たに発見した先天性無痛症患者に対し、quantitative sensory testを行った。本患者は、熱性および機械的痛覚の感受性が有意に低下しており、C線維刺激により生じる一次感覚野における感覚誘発電位の出現がなかった。したがって、実際に痛み刺激が生じず、臨床的に無痛症患者と考えられた。(2)そこで、本患者の無痛症の原因遺伝子を探索したところ、ナトリウムチャネル1.7(Nav1.7)の遺伝子である SCN9Aのexon10における c.1144 T > G変異を発見し、この部位は過去に報告のない変異部位であった。(3)本患者に生じている遺伝子変異がNav1.7の機能にどのような影響を与えるかを検討するために、tsA201細胞にWild-Type (WT)と変異NaV1.7(MT)をリポフェクション法を用いて強制発現させ、パッチクランプ法のホールセルモードでの電気生理学的特性の解析を行った。電流ー電圧曲線において、WTに比べMTは右方偏位の傾向を認めたが、両マウス群に統計学的有意差はなく、MTにおいてもNa電流の流入が起こることが示された。一方、Steady-state inactivationによっては、WTに比べMTはわずかに右方シフトした傾向が見られた。そして、Ramp pulse currentにおいて、WTに比べMTは有意に小さなRamp pulse currentを示した。さらにwindow currentではMTはWTに比べ、右方で有意に小さかった。以上のことから、MTにおいては、WTと比べて、不活性化曲線に違いは少なかったが、活性化曲線の立ち上がり脱分極側へシフトした結果、window currentが減少したことによるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無痛症患者で発見したSCN9Aの変異によるNav1.7の機能変化について、培養細胞における発現研究はほぼ終了した。マウスの後根神経節細胞に同様の変異Nav1.7を発現させて検討する予定であったが、トランフフェクションがうまくいかず、この研究を行うことを中止した。しかし、無痛症を引き起こすと思われるNav1.7の機能変化を同定できたため、研究の推進としては概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、同変異を導入したマウス作製を行なっている。雄性マウスは作製できたが、交配による仔マウスが生まれず、雌マウスとの人口受精等を行い、変異マウスを引き続き作製していく。さらに、同遺伝子変異部位をターゲットとした創薬のため、バイオインフォマティクスを行うよう、共同研究者との研究体制を組んでいる。
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Research Products
(10 results)