2017 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的exome解析による敗血症関連遺伝子の探索と個別化医療への展開
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15H02568
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中田 孝明 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (20375794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 隆三 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (30375795)
関根 章博 千葉大学, 予防医学センター, 教授 (30425631)
織田 成人 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90204205)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IL-10 / IL-19 / IL-20 / IL-24 / 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症は依然致死率が高く,新規発見が必要な重要課題である.遺伝的要因の個人差である遺伝子多型が敗血症の転帰に影響を与えることが広く知られている.IL-10は敗血症性ショックや術後の急性炎症に対して,抗炎症性・免疫抑制にはたらく重要な遺伝子である.またIL-10ファミリー遺伝子(IL-10, IL-19, IL-20, IL-24)は1q32領域(200 kb)に隣り合って存在する.そこでこれらのIL-10ファミリー遺伝子の一塩基多型 (single nucleotide polymorphisms,SNPs)は,敗血症性ショック患者の28日死亡率上昇と関連するかどうか検証した.敗血症性ショック患者(n=1193)を対象にIL-10ファミリー遺伝子の13 tag SNPsをgenotypingし,28日死亡率をprimary outcomeとして関連解析した.IL20 rs2981573 G alleleを有する敗血症性ショック患者の28日死亡ハザード比はIL20 rs2981573 A alleleを有する患者に比して有意に高かった(adjusted hazard ratio 1.27; 95% confidence interval 1.10-1.47, P=8.0x10-4).またIL20 rs2981573 G alleleを有する敗血症性ショック患者はA alleleを有する敗血症性ショック患者に比して,より長期間臓器不全を呈していた.そして,インビトロ実験で機能性を検証すると,敗血症を模した刺激を加えたlymphoblastoid cellのIL20の遺伝子発現はIL20 rs2981573 GG genotypeが有意に高かった.またsecondary cohortとして心臓血管外科術後ICU患者(n=981)を対象とした解析では,IL20 rs2981573 GG genotypeを有する患者は有意にICU入室期間が長かった.これらより,IL20 rs2981573 GGは,IL20遺伝子発現,敗血症性ショックや心臓血管外科術後の転帰不良と関連した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの遺伝子多型研究では選択する候補遺伝子に制限されていたが,この制限を解消するために全ゲノム上の重要領域を網羅的に解析することが本研究の主目的である.そこで、今年度はIL-6高値を呈した敗血症ショック症例(n=100)を対象として,Illumina HiSeq 2000/2500 platformを用いてwhole exome sequencing解析,及び,敗血症症例(n=300)を対象としたgenome-wide association study 解析用のGWAS array(Omni2.5M+exon)を用いた網羅的遺伝子多型解析を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症は依然致死率が高く新規発見が必要な重要課題である.遺伝的要因の個人差である遺伝子多型が敗血症の転帰に影響を与えることが広く知られているがこれまでの遺伝子多型研究成果は選択する候補遺伝子に制限されていた.この制限を解消するために全ゲノム上の重要領域を網羅的に解析することが本研究の主目的である.また,敗血症患者において炎症反応の程度を反映する指標として血中IL-6濃度が有用であることが知られている.2017年度には, 本研究ではIL-6高値を呈した敗血症ショック症例(n=100)を対象として,Illumina HiSeq 2000/2500 platformを用いてwhole exome sequencing解析,及び,敗血症症例(n=300)を対象としたgenome-wide association study 解析用のGWAS array(Omni2.5M+exon)を用いた網羅的遺伝子多型解析を行っており,今後は,敗血症症例(n=100)例のGWAS array(Omni2.5M+exon)を用いた網羅的遺伝子多型解析(genotyping)とphenotypingを行う.そしてexome sequencing解析とgenome-wide association study用array解析結果を組み合わせ,敗血症に関連する新規遺伝子・遺伝子多型を探索する予定である.また,既存の知見にとらわれず網羅的に新規遺伝子多型発見を目指す本研究は,遺伝子自体の機能が解明されていない遺伝子・遺伝子多型が同定される可能性が期待される.細胞・動物実験を用いて発見した候補遺伝子をknock down, knock out, over expression等し, 敗血症刺激下でのターゲット遺伝子の役割を明らかにすることも重要な検証実験と考え,探索結果を発展させる実験を行う予定である.
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Research Products
(1 results)