2015 Fiscal Year Annual Research Report
口腔脳腸・味情報‐内分泌連関の形成原理と分子基盤の解明
Project/Area Number |
15H02571
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
二ノ宮 裕三 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50076048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重村 憲徳 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40336079)
吉田 竜介 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (60380705)
實松 敬介 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70567502)
岩槻 健 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (50332375)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 歯学 / 味覚 / シグナル伝達 / 内分泌 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、脳の食欲調節因子レプチン(Lep)やエンドカンナビノイド(eCB)が、味覚器にも働き、食欲に連動し甘味調節を行うこと、逆にT1R2/T1R3甘味受容体が腸管や膵臓にも発現しホルモン分泌や糖吸収を導くことを見出し、 “口腔脳腸・味情報-内分泌連関”とも呼ぶべき新たな食調節系の概念を提示した。本研究は、この連関系の形成や動作原理を理解し、味細胞から起こる味情報の伝達の仕組みや栄養情報として食調節に働く過程を明らかにするため、課題1) 腸管と同様に、味覚器にも糖輸送体による甘味受容経路と、腸ペプチドによる味情報伝達系が存在するか? 課題2) LepとeCBによる甘味調節系とその細胞内分子機構と、食餌性肥満との関連。課題3) 口腔脳腸連関系分子の遺伝子多型と味感受性との連関解析により、ヒトにおける機能、を検索する。 平成27年度は、課題1)で、味細胞には腸管の終末酵素群(マルターゼグルコアミラーゼ、スクラーゼイソマルターゼなど2糖類を単糖に分解)が発現し、その分解酵素を阻害すると2糖類に対する味応答が選択的に減少することから、糖輸送体受容系が唾液アミラーゼと2糖類分解酵素の協調の基、味細胞で機能し、甘味受容に関与する可能性が示唆された。また、腸ペプチドGLP-1がATPと共に甘味刺激により味細胞から濃度依存的に放出され、GLP-1が甘味応答神経線維を刺激することも判明し、甘味情報伝達への関与が示唆された。また、三次元培養系オルガノイド作製が腸管試料で成功し、味蕾オルガノイドへの展開の手掛かりを得た。 課題2では、Lepによる甘味抑制の細胞内機構について味細胞応答を指標に分子連関解析した結果、Lepの標的分子にKATPチャネルが含まれること、食餌性肥満マウスの味細胞におけるレプチン抵抗性発現の閾値濃度が明らかになった。この濃度で、eCB甘味増強が顕在化することも判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗には、課題1)と2)の成果が同時進行的に得られることが、不可欠の要素となっている。平成27年度の成果により、課題1)では、糖輸送体の糖受容における関与が極めて現実的になり、また、腸ペプチドGLP-1が甘味刺激により放出され、味神経線維を興奮させることも判明し、さらに、課題2)でLepの細胞内標的としてKATPチャネルの存在も明らかになったことから、味細胞には甘味受容系としてT1R2/T1R3系以外に糖輸送体受容系も存在し、輸送体からのグルコース流入、ATP合成、KATPチャネルの閉鎖、細胞脱分極、細胞興奮、ATPと腸ペプチドGLP-1の放出、甘味選択的神経線維の興奮、脳への甘味情報伝達、の一連の流れが推定できることになった。それをさらに強固にするため、糖輸送体の同定と機能解析が必要となっている。 また、生体恒常性に深く関与し、正常やせマウスにおいてその機能を発揮するLepの甘味感度制御が糖輸送体甘味受容経路を標的にすることが判明した。それにより、Lepと拮抗し、肥満促進に関わる甘味増強因子のeCBは、人工甘味料なども受容するT1R2/T1R3経路に関与する可能性が高く、当初の予想が現実となりつつある。今後の研究の進捗が楽しみな状況になってきている。同一細胞に両甘味受容系が同居するのか、それぞれ異なる受容系を発現する味細胞に分かれるのか、LepとeCBの拮抗性の細胞内・細胞間原理の解明などに、計画されている探索課題が重要な役割を担う。 課題3)に関しては、現在被験者数を増やし、GLP-1受容体遺伝子の変異による感受性変化について検索し、かつ腸管・膵臓における機能変化を検索すべく受容体発現培細胞解析系を整備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は予定通りの進捗を見ている。課題1)で明らかになった味細胞における終末酵素の発現は糖輸送体甘味受容経路の存在を強く示唆するものであり、次に、Na依存的グルコース輸送体(SGLT1)を標的にした実験を計画通り行う。推進に当たっては、特にNaによる甘味応答の増強作用を指標にして、T1R2/T1R3受容系でのみ受容される人工甘味料に対する応答特性に着目して研究を進める。T1R3阻害剤のグルマリンによる影響の検索、T1R3-KOマウスの応答解析、さらにSGLT1阻害剤フロリジンの効果の解析が重要と思われる。味シグナル伝達系における腸ペプチドの関与はGLP-1が甘味刺激で味細胞から放出され、神経線維興奮に至ることの発見により証明された。次なる標的としてCCKの味情報伝達への関与の解析を行う。この実験ではCCK受容体a型とb型のKO及びダブル KOマウスの味応答解析を基に、CCKの味細胞からの刺激依存的な放出と、神経線維の活性化を指標に遂行する。基本的には、先に行ったGLP-1実験の手法を踏襲して行う。また、三次元培養オルガノイドの作製は腸管から味蕾とへ展開し、各種味関連分子GFP標識マウスの幹細胞を用い味細胞分化の過程で発現するマーカーとの共発現性を検索し、味応答測定結果との連関を基に解析する。 課題2)では味細胞で明らかになったLepの標的分子KATPチャネルが腸管でもLepの標的になっているかどうか、類似の手法で解析する。さらに、eCBの細胞内標的についても味細胞及び腸管細胞で検索する。これらの研究については、予測が難しいこともあり、過去の論文で予想されている分子群をひとつずつ調べていくこととする。 課題3)に関しては、GLP-1受容体遺伝子の変異体の特に膵臓β細胞のインスリン分泌への影響を最初の課題として展開する。
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Research Products
(33 results)
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[Presentation] ホルモンによる味覚(塩味・甘味)感受性調節2016
Author(s)
重村憲徳, 吉田竜介, 安松啓子, 大栗弾宏, 岩田周介, 高井信吾, 上瀧将史, 仁木麻由, 實松敬介, 二ノ宮裕三
Organizer
第67回日本生物工学会
Place of Presentation
鹿児島、城山観光ホテル
Year and Date
2016-10-26 – 2016-10-28
Invited
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[Presentation] 味覚受容体の機能(塩味と甘味)2016
Author(s)
重村憲徳, 吉田竜介, 安松啓子, 大栗弾宏, 岩田周介, 高井信吾, 上瀧将史, 仁木麻由, 實松敬介, 二ノ宮裕三
Organizer
日本薬学会第136回年会
Place of Presentation
神奈川、パシフィコ横浜
Year and Date
2016-03-26 – 2016-03-29
Invited
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[Presentation] レプチンによる甘味抑制機構2016
Author(s)
吉田竜介, 重村憲徳, 二ノ宮裕三
Organizer
第93回日本生理学会大会
Place of Presentation
札幌、札幌コンベンションセンター
Year and Date
2016-03-22 – 2016-03-24
Invited
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