2016 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態資源の地域固有性とグローバルドメスティケーション化に関する研究
Project/Area Number |
15H02590
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 繁男 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 名誉教授 (40353685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池谷 和信 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (10211723)
横山 智 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30363518)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 森林生態資源 / 地域固有性 / グロバルドメスティケーション / 伝統的知識 / 人間の安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林生態資源利用のバナキュラリティーではこれまで不明なブータンの納豆利用について、伝統的に納豆の生産が行われているとされる東ブータンのタシガンを拠点にして、納豆生産者に対する調査をした。森林資源の利用と伝統食品の製造との関係は強くないことが明らかになった。ネパールのカトマンドゥ及びドラカ郡とシンドウパルチョーク郡において、コミュニティ・フォーレストリーと非木材林産物の活用についての調査を行った。地域住民の伝統的知識と生物多様性保全に関しては東南アジア大陸部における山茶の野生化、栽培化、およびその利用法の諸相を明らかにすべく、ラオス北部山地(ルアンパバン県、ウドムサイ県)の主にモン族村落で調査を行った。また、東ブータンにおける土地利用、特に、集落に隣接するソクシンとよばれるクヌギ属の林の分布とその利用と作物栽培との関係を調査する目的で、タシガン県ラディ村で調査をした。落葉を厩肥化して畑に使われ、現在でも重要な地力維持のための技術となっていた。森林生態資源のグローバルドメスティケーションに関しては、アマゾンの非木材資源利用の実態を把握するために、米国・ニューオーリンズのTulane UniversityのW. Balee教授(ブラジルアマゾン研究)と研究についての議論の結果、これまでおこなってきたアマゾン先住民によるペッカリーの利用の特性を把握できた。森林生態資源の持続的利用・管理に関しては、ラオス北部ルアンパバン県ナムバーク郡で、村の林地に自生するチャノキの調査を行った。同地域のモンの人々は、中国人の仲買人が買いに来はじめ、野生で無農薬の高級茶として高く販売利用されるようになった。森林生態資源の利用における地域固有性を調べるために、インドネシア・スマトラ、リアウ州の泥炭湿地地域のローカルマーケットを調べた。淡水魚類類が最も重要な資源であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画とおり研究は順調に進捗している。森林生態資源利用のバナキュラリティーでは中国雲南省、ベトナムソンラー省での納豆の生産利用の調査に加えて、東ブータンのタシガンを拠点にして、納豆生産者に対する調査を行い、森林資源の利用と伝統食品の製造との関係は強くないことを明らかにした。ネパールのカトマンドゥとチャリコットに加え、ドラカ郡とシンドウパルチョーク郡で社会林業と非木材林産物の利活用が明らかになった。地域住民の伝統的知識と生物多様性保全に関してはタイチェンマイの社会林業の調査に加え、ラオス、ルアンパバン県、ウドムサイ県のモン族村落でチャ栽培の調査を行った。また、ブータンにおいて、森林生態資源の伝統的知識による利用に加え、東ブータン・タシガン県ラディ村で堆肥を用いた土地利用を明らかにした。森林生態資源のグローバルドメスティケーションに関しては、ペルーとエクアドル・アマゾンのペッカリーの利用実態を明らかにしてきたが、米国・ニューオーリンズのツレーン大学のW. バリ―教授との議論の結果、アマゾン先住民によるペッカリーの利用の特性を把握できた。アブラヤシが支える生物・農業多様性について、西アフリカ・ギニア共和国南部森林地域と西部沿岸地域を比較すると、両地域において、アブラヤシが焼畑休閑林に生育することは共通していたが、前者では、樹木バイオマスにおけるアブラヤシの相対的比率が小さく、後者では、相対的比率が大きかった。森林生態資源の持続的利用・管理に関しては、ネパール、チャリコットやタイ・カンチャナブリでの社会林業の実態に加え、インドネシア・スマトラ、リアウ州の泥炭湿地地域の淡水魚類類が最も重要な生態資源であった。ラオスのシエンクワン県、ファバ県、ルアンババン県、サイニャブリー県の森林生態資源の利用事態に加え、ルアンパバン県ナムバーク郡で、林地に自生するチャノキの利用が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、地域社会の個人の生存基盤の保障に資するべく、歴史や環境が異なる各地地域社会の「伝統的知識」「生物多様性保全」「森林生態資源のグローバルドメスティケーション化」について調査し、自然-人間共生系での、森林生態資源の持続的利用・管理と伝統的知識・人間の安全保障の包括的な理解を目指す。森林生態資源の利用のバナキュラリティーについての研究成果をサブテーマの4に統括し、持続的森林資源の利用に伴う自然と人間の共生におけるキャリングキャパシティーについて研究成果の集約を行う。地域住民の伝統的知識の研究成果をサブテーマの4に統括し、研究成果の集約を行う。グローバル経済の浸透による域外への森林生態資源の流通に伴うグローバルドメスティケーションの実態をあきらかにして、サブテーマ4へ研究成果の集約を行う。サブテーマ4の地域住民の生存基盤の安全保障のための森林生態資源の持続的利用・管理では、森林資源の持続的利用や地域住民と自然との共生のキャリングキャパシティーの調査を加える。サブテーマ1,2,3を総括し、森林生態資源のグローバルドメスティケーション化よる持続的利用・管理、人間の安全保障、REDD+セーフガードを網羅的に国際シンポジウムで検討する。さらに、荒廃熱帯林や二次林の遷移過程(有用な多種多様な動植物に生育過程)における利用可能な生態資源と生態系サービスの保全、生物多様性保全、温暖化防止と地域住民の生存基盤との葛藤を検討する。リファレンスサイトのラオスとともに各国の政治体制が、地域の固有な森林生態系資源の持続的利用や生存基盤に与える影響を評価し、地域住民と自然との共生におけるキャリングキャパシティーの新たなパラダイムについて、国際シンポジウムについて統括を行い、森林資源の持続的利用と地域住民の生存基盤の安全保障、REED+セーフガード行についての全体をまとめる。
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Research Products
(18 results)