2015 Fiscal Year Annual Research Report
ユーラシア東部草原地帯における騎馬遊牧社会形成過程の総合的研究
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15H02608
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮本 一夫 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (60174207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 圭太 九州大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (00726549)
岡崎 健治 鳥取大学, 医学部, 助教 (10632937)
米元 史織 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (40757605)
田尻 義了 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (50457420)
鹿島 薫 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90192533)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | モンゴル / 青銅器時代 / 板石墓 / ストロンチウム分析 / 古人骨 / AMS実年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒャウルヒャラーチ遺跡を発掘調査することにより、これまで前8世紀以降にモンゴル高原東部を中心に分布する典型的な板石墓の出自が、モンゴル西半部のプロト2式にある可能性が出てきた。このプロト2式は、発掘調査によるヒャウルヒャラーチ1号墓の発掘調査による人骨の年代から確定したものである。さらに1号墓は方形ヘレクスールが変形したものの可能性があり、ヘレクスールがプロト2式板石墓に変化し、さらにこれが典型的な板石墓の出自である可能性が出てきた。また、このプロト板石墓はミヌシンスク地域のタガール文化最古期のバイノフ期の墓制の出自になっている可能性も明らかとなった。この様に、モンゴル高原東部に主要な分布域をもつ板石墓の出自に関して、新たな説を提示することができることとなった。 ヒャウルヒャラーチ1号墓は方形墓であり、20号墓は円形墓であるが、前者からはモンゴロイド系、後者からはコーカソイド系の異なる形質の人骨を検出した。人骨のAMS年代はともに紀元前2千年紀後半の年代が観察された。一方で、歯牙のストロンチウム分析において差異が見いだされるところから、コーカソイド系の1号墓の被葬者が西方から移動してきた可能性が考えられる。 また、モンゴルの青銅器時代から匈奴時代にかけての古人骨20体の歯牙のストロンチウム分析を行った。また、これらの実年代を正確に把握するため人骨からAMS年代を測った。これらの試料からは、例えばチャンドマニ墓地では青銅器時代から匈奴時代の墓地でストロンチウムの値に差異が存在せず、人の移動の痕跡が認められなかったが、テブシの人骨には差異が認められ、ヒャウルヒャラーチ遺跡同様に、人の移動の可能性が科学的に示された。 2015年7月・2016年2月には共同研究会を九州大学で開催し、研究分担者全員が参加して、研究目的や研究計画の確認さらには調査成果の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りにモンゴルでの発掘調査を行い、成果も上がっている。また、形質人類学的分析とストロンチウム分析結果が相関した結果になり、新たな研究成果を生み出している。但し、当初予定のダラム・テブシの英文調査報告書の刊行が次年度に遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
Society for East Asian Archeologyなどの国際学会に参加して、モンゴルでの調査成果の学会発表を行う。また、ダラム・テヴシ板石墓の英文による発掘報告書を刊行する。本年は、バヤン・ホンゴール県Galuut遺跡において新たな発掘調査を予定するとともに、古人骨の形質人類学的調査とストロンチウム分析を進め、牧畜民移動の問題の新たな成果を目指す。
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Research Products
(9 results)