2015 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代の捕鯨文化に関する人類学的研究-伝統継承と反捕鯨運動の相克
Project/Area Number |
15H02617
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
岸上 伸啓 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (60214772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜口 尚 園田学園女子大学短期大学部, その他部局等, 教授 (30280093)
河島 基弘 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (80454750)
李 善愛 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (90305863)
赤嶺 淳 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (90336701)
高橋 美野梨 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 研究員 (90722900)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 捕鯨文化 / 反捕鯨運動 / グローバル化 / 伝統継承 / 文化人類学 / 鯨食文化 / 観光資源 / 鯨類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はカナダ(岸上)、デンマーク領グリーンランド(高橋・本多)とフェーロー諸島(河島)、ノルウェー(赤嶺・石川)、アイスランド(浜口)と韓国(李)の捕鯨および捕鯨文化の歴史や現状、捕鯨政策について調査を実施した。その結果、下記の点が明らかになった。 カナダ・ヌナヴィク地域のイヌイット社会では操業経費がかさむため毎年の捕鯨の実施は困難であることや大型クジラよりもシロイルカの方が食料として好まれていることが判明した。グリーンランド西部地域では、ミンククジラ猟が積極的に行われている一方、鯨類の観光資源化の動きがみられることや捕獲制限に対して不満があることが分かった。 デンマーク領フェーロー諸島におけるゴンドウクジラの捕獲に関しては、シーシェパードによる妨害活動で島民の中には逆に捕鯨の文化的重要性に目覚める者が出る一方で、汚染による影響を危惧して鯨肉の摂取を控える動きが広がっていることが判明した。ノルウェーの商業捕鯨では、同国政府が捕鯨資源の持続的利用と零細捕鯨者支援によって地域社会の維持・活性化を図る政策をとり、鯨肉の品質向上や輸出拡大を図っていることが分かった。また、現在の捕鯨産業を支えているのは季節的に雇用されるポーランド人ら海外労働者であることも判明した。アイスランドの商業捕鯨についてはナガスクジラやミンククジラが捕獲され、鯨肉をレストランで観光客に提供するとともに日本に輸出していることが判明した。 韓国ウルサン地域では地域住民や行政がクジラをテーマにした観光資源戦略を展開し、村の活性化を図っていることが分かった。韓国では捕鯨を行っていないが、鯨食文化は存続しており、捕鯨再開の動きがみられる。 以上のように、存続の危機に直面している世界各地の捕鯨・鯨食社会では、捕鯨に関連して多様な動きが見られることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究費の不足のため、年度末に現地調査の成果をもちよって一堂に会して検討することができなかったが、研究分担者と研究協力者の間で電子メールを利用して意見や情報の交換を行った。この点以外は、計画通り、進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付された予算額は、申請した研究計画を実施するうえでは十分とは言えないが、大きな予定変更はせず、調査地や調査期間を若干変更するなど交付された予算を柔軟に活用しながら研究を推進していく。
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Research Products
(9 results)