2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H02619
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大塚 啓二郎 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 特命教授 (50145653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村岡 里恵 政策研究大学院大学, 政策研究センター, 客員研究員 (00760753)
山内 慎子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (50583374)
松本 朋哉 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (80420305)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 貧困解消 / 農村経済 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、本研究チームがこれまで推進してきた東アフリカ農村のパネル家計調査プロジェクトを継続・発展させ、長期の家計調査データを構築し、そのユニークなパネルデータを基に社会経済的な発展メカニズムの解明を目指している。H28年度の研究実施計画では、主に1)H27年度に実施したウガンダでの農村家計調査データを使った実証分析を複数進め、論文の執筆、国際学術雑誌への投稿・掲載を目指すこと、2)ケニアでの農村家計調査の事前準備及び本調査の実施することを予定していた。それぞれの実績の概要を以下に記す。1)に関しては順調に進展している。H28年の本研究チームメンバーの研究成果として、 ウガンダのモバイルマネー普及による金融包摂の実態とその農村家計への影響を検証した論文や人口圧力が高まる中、地域間移住の加速と土地係争の増加の関係を解明した論文をはじめ、途上国の発展にとって重要な研究課題に取り組んだ計8本の論文が査読付き国際学術雑誌へ掲載された。これは当初の期待以上の成果と言える。また、分析中、投稿中の研究課題も多くあり、今後より大きな成果が得られると思われる。2)に関しては、事前準備の段階で、調査委託を検討していた研究機関の都合により、H28年度中の調査の実施が困難であると判断し、調査委託費用及び研究分担者の現地調査のための渡航費用をH29年度に繰り越した。延期した調査は、H29年12月からH30年3月にかけ、別の研究機関に委託し家計調査を実施した。調査対象地域は、中部、東部、リフトバレー州の農村54村で、調査対象家計は、地域の代表性を担保するために、2004年から調査対象であったパネル調査家計に加え、ランダムサンプリングの手法を用いて新たに追加した。H30年3月時点でデータのクリーニングをほぼ終え、データ解析の準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、東アフリカ農村の家計調査データに基づいた実証研究を行い、その成果を国際学術雑誌等に掲載し、研究結果を広く世界に発信していくことを目的としている。こうした目的に照らすと、達成度を評価する基準は、1)調査の実施状況、2)分析および研究の質と進捗状況、3)成果の発信状況の3点に集約されよう。まず、(1)に関しては、平成28年度に実施予定していたケニアでの農村家系調査プロジェクトを翌年度に繰越すこととなったが、平成29年度に仕切り直し、ほぼ当初計画通りに実施することができた。次に(2)に関しては、研究代表及び研究分担者が頻繁に連絡を取合い、随時、共同研究の進捗の確認及び新たな研究課題の提案等を行っている。また、本研究プロジェクトの研究者が中心となって開発経済学月例研究会を運営し(H28年度は政策研究大学院大学に於いて10回実施)、他機関の研究者との意見交換の場を設け、研究の質の向上を図った。最後に(3)に関しては、平成28年度の本研究の研究代表者及び研究分担者が関わる学術的な成果物として、査読付き国際学術雑誌への論文の掲載実績は、8本、著書・編著が3冊となっている。それらに加え、国際学雑誌への投稿中の論文も複数あり、近い将来それらの多くが掲載されることを期待される。以上の点からプロジェクト全体として概ね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本プロジェクトで計画していた現地調査は全てすでに完了した。平成30年度は、これまでに収集したデータの分析及び論文の執筆を進めるとともに、その成果を国際学術雑誌等に掲載し、これまで以上に研究結果を広く世界に発信していくことに注力する。 今年度、取り組む予定の研究課題について以下に述べる。1)ウガンダ北部は、反政府ゲリラの活動のために多くの住民が2000年代半ばまで、難民キャンプでの生活を余儀なくされた。その後反政府ゲリラの活動が沈静化し、2010年頃までに住民の帰還が完了しているが、大規模な調査は行われておらず、農村の生活の実態はよくわかっていない。本プロジェクトで収集した北部の23村約350家計を含むデータを用いて、内戦が人々のリスク選好や主観的時間割引率にどのような影響を与えたか、そして投資行動がどのように変化したかを分析する。2)同じ北部のデータを用いて、内戦終結後に頻発する隣人同士の土地係争の原因と、農業生産への影響を検証する。3)本研究チームがケニア・ウガンダで過去に収集した土壌検査のデータと家計調査データを組み合わせ、人口圧力の農業への効果、特に、土壌の劣化へ及ぼす影響と、劣化を食い止めるための土壌改良事業や集約的農業の促進効果及び、それらの農業生産への効果を検証する。 4)ケニア・ウガンダの農村家計の約15年間に渡る家族構成、家計の生産、消費、投資活動の情報を捕捉した本プロジェクトのデータの特性を生かし、環境・技術の変化に伴う、家族形態の変容とそのメカニズムを検証する。
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Research Products
(11 results)