2016 Fiscal Year Annual Research Report
水界生物群集に及ぼす光―栄養バランスの生態化学量効果:北米での野外実験による検証
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15H02642
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
占部 城太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50250163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 丈人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40447321)
山道 真人 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (70734804)
土居 秀幸 兵庫県立大学, その他の研究科, 准教授 (80608505)
片野 泉 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (90414995)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生態系 / 生物群集 / 湖沼 / 食物網 / 生物生産 / 光 / 栄養塩 / ストイキオメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
生態系への光投入量は、生物生産のエネルギー量として重要であるが、その多寡に伴う群集構造への影響は殆ど研究されていない。このような生物群集への環境変化影響を調べるためには、生物群集全体を対象とした実験的アプローチが不可欠である。そこで、本研究は生物群集応答の鍵となる光―栄養塩バランス仮説を、国外にある大規模野外実験施設を用いることで実証することを目的に実施している。2年目にあたる、本年度もコーネル大学の大規模野外実験池施設(CURPF)の 池を利用して実験を行った。本年度は、池の個性を排除するため、強化キャンバス地を用いて2つの池(0.1h)をそれぞれ4つに仕切った上で、4段階の遮光区(0-83%遮光)を設けて実験を行った。実験は5月末から現地で3ヶ月間行い、動植物プランクトン、ベントス、水質、基礎生産、魚類密度等を定期的に測定した。 解析にあたっては、ロトカーボルテラモデルをベースにした平衡モデルを作成し、野外実験で得られたデータからモデルパラメータを推定することで、一次生産から二次生産に至る物質転移(生態転換効率)に対する光―栄養塩バンランスの化学量効果や生物間相互作用の影響を定量的に調べた。動物プランクトン生物量などについて、まだ一部の実験データが得られていないが、これまで得られたデータにより解析したところ、生態転換効率は一次生産速度や捕食圧(魚類)だけでなく、光―栄養塩バランス変化に伴う一次生産者の炭素:リン比にも強く影響されていることが示され、当初仮説の妥当性が検証された。この他、去年の実験で明らかとなった遮光に伴う植物プランクトン量の増加について、CURPFの36池を対象とした調査や、水草によるアレロパシーの影響を調べる実験も行い、水草繁茂と植物プランクトン繁茂という2つ安定状態を導く環境要因の解析を野外調査と数理モデルの双方から行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間にわたってはコーネル大学が保有する大規模野外実験池施設(CURPF)を利用して実施し、予定どおりの現場実験を実施することが出来た。その結果、去年の実験では予想外の結果が得られたが、本年度は仮説を実証するデータを得ることが出来た。ただし、CURPFは池によって環境条件が大きく異るため、細かいプロセス実験には向いていない。そこで、来年度はモンタナ州立大学Flathead Lake Biological Station (FLBS)でエンクロージャーを用いた操作実験を行う計画を立てている。すでにFLBSの所長とは交渉が済んでおり、FLBSが所有している野外エンクロージャー(隔離水界)を用いた遮光実験を行い、群集動態に及ぼす化学量効果の詳細なプロセス解明したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、本研究の最終年度にあたる2017年度は、モンタナ州大学FLBSにて(隔離水界)を用いた遮光実験を行う。すでに実験計画など綿密な計画をたてており、FLBSの研究者も協力して実験を実施する確約を得ている。本研究の特色は、自然の生物群集を対象に光―栄養塩バランスを操作することで、群集構造に及ぼす化学量効果の影響を明らかにすることにある。そこで、隔離水界実験では落葉やベントスを加えた区分も設け、光―栄養塩バランスと多様な生物群集との共役効果の詳細を把握出来るデザインで実験を実施する予定である。実験は5月から3ヶ月間行い、定期的に動植物プランクトン、ベントス、水質を測定するとともに、動植物プランクトンの成長制限要因を把握するためのアッセイ実験を行う。また、動物プランクトンや細菌については、遺伝解析も行う予定である。
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