2017 Fiscal Year Annual Research Report
多様な気候を横断する微気象観測網がイネ高温障害のリスク評価を革新する
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15H02650
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
吉本 真由美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主席研究員 (40343826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 勤 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70238939)
小林 和広 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (90234814)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 群落微気象 / イネ / 高温障害 / 穂温 / 蒸散冷却 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の高温稲作地域の全モニタリングサイトにおいて、共通品種IR64を供試した栽培試験を開始し、基本的な気象要素、自立型群落微気象測定装置(MINCER)による群落内外の気温・湿度のモニタリングを実施した。2010年以降の旧MINCERnetにおけるモニタリングデータも含め、全サイトの開花日・開花時刻、群落微気象、収量からなるデータセットを作成し、出穂期間における群落内外の微気象ギャップと高温不稔との関係について予備解析を実施した。 乾燥気候では群落蒸発散による冷却効果が大きいため、開花時間帯の群落内気温は群落上より低く、極乾燥気候のセネガルでは日中、植物の蒸散や水面からの蒸発が促進され、群落蒸散冷却効果により、群落内の気温が群落上より6℃以上低くなる場合があった。一方、ベナンや東南アジアなどの湿潤気候では冷却効果が小さく、群落内気温の方が高くなる場合もあった。不稔率と気象要素との関係を調べたところ、群落上の日最高気温よりも、群落内気温の開花時間帯の平均温度との関係性が高く、高温不稔誘発の閾値が29~30℃付近の可能性がある等新たな知見が得られた。 高温と乾燥の複合ストレスによる高温不稔への影響評価のための開花期落水試験のプロトコルが完成し、試験を開始した。処理による群落微気象の差異をMINCERにより高精度で把握できることを確認した。 国際シンポジウムを開催して、国内外の研究協力者を招へいし、これまでのモニタリングによる成果を発表するとともに、現モニタリング体制における問題点の抽出や解析方針、論文作成のスケジュール等について議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全モニタリングサイトにおいて共通品種の種子の増殖を完了し、熱帯、温帯のすべてのサイトでMINCERによる群落内外の気温と湿度のモニタリングを開始することができた。共通品種を用いた試験としては1年(温帯サイトでは1作期、熱帯サイトでは2作期)のデータが収集されたところで、現時点での成果や問題点について、国際シンポジウムにおける打合せ会議で議論することができ、今後のモニタリング方針について確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
全モニタリングサイトにおいて、自立型群落微気象測定装置(MINCER)を用いた各種圃場試験を継続しデータを収集する。デジタルカメラによる開花時刻の客観データについて解析を進め、気候や気象条件の違いによる開花時刻の変化を明らかにする。穂温に影響を及ぼす日射量や風速などの一般気象要素や、穂温の手動測定データのデータセット化を進め、穂温推定モデルの改良を開始する。
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Research Products
(10 results)