2016 Fiscal Year Annual Research Report
PET-CT等による定量的医学画像診断手法の確立とコンパニオン診断への応用
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15H02706
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
有澤 博 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (10092636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 登美夫 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (80134295)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報工学 / マルチメディア・データベース / マルチメディア情報処理 / 医療画像診断 / 医療診断支援データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、PET(陽電子放射断層撮影)、CT(コンピュータ断層撮影)等の先端医療機器によって得られる3次元画像を利用し、全身から「がん」(悪性腫瘍)等の異常を自動検出する方法、さらに治療前後における腫瘍等の悪性度や容積の変化などを定量的に比較する方法を研究することである。本研究では異常の検出精度を専門医(読影医)と同程度以上にまで上げる手法(アルゴリズム)を開発すると共に、従来困難であった診断の定量化も行えるシステムの構築を目指している。このプロジェクト自体は研究代表者・研究分担者の所属先である横浜市立大学放射線医学教室と横浜国立大学との間の14年に及ぶ共同研究を踏まえており、本研究はその総仕上げという意味を持っている。本研究では特に、最近の医療界で注目を集めているコンパニオン診断(個別化医療)への支援、すなわち抗がん剤が目的の病変に十分な薬効を果たしているか、治療による腫瘍の縮小が見られるか等を定量的に測定・提示する手法も開発したい。 研究初年度に既開発のPET-CT画像からの異常可能性領域自動抽出アルゴリズムを精査し直し、その精度をさらに高めるために実証例を用いた検定および改良を行った。2年度目も基本的にこれを継続し、厚地記念クリニックPET画像診断センター様から(倫理審査と患者の同意を得た上で)症例をご提供いただき、遠隔会議方式でアドバイスを得ながら、特に臓器領域の抽出方法と異常判断基準の見直しを行った。また定量的画像診断に向けて腫瘍領域のサイズや体積を安定して求める動的閾値決定法(DTA法)についても研究・改良した。さらに新たに慶應義塾大学医学部附属病院放射線診断科と共同研究を開始し、最近の機材による高解像度画像に対応して、今まで検出できなかった小さな異常集積の抽出方法を検討し成果を得た。以上の成果は核医学会地方大会及び情報処理学会全国大会で3件報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までに研究開発された、PET画像およびCT画像から異常を疑う領域を的確に抽出するアルゴリズムを見直し、その安定性をさらに高めるため、実証例を用いた検定および改良を中心に行った。実際に国内のPET検査センターから(倫理審査と患者の同意を得た上で)症例を提供いただき、読影専門医のアドバイスを得ながら、特に臓器領域の抽出方法の改良と異常判断基準の見直しを行った。この討論はテレビ会議システムを用いて頻繁に行った為、目的を十分に果たすことが出来た。最近の装置によるPET画像は、従来のものと比べ縦横1.5倍程度の精度向上が見られるため、今まで見えなかった小さな異常を拾うことができるが、ノイズや虚像(アーチファクト)を間違って拾ってしまう可能性も高まる。そこで新の陽性だけけを拾うため、従来から用いていた動的閾値決定法(DTA法)だけでなく、新たに対象領域の意味論(Semantics)を考慮した判別法を考案し、これにより、著しい性能向上を見た。たとえば脊柱管内の集積の場合には腫瘍でなくともブドウ糖(FDG)が薄く走行方向に集積することがあるという知識を用いて、これは異常ではない(生理的集積)と判定する。また臓器自体の特性や臓器全体の集積量分布特性から異常を疑うべき集積の選別確度を変化させる(テクスチャ解析)。このような医学知識(semantics)に基づく識別/判断の手法を導入することにより、高確度の自動診断システムに向けての見通しが立った。ただし、成果の発表については十分なエビデンスが集めらなかったため学会大会発表にとどまり、また定量的診断評価についても論文発表には至らなかった。次年度においてはこれらが実現できると考えている。以上からおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの成果を踏まえ、引き続き「自動診断(判断)の精度向上」、「画像間の定量的比較」に注力した研究開発を行う。 ●PETーCT画像から臓器・異常領域を抽出するアルゴリズムの意味論(Semantics)を利用した精度向上。自動診断アルゴリズムに、さらに多数の実証例を適用し、検証およびアルゴリズムの修正・最適化を図る。 ●画像の定量的な比較手法に関する研究として、ディレイ画像や別検査日の画像データ間の定量的な比較手法を追及する。複数検査日間のPET-CT画像の比較では、検査間隔が数週間~年単位で開くことから、CT画像を利用して臓器の領域を正確に推定して、臓器の位置が変化しても比較が可能な「変形マッチング&比較」アルゴリズムを確立する。 ●コンパニオン診断に向けた画像診断の応用に関する研究:定量的に集積を安定して測定できるようになると、コンパニオン診断への応用が期待できるので、次の事項を検討する。(1)選択された治療(抗がん剤、局所放射線等)の効果を判定するのに必要な撮像周期、(2)悪性腫瘍ごとの体積・悪性度の時間変化の指標、(3)検査画像を含む共通データベース構造。なお海外の研究パートナーである上海長海病院の臨床研究医(程超医師)らのグループとも連携し、中国の症例の利用と検証も計画している。最終的には実際に臨床応用できるレベルのシステムを製作し、独自の医療画像ビューワーと結合して、国際的に利用できる臨床研究用の診断プラットフォームを構築したい。これを共同研究先等において実際に試用していただき、症例・診断手法・結果を一元的にデータベース化したいと考えている。我々の狙いは高確度の自動診断システムの確立であり、その普及のための活動に結びつけて行きたいと考えている。
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Research Products
(3 results)