2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H02718
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 慎也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (90371088)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 情報統合 / 時間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳は、様々な感覚信号を統合・分離することによって、外界で生じたイベントを的確に再構成することができる。単一のイベントから複数の異なる感覚種の信号は、異なる受容器から入力を受け、脳の異なる領域で処理がなされるが、最終的に統合され、一つの知覚表象が形成される。また、別イベントから生じた感覚信号は、互いに分離される必要があると考えられる。このように、多数の情報の中から関連するもの同士を統合し、別のイベントから生じた情報は分離することによって、我々の脳は外界を正しく反映した知覚を形成することができる。本研究課題では、脳内における複数の感覚情報の統合・分離のメカニズムを解明することが目標である。 我々は、これまでに、視聴覚の時間順序判断において、「ゼロ点補正」と呼ばれる超長時定数型の統合メカニズムが存在し、これによって脳内の伝導時間差あるいは情報処理にかかる時間差を補正することが可能であることを発見した。このことは、視聴覚信号の統合の時間窓がシフトすることに対応すると考えられるが、「時間窓の幅が変化せずにシフトするのか?時間窓の幅も変化しながらシフトするのか?」という問題は未解決であった。本研究課題では、この問題を直接解決するため、ゼロ点補正が生じる条件下で、視聴覚の刺激が同時か非同時かを回答させる「同時性判断実験」を行い、時間窓の推移を調べた。同時と回答する確率は時間差が短いと1に近づき、時間差が長いと0に近づくが、これは統合の時間窓とみなすことができる。実験の結果、時間窓の中心はシフトするのみならず、その幅が徐々に拡大していくことが明らかになった。すなわち、感覚統合のための適応メカニズムの一つであるゼロ点補正においては、統合の時間窓の中心と幅(平均と分散)を変化させながら時間情報処理の補正を行っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は、脳内における複数の感覚情報の統合・分離のメカニズムを解明することである。本年度は、新たな実験を行うことによって、情報統合に関する新知見を得ることができた。そのため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は情報統合に関する新知見を得ることができた。次年度以降においては、これと並行して、情報分離に関する新知見を得ること、さらには、情報統合と分離の知見を融合し、情報統合・分離機構の全体像をつかむことを目指す。
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Research Products
(5 results)