2016 Fiscal Year Annual Research Report
Classification and mechanism for individual difference in stereopsis
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15H02725
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金子 寛彦 東京工業大学, 工学院, 准教授 (60323804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅之 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (40336938)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 立体視 / 両眼視差 / 奥行き知覚 / 個人差 / 視力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ヒトの立体視における個人差を測定,類型化し,その生起メカニズムを明らかにすることである.そしてその知見をもとに,立体映像の安全性および臨場感向上のための方策を提案することを目指す. 研究初年度の平成27年度では,東工大と北九州市大に立体映像表示システムを導入し,パイロット実験を行った.平成28年度は,その結果に基づいて以下の実験を行い,それぞれ知見を得た.(i) ヘキサゴンドット立体視力検査において,裸眼静止視力と立体視力の間に相関が認められた.裸眼視力が低いほど,立体視力が高い傾向が見られた.(ii) 同検査において,ドットの大きさの効果について検討した.ドットの大きさは多くの被験者では立体視力に影響しなかったが,ドットが小さいときに顕著に高い立体視力を示す被験者も存在した.これは最大のパフォーマンスを引き出すためには細かいターゲットが必要であることを示唆している.(iii) 同様に,ドットの間隔の効果について検討した.ドットの間隔を12~154分の範囲で変えたところ,20~30分の付近で最大の立体視力が得られることが明らかになった.これは,ランダムドットなどを刺激とした従来の研究から予測される値よりも小さい値であり,興味深い問題を提起している.(iv) ヘキサゴンドット立体視力検査ではまったく奥行きを知覚できない被験者でもランダムドットの傾斜に対しては鮮明な奥行きが知覚される場合があることが明らかになった.ヘキサゴンドット検査で用いる刺激は視差量と視差勾配がステップ上に変化する単純な図形であり視差の定義が明確であるが,ランダムドットに滑らかな視差の変調を与えたほうが感度の高いテストになる可能性がある.(v) 視差の閾値のみでなく,二重像が知覚されるような大きな視差に対して,知覚される奥行きを測定した.ここにも大きな個人差があることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたとおり,ヒトの立体視における個人差を類型化し,その生起メカニズムを明らかにするという研究の目的に沿って順調に進んでいる.当初予定していたよりも実験の条件を増やしたので,被験者数が予定していたよりもやや少ないが,想定される範囲内であり,これから十分にカバーできると考えている.また,立体視閾値の個人差に加えて大きな視差に対する奥行き感度の個人差を明らかにしたことは,過去にほとんど例がなく,オリジナリティが高いと言え,立体視個人差の生起メカニズムを明らかにする上で非常に大きな貢献である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果の中で,大きな視差に対する感度と耐性に着目した点は特に重要であると考える.今日では「安全性」を重視するために,大きな視差を与えないことを主旨とするガイドラインが示されている.3D映画などのように不特定多数の視聴者を想定する場合には万人にとって安全であることが求められるので,このようなガイドラインは妥当だが,そのために臨場感が必要以上に犠牲になっている可能性がある.ヘッドマウントディスプレイ等によるバーチャルリアリティシステムのように特定の個人ユーザーを対象とする場合には,より大きな視差の有効性について検討する価値は高いと考える.その知見により,各個人の持つ立体視能力を最大限に生かすようなシステムの構築,調整が可能になり3Dディスプレイシステムの有用性が大きく増すと考えられる. 平成29年度では,28年度までに行った実験をさらに進めて,特にこの点について定量的に測定し,小さい視差に対する特性である立体視力の結果と合わせて,立体視個人差の生起メカニズムを明らかにする計画である.
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Research Products
(9 results)