2016 Fiscal Year Annual Research Report
稀な社会的状況を構成・分析するデータ指向シミュレーション技術
Project/Area Number |
15H02745
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和泉 潔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (10356454)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | マルチエージェントシステム / 社会シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非常に稀で予測困難だが甚大な影響をもたらす社会的状況にも対応し、頑強で信頼性の高い社会制度や経営戦略を設計するための工学的手法を開発し、実際の社会現象に適用することである。そのために、実データを基に稀な社会事象の内部メカニズムを探るための社会シミュレーション技術である「可能世界ブラウザ」を開発する。最終的に、(1)実データに基づく社会行動ルールの推定と(2)稀な社会状況の対話型シナリオ構成、(3)社会状況の発生メカニズム・操作戦略の推定といった基盤技術を開発する。当該年度では、前年度からの社会行動ルールの推定技術の開発に加えて、稀な社会状況の対話型シナリオ構成と社会状況の発生メカニズム・操作戦略の推定に関わる次の要素技術を中心に研究開発を行った。対話型シナリオ構成: 可能世界ブラウザでは、モデルの状態変数の途中状態を記録しておく。そして、特定の途中状態からその後のシミュレーションを再開して、シミュレーション結果を継ぎ足すことが出来る。上述の継ぎ足し操作で、同じ途中状態から異なるパスを待つシミュレーション結果が作り出される(リサンプリング)。その中からある特定時点までの挙動が興味深いパス集団を選択する。このようなシミュレーション結果の選択と融合により、興味深いパスをシミュレーションにより作り出していく手法を開発した。2.稀な社会状況の発生メカニズムの推定: 構成したパスに関して、各エージェントの内部状態がどのように変化していき、内部状態のあるクラスが社会全体でどのような分布となることが、特定の現象の必要条件であるかを分析する手法を開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度より、金融市場での制度設計および銀行間ネットワークのシステミックリスクの両方について、実際の社会現象における操作戦略の検討を行った。提案手法を用いた実証でどのような稀な状況が分析対象になるか、またその状況を操作するためにどのような市場制度や経営戦略などの選択肢があり得るかを、研究協力者との予想以上の協力により研究を進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も、共同研究先との協働関係を継続し、実問題の分析結果を反映させ、想定外のリスクとチャンスを分析対象にした可能世界ブラウザの実問題応用への手法開発を行う。得られた研究成果は引き継ぎ国際会議やジャーナルなどで発表する予定である。
|
Research Products
(7 results)