2016 Fiscal Year Annual Research Report
超複素信号処理アルゴリズムの深化と応用に関する研究
Project/Area Number |
15H02757
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 功 東京工業大学, 工学院, 教授 (50230446)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 信号処理 / 超複素数 / ニュートラルネットワーク / 凸最適化 / 逆問題 / 代表的位相アンラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
多次元情報の超複素数表現を活かした信号処理アルゴリズムの開発競争が世界中で進んでいる。ところが超複素数の数理には未解明な部分も多いため、効果的応用法は手探りの状態にある。本研究では、次世代信号処理の重要な基盤となることが予想される「Cayley-Dickson数(CD数)の応用価値の高い数理」を解明するとともに、強力な超複素数信号処理アルゴリズムを系統的に作り出す新しいメカニズムを構築し、世界をリードすることを目的としている。 2015年度はCD数表現を実ベクトル表現に帰着した後に克服すべき、諸課題を実ヒルベルト空間で定型化することにより、応用と絡めながら広範な検討を進めた。 2016年度は、CD数の特別な例である複素数の位相情報の広範な応用に不可欠な2次元位相アンラップの問題に決着をつけることができた。具体的には、「連続位相曲面の推定問題」が「ベクトル場の推定問題」に帰着できることを示すと共に,2次元スプライン関数によって表現された最適なベクトル場に「代数的位相アンラップ(山田他, 1998年)」を応用することにより,2次元位相アンラップ問題の理想的解決に成功した。また、CD数の実ベクトル表現によって得られる線形逆問題を低ランク推定するため低階数最小分散擬似不偏推定法(山田他, 1996)のロバスト性を理論的に解明することにも成功した。さらに、CD数の実ベクトル表現によって得られる必ずしも線形でない逆問題を理想的に解決するために、階層構造を持つ凸最適化問題の解法の進化にも挑んだ。その結果、第1階層の凸最適化問題の解集合を不動点集合に持つ非拡大写像を新たに実現することに成功した。なお、本プロジェクトの重要な応用例として四元数によるカラー情報処理があるため、カラー歪抑圧のためにカラーライン性を促進するアイディアを提案した。その他にも多くの関連研究を実施し大きな成果を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、次世代信号処理の重要な基盤となることが予想される「Cayley-Dickson数(CD数)の応用価値の高い数理」を解明するとともに、強力な超複素数信号処理アルゴリズムを系統的に作り出す新しいメカニズムを構築し、世界をリードすることを目的としている。[Mizoguchi-Yamada 2014]は、CD数を用いる信号処理問題と実ベクトルを用いる信号処理を繋ぐ翻訳システムの役割を担うため、超複素数信号処理の多様な目的に応えられる特別なフレームワークを実ベクトルや複素ベクトルの世界に構築しておくことが重要である。現在までにCD数特有の数理的課題として「四元数行列の固有値問題」の解明に挑戦中であり、既にいくつかの重要な手がかりを得ているが、これまでの理論的成果を「四元数行列の低ランク復元問題」や「カラー画像復元問題」に応用するべく、準備を進めている。一方、超複素数信号処理用の特別なフレームワークの構築に関しては既に大きな成果が実っており、信号処理や逆問題分野のトップジャーナルやトップレベルの国際会議で研究成果を発表している。特に非拡大写像の不動点集合上の凸最適化を進化させることは本プロジェクトの重要な要に育っている。これに関連した成果は、ハーバード大で開催されたハイレベルな研究集会「Workshop on Optimization in Image Processing (June 27-30, 2016) organized by Prof. Shing-Tung Yau(Harvard Univ:82年フィールズ賞受賞者) and Prof.Raymond Chan(The Chinese University of Hong Kong)」での招待講演に繋がっている。さらに、2次元位相アンラップの革新的解法についても、国内の複数の研究集会での招待講演に繋がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
「四元数行列の固有値問題」は一筋縄にいかない困難な課題であるが、この問題の解明は四元数行列の特異値分解や低ランク近似問題の解決にも直結するため、重点的に検討を進めていく。さらに、八元数以上のCD数もナチュラルビジョンなどへの応用展開も期待できる。一方、超複素数の特別例である複素数の位相については、単位円周に沿った代数的位相アンラップの計算機実装で問題となっていた数値的不安定性を解消すべく、自己反転多項式型部分終結式を開発し、これを用いた代数的位相アンラップを実現していく。さらに、最近、スパースベクトルの推定問題の解法として広く用いられているLassoのパラメータチューニングが著しい進化(例:TREX法[Laderer, Mulller'15])を遂げている事実に注目し、超複素数信号処理問題にもこれを応用することを検討する。現在、ハイブリッド最急降下法を用いて、TREX階層法に構造を持たせるアイディアを検討しており、初期検討結果はSIAM conference on Optimization 2017 (Vancouver, May 22-25, 2017)のミニシンポジウム“Proximal Techniques for High-Dimensional Statistics" (organized by Christian Mueller and Patrick Combettes)での招待講演で発表予定である。
|
Research Products
(17 results)