2017 Fiscal Year Annual Research Report
超複素信号処理アルゴリズムの深化と応用に関する研究
Project/Area Number |
15H02757
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 功 東京工業大学, 工学院, 教授 (50230446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯川 正裕 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (60462743)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 信号処理 / 超複素数 / ニュートラルネットワーク / 凸最適化 / 逆問題 / 代表的位相アンラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次世代信号処理の重要な基盤となることが予想される「Cayley-Dickson数(CD数)の応用価値の高い数理」を解明し、世界をリードすることを目的としている。これまで四元数以上のCayley-Dickson数の乗法は可換でなくなるため、固有値問題に関して殆ど未解明の状況にあった。例えば、四元数行列の固有値問題については,F. Zhang, "Quaternions and matrices of quaternions," Linear Algebra and Its Applicaions, vol.251,1997 で右固有値問題についてのみいくつかの性質が解明されているのみであった。そこで、2017年度は、Cayley-Dickson 数を成分に持つ行列の固有値問題の解明に絞って研究を進め、大きな進捗を得ることができた。具体的には、[Mizoguchi,Yamada2014]で開発したCayley-Dickson線形システムの実等価表現を用い、一般のCayley-Dickson行列の固有値問題を実表現された行列の固有値問題として最定式化を行ない、これを解明した。また、Cayley-Dickson行列の特異値分解を新たに定義し、これを元にCayley-Dickson行列のランクを自然に定義している。さらに、Cayley-Dickson行列の最良低ランク近似を与え、これを元にCayley-Dicksonテンソルのテンソル補完問題の定式化と解法アルゴリズムを提案することができた。さらに、超複素数の高次元データ解析やシステム同定問題、適応信号処理問題への応用可能性を確認するために、これまで超複素数が未だ十分に活用されてこなかった課題(「不動点近似を応用したスパース信号処理」「区分的連続システムのシステム同定」等)についても数理的研究を行い、大きな成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで実数または複素数を成分とするベクトルや行列やテンソルによって表現することが、多次元情報の唯一の表現手段となっていたが,本研究では超複素数には多次元情報を単一の数(多次元数)で表現する能力が備っている事実に注目している。実数または複素数を成分とするベクトルや行列やテンソルによる表現との本質的な違いは,Cayey-Dickson数に代表される超複素数は代数的に自然な四則演算を備えていることにある。勿論、これらの演算は代数的に自然であるとはいえ、体が持つ四則演算の基本性質は満たさないため、体の演算に馴れた我々が素朴な表現のまま演算する場合には不自由さを感じるが、本研究のアイディアに沿った多次元数演算に相応しい表現形式を与え、これを元にした超複素線形代数を新たに構築すれば、多次元情報を成分とするベクトルや行列やテンソルが利用可能となり、実数と複素数に縛られた既存の信号処理を飛躍的に進化させる基盤となるはずである。特に2017年度に着手した「Cayley-Dicksonテンソルのテンソル補完問題」にはカラー信号処理や3次元プリンターなどへの膨大な応用可能性を備えていることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の研究で解明された「一般のCayley-Dickson行列の固有値問題」の応用を飛躍的に拡げ、超複素信号処理の有効性を実証する。例えば、実行列と複素行列を低ランク行列と疎行列の和に近似分解を実現するPrincipal Component Pursuit をCayley-Dickson行列に一般化し、これを実現するアルゴリズムを構築することを検討している。なお、初期検討結果は11月にホノルルで開催される国際会議(APSIPA ASC 2018)の Special Session 「Recent advances of machine learning and signal processing in hypercomplex domain (Organizer Isao Yamada and Akira Hirose)」で発表予定である。さらに、Cayley-Dicksonテンソルのテンソル補完問題への応用についても、信号処理分野のトップジャーナル(IEEE Transactions on Signal Processing)に投稿し、本研究の革新性と有効性を世界中のエキスパートに向けて発信するべく準備を進めている。
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Research Products
(8 results)