2015 Fiscal Year Annual Research Report
耳鳴り抑制:閉ループ型実時間情報処理を備えた微小電気刺激装置開発と覚醒脳への展開
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15H02772
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
舘野 高 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00314401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神保 泰彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20372401)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 耳鳴り / 神経活動 / 抑制制御 / 電気刺激 / 磁気刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,計画全体として,耳鳴りに関連する神経活動を電磁気的に抑制制御する微小刺激と記録システムをデバイスレベルから開発するための基礎的研究基盤の構築を目指している.今年度は,研究期間の初年度に当たり,動物実験に関する基盤を構築すると共に,制御システムの構築を目指した.まず,ラットおよびマウスのin vivo動物実験において,聴覚皮質の神経活動を電気生理学および光計測(膜電位感受性色素,および,フラビンタンパク質イメージング)を行う実験系を構築し,その方法に十分に習熟した.その結果,ラットの周波数地図とその音刺激応答について,幾つかの新しい知見が得られたために,得られた実験結果を神経科学国際誌(Noto et al., Neuroscience, 2016)に投稿した.次に,in vitro 脳切片実験系で,耳鳴り関連神経活動の伝搬様式を皮質6層構造で多点計測し,その活動生起と伝搬の生理学的機序を明らかにした.特に,耳鳴り誘発剤をマウスに投与する前段階として,耳鳴りの動物モデルの脳スライスに,同薬剤を投与した際の神経活動変化を詳細に計測した.その結果について,国内学会大会(Sano and Tateno, 日本神経科学会大会,神戸,2015)および国際会議(Tateno and Sano, Annual meeting of Society for Neuroscience, シカゴ,2015)で発表した.また,in vivo 動物実験において,聴覚皮質へ刺入して電気的刺激を印加する多電極配列基板(ミシガンプローブ)を試作した.さらに,耳鳴り抑制システムとして,サブミリサイズのコイルで磁気刺激を行う実験系を構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の前半では,実験条件の制御が容易なin vitro 脳切片実験系で,耳鳴り関連神経活動の伝搬様式を皮質6層構造で多点計測し,その活動生起と伝搬の生理学的機序を詳細に明らかにした.その結果は,日本神経科学会大会およびSociety for Neuroscienceの年会で発表した.特に,聴覚皮質脳切片の活動計測において,潅流液中に特定の薬剤を加えると耳鳴り様の神経活動が発生することが知られている.本課題では,申請者らが既に得ている予備的な実験結果に基づき,聴皮質6 層構造のどの層から,耳鳴り様の自発的神経活動が発生し,その後,どの方向に伝搬していくかを平面型多電極配列基板の計測システムで観察した.この知見の中には,次年度に計画しているin vivo動物実験に有用な結果が含まれていた.また,光計測により,ラットおよびマウスの聴覚皮質の神経活動の様子が詳細に観察できるようになった.その結果は,国際誌(Neuroscience, 2016)に報告しており,着実に実験結果を蓄積している.また,刺入型刺激電極の試作を完成しており,次年度に実際に動物脳に応用する予定である.さらに,サブミリサイズのコイルを用いた磁気刺激装置の構築を行っており,初年度の研究計画としては,概ね目標を達成したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,昨年度に引き続き,小型の電気および磁気刺激デバイスを開発する.特に,生体適合性について検討し,より脳にダメージを与えずに神経活動を誘起できるデバイス構成と組織に損傷を与え難い表面被覆法を探る.本年度のin vitro実験の結果に基づき,次年度の前半では,開発したin vivo電気および磁気刺激インターフェースを用いて,実際に,脳刺激による神経活動の誘発応答記録実験を行う.特に,電気および磁気刺激の振幅や時間長等の刺激パラメータを変化させることにより,誘起される神経活動の範囲や活動伝搬の様子を詳細に観察する.また,経頭蓋磁気刺激により,頭蓋骨を開口させずに,脳刺激が可能かについて実験的に検証する. 次年度の後半では,前期で開発した電磁気刺激デバイスを利用し,長期抑圧刺激条件により,音誘発応答がその前後で変化するかを調べる.続いて,耳鳴りモデル動物を用いて,長期抑圧刺激前後の耳鳴り関連応答を記録して,長期抑圧の効果が神経活動の誘発応答に及ぼす効果を実験的に調べる.さらに,耳鳴り誘発剤を投与した耳鳴り動物モデルを利用して,耳鳴りの細胞レベルでの発生機序を電気生理学的手法で明らかにする.特に,聴覚皮質とその周辺領域に記録対象を絞り,耳鳴り誘発剤が電気的活動に与える効果を調べ,対応するin vitro実験における神経活動の変化との関係性を理解する.
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Research Products
(4 results)