2015 Fiscal Year Annual Research Report
「メディア出身議員」調査による新しいメディア政治史の構想
Project/Area Number |
15H02792
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 卓己 京都大学, 教育学研究科, 教授 (80211944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 義和 帝京大学, 総合教育センター, 准教授 (10324592)
本田 毅彦 京都女子大学, 文学部, 教授 (40246004)
河崎 吉紀 同志社大学, 社会学部, 准教授 (30388037)
福間 良明 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70380144)
石田 あゆう 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (70411296)
赤上 裕幸 防衛大学校, 人文社会科学群, 講師 (30610943)
白戸 智子 (松永智子) 東京経済大学, コミュニケーション学部, 講師 (60735801)
白戸 健一郎 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80737015)
福井 佑介 京都大学, 教育学研究科, 助教 (20759493)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メディア史 / 政治のメディア化 / ジャーナリズム / 衆議院議員 / メディア出身議員 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究会の組織化 研究分担者および研究協力者(京都大学大学院教育学研究科大学院生)を中心にメディア政治史研究会を組織して、3回の研究会と研究合宿を行った。 まず第1回では研究代表者・佐藤卓己がドイツ政治史における「議席を保有するジャーナリスト」(Journalist mit Mandat)に関する先行研究の整理を行った。さらに、河崎吉紀が近代日本における新聞記者の高学歴化、サラリーマン化のプロセスを『日本新聞年鑑』ほかの膨大なデータ(出身地・学歴・給与水準など)から分析した実証研究『制度化される新聞記者―その学歴・採用・資格』(柏書房・2006年)以後の研究を整理した。第2回では、日本の新聞界がイギリス紙を一つのモデルとしてきたことをふまえ、「新聞男爵」Press Baronなど大英帝国のエリート研究史から論点を整理し、「メディア出身議員」と対比可能な「官僚出身議員」の先行研究を検討した。 2.データベースの構築 上記の「メディア出身議員」の理論化と並行して、1890年の第1回衆議院議員総選挙以降の「メディア出身議員」についての量的な分析に必要なデータベースを構築した。衆議院編集『議会制度百年史 衆議院議員名鑑』(大蔵省印刷局・1990年)に記載された衆議院議員から「新聞社」「出版社」「映画会社」「放送局」「製紙会社」「興業関係」などの経歴をもつ人物をリストアップして「メディア関連議員」データベースを構築した。そのデータの検討を第3回研究会で行い、記入漏れや誤記を防ぐため二度の相互チェックとデータ補正をおこなった。これにより、近代日本における「議員のメディア化」の展開プロセスを量的に明らかにすることが可能になり、その学歴形成や地域性なども具体的に検討が可能になった。 第二年度は、「メディア出身議員」の定義の確定とデータベースの完成をめざし、分担者が「メディア関連議員」データベース上の「あいまい」情報の検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は「政治のメディア化」を体現する存在である「メディア出身議員」を量的および質的に分析し、「政治のメディア化」を軸とした新しい時期区分を提示することを目的として計画した。研究計画の第一年度では、特に日本におけるジャーナリスト研究の系譜を整理するとともに、英米独など海外のメディア政治史研究を消化しつつ、「メディア出身議員」の定義を行うことをめざしていた。その目的は十分に果たし、第二年度に予定している「メディア出身議員」データベースの完成も目処が立っているので、計画以上のスピードで進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度に「メディア出身議員」データベースの完成を行うとともに、第三年度はそのデータベースを使った研究成果のとりまとめに向けて進んでいく。すでに研究成果の刊行も出版社との間で交渉が進んでおり、第二年度からは出版社の編集者にも研究会に参加してもらうことになっている。 なお、この研究の射程としては、「メディア出身議員」の多くが地方紙の主筆や経営者であるため、従来の「中央メディア」に偏したジャーナリズム像に一定の修正を加えることも想定している。そのため、第一年度は有名な「新聞人輩出県」である熊本県の調査を行ったが、第二年度は西の熊本に対する東の「出版人輩出県」の長野県にスポットを当てて具体的な調査を行う予定である。
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Remarks |
nippon.com (佐藤卓己「「2015年安保」と〝新聞の二極化〟を考える」2015.12.07、英語版・仏語版あり) URL:http://www.nippon.com/ja/in-depth/a05002/
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Research Products
(37 results)