2015 Fiscal Year Annual Research Report
大気中に放散される有機アミン類の大気質影響評価のための大気反応モデルの構築
Project/Area Number |
15H02809
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
今村 隆史 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 研究センター長 (60184826)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 有機アミン / OHラジカル反応 / 反応速度係数 / オゾン反応 / 有機アミノラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
光化学反応チャンバーを用いて、有機アミン類とOHラジカルとの反応速度係数を測定した。速度係数の決定は1級-3級のエチルアミンを対象に相対速度法を利用した。実験では、2種類のOHラジカルの発生法-NOx存在下での光化学反応とNOx非存在下での暗反応-を利用した。NO存在下で亜硝酸メチルの光分解を利用したOH反応実験では、炭化水素+OH反応実験とは異なり、硝酸(HNO3)の生成が認められないことを見出した。HNO3の消失がエチルアミン類との反応と仮定した反応モデルから、その反応速度係数の上限値を決定し、OH反応速度の見積りでは、有機アミンの消失に対する硝酸との反応の影響を補正することが必要であることを明らかにした。一方、NOx非存在下でのOH生成源として、O3+アルケン反応を利用した。なお、トリエチルアミンの反応系では、O3反応によるトリエチルアミンの消失が無視できず、OH反応速度の推定誤差が大きいため、O3反応を利用した速度係数測定は、1級および2級アミンのみで実施した。光化学反応ならびに暗反応条件での得られた速度定数は実験誤差内で一致した。 チャンバー実験とは別に、レーザー光分解-質量分析検出を用いたアルキルアミンの酸化反応中間体の検出と反応速度の測定実験も進めた。アルキルアミン+OH反応では、アルキルラジカル(例えば、CH2NH2。以下RCと略す)と、有機アミノラジカル(例えば、CH3NH。以下RNと略す)が生成される。RCとRNは同一の質量数を有するため、質量分析では分離が不可能であるが、RN+O2反応が極めて遅いことから、O2の有無によるラジカルの消失の有無により、RC反応とRN反応の分離可能であることを確かめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に実験設備が設置されている建物の耐震工事が行われることは研究費の申請段階で分かっていたが、当初の予定に比べ工事開始時期がずれ、実質的に実験に支障をきたす期間が延びたため、当初予定していたO3+アミンの反応速度測定実験については実験の最適条件の検討までに留まった。またレーザー反応実験についても一部の実験に遅れが生じた。その一方で、O3+アミン反応からのOHラジカル生成と、OH収率測定へのトレーサー法の適用に関する予備的な条件検討が出来た点は、28年度に向けての収穫であった。また、レーザー光分解-質量分析法を用いたラジカル素反応実験で、アルキル型ラジカル+O2の速度係数測定に目途が付いた点や、R2NNOxの生成物検出の反応速度実験への応用の可能性に見通しが立ったことも28年度に向けての収穫であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
主としてエチルアミンを対象にオゾン反応を擬1次反応条件ならびに2次反応条件下で測定し、反応速度係数を決定し、O3+メチルアミン反応の速度係数(過去に報告例あり)と比較する。また、O3+メチルアミン類での速度係数について、量子化学計算による定量的な議論が行われていないことから、量子化学計算を実施、1級から3級へとメチル置換が進むにつれ速度係数が増大する理由やC=C結合が存在しないにも関わらず一定の大きさの速度係数を持ち得る理由を明らかにする。反応機構の点からは、オゾン-アミン反応におけるOHラジカル生成の有無が1~3級アミンで異なる可能性があることが27年度の予備実験から分かった。これを受け、OHトレーサー法やOH捕獲法を適用して、O3+アルキルアミン反応でのOHラジカルの生成収率を決定する。また、量子化学計算結果と照らして、反応機構を明らかにする。 N中心ラジカル(RNH型ラジカル、R2N型ラジカル)の反応速度を、レーザー光分解-質量分析法を用いた反応実験から決定する。対象とする反応は、NOならびにNO2との反応である。レーザー光分解実験から得られる反応速度情報に加えて、光化学反応チャンバーを用いたニトロソアミンの光分解反応系の速度論的解析も加味することで、R2N+O2反応が大気中でのR2Nラジカルの消失に及ぼす寄与を推定する。
|
Research Products
(2 results)