2016 Fiscal Year Annual Research Report
地球表層最大の炭素プールの反応性:土壌と海底堆積物の共通メカニズムの検証
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15H02810
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
和穎 朗太 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 気候変動対応研究領域, 上級研究員 (80456748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸野 祐樹 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, グループリーダー代理 (30421845)
平舘 俊太郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター・有害化学物質研究領域, 上席研究員 (60354099)
長尾 眞希 (浅野眞希) 筑波大学, 生命環境系, 助教 (80453538)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 炭素循環 / 土壌有機物 / 地球温暖化 / 土壌鉱物 / 堆積物 / 生物地球化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌と海洋堆積物に含まれる有機物の安定化(微生物分解の抑制)に共通するメカニズムとして鉱物粒子およびその他の無機成分との様々な結合の重要性が認識されつつある。その中で我々は、鉱物組成および有機物存在量が異なる土壌および堆積物試料を用いて研究を進めている。
二年目であるH28年度は、海洋堆積物においては、鉄と有機物の相互作用に着目し分析手法の検討および河川・河口堆積物の分析を進めた。背景には、海洋堆積物中の有機炭素の2割前後が鉄との結合によって安定化しているというNature論文(Lalonde et al.,2012)がある。カナダグループによるこの論文は、我々が開発した手法(Wagai&Mayer,2007,GCA)を一部変更して得た結果であるが、彼らの手法にバイアスがある可能性があった。そこで我々の手法との比較検討を行い、システマチックな誤差が生じる事を突き止めた。更に、米国ミシシッピ川の懸濁粒子、河川堆積物、および河口の海底堆積物を対象に、鉄結合態の炭素を定量し、河川から海洋に向かい低下してゆくことを明らかにした。
土壌については、これまで採取した土壌の比重画分の化学分析から、植物残渣を主体とする低比重画分中に放射性炭素年代が古いサンプルが多々見られることが分かった。その主体は微細な炭化物に無機成分(特にアルミニウムや鉄)が付着したものであることを、電子顕微鏡および放射光源を用いた走査型透過軟X線顕微鏡(STXM)を用いて明らかにした。また、2016年5月にはアメリカの研究者が主催する鉱物による土壌有機物の安定化に関するワークショップに参加し、粘土と金属酸化物による安定化作用、最新実験結果と既存の物質循環モデルの乖離などについて議論し、その後これらのテーマで共同研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要で示した通りの実験に加え、土壌についても海洋堆積物についても、海外の研究者との共同研究が進み、予定以上のペースで進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本課題を更に発展させるために国際共同研究強化費を利用してフランス(INRAおよびAgro Paris Tech)で有機物安定化メカニズムの研究を進める予定であるが、同時に本課題も着実に進めていく。 具体的には、これまで物理分画手法を用いて分離した画分の物性(例、比表面積、活性鉄・アルミニウム含量、物理構造等)と有機物の性質(炭素・窒素濃度、安定同位体比、放射性炭素年代)の分析を継続すると共に、分析結果のまとめを行っていく。 特に、炭化物のように有機物の分子構造上の理由で安定化している炭素と、タンパク・鉱物複合体のように易分解性の化合物が無機成分との相互作用によって安定化している炭素プールが物理分画手法によってどの程度効果的に分離できているかについての解析を進める。 更に、各画分サンプルの表面特性(有機物との相互作用)を有機物除去前後のガス吸着分析から明らかにし、鉱物マトリックス中の有機物の存在形態と反応性について考察を深める。また、有機物の安定化に大きく寄与すると考えられるAlおよびFeの存在形態および土壌構造中における存在部位の解析をスペクトロスコピー分析を用いて進める。 また、米国の研究者らと協力して既存土壌データのメタ解析を行い、土壌有機物の貯留および安定化を規定する土壌理化学性パラメーターの探索を行う。より具体的には、土壌炭素貯留は、従来考えられてきた粘土含量よりも、我々の研究からも明らかになってきた活性鉄・アルミニウム含量によって規定されるという仮説を検証する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Representation of diffusion controlled carbon stabilization in reactive transport models2016
Author(s)
Aaron Thompson, Jennifer L Druhan, Marco Keiluweit, Rota Wagai, Alain F Plante, Corey R Lawrence, Asmeret Asefaw Berhe, Carlos A Sierra, Craig Rasmussen, Erika Marin-Spiotta, Joseph C Blankinship, Joshua Schimel, Katherine A Heckman, Susan E Crow, William R Wieder
Organizer
American Geophysical Union 2016 Fall Meeting
Place of Presentation
サンフランシスコ(アメリカ合衆国)
Year and Date
2016-12-15 – 2016-12-15
Int'l Joint Research
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[Presentation] The Soil Carbon Paradigm Shift: Triangulating Theories, Measurements, and Models2016
Author(s)
Joseph C Blankinship, Susan E Crow, Joshua Schimel, Carlos A Sierra, Christina Schaedel, Alain F Plante, Aaron Thompson, Asmeret Asefaw Berhe, Jennifer L Druhan, Katherine A Heckman, Marco Keiluweit, Corey R Lawrence, Erika Marin-Spiotta, Craig Rasmussen, Rota Wagai, William R Wieder
Organizer
American Geophysical Union 2016 Fall Meeting
Place of Presentation
サンフランシスコ(アメリカ合衆国)
Year and Date
2016-12-13 – 2016-12-13
Int'l Joint Research
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[Presentation] Beyond clay - using selective extractions to improve predictions of soil carbon content2016
Author(s)
Craig Rasmussen, Asmeret Asefaw Berhe, Joseph C Blankinship, Susan E Crow, Jennifer L Druhan, Katherine A Heckman, Marco Keiluweit, Corey R Lawrence, Erika Marin-Spiotta, Alain F Plante, Christina Schaedel, Joshua Schimel, Carlos A Sierra, Aaron Thompson, Rota Wagai, William R Wieder
Organizer
American Geophysical Union 2016 Fall Meeting
Place of Presentation
サンフランシスコ(アメリカ合衆国)
Year and Date
2016-12-13 – 2016-12-13
Int'l Joint Research
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