2016 Fiscal Year Annual Research Report
染色体転座生成を導く二つのDNA二本鎖切断シグナル間の相互干渉の証明
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15H02816
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新美 敦子 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (50508984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | DNA修復 / 染色体転座 / 53BP1 / DNA二本鎖切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体転座は最も重篤なゲノム不安定化の一つであるが、その作用機序はいまだ多くが不明である。転座は異なる染色体上に生じた二つのDNA二本鎖切断(DSB)が連結することにより生じる。転座の過程は、1)DSB末端の削り込み、2)二つのDSB末端の探索と会合、3)連結、からなる。本研究では染色体転座研究の中でも最も未解明な「DSB末端の探索と会合」に着目する。申請者は核内における広大な空間から二つのDSBが引き合い会合するためには、DSB近傍における損傷シグナルに伴った能動的クロマチン変動が必要であるという仮説を立てた。本研究では仮説証明のため、部位特異的DSBを導入した新規転座アッセイ系を開発し、DSB近傍損傷シグナル及びクロマチン構造を人為的に操作することで、二つのDSB間の相互干渉が転座に及ぼす影響を明らかにする。 本年度ではまず、既に樹立したLacO-I-SceI-TetO細胞株を用い、転座発生頻度の測定を検出する系の確立を試みた。4OHT(タモキシフェン誘導体)によって発現誘導可能なI-SceIベクターを上記細胞株に導入し、4OHTを培地に添加することでLacOとTetO間に特異的にDSBを作成した後にリアルタイムPCRを用いて転座頻度の測定を行った。しかし、LacO-I-SceI-TetO配列は多数のリピート配列を有しているため、リアルタイムPCRによる定量的な解析を行うことが困難であった。そこで現在は、I-SceIとリピート配列の間に500bpのスペーサーを挿入したベクターを作成している。また、I-SceIでの切断効率が低かったため、切断部位を別の制限酵素であるI-PpoIに変更したベクターも作成している。一方で、主に蛍光顕微鏡を用いた解析も並行して行い、長崎大学・山内基弘博士及び群馬大学・柴田淳史博士らとの共同研究により、mCherry-53BP1を発現するヒト正常繊維芽細胞(BJ hTERT)では放射線誘発53BP1がペアリングすることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、まず染色体転座効率を測定する系の確立を目標とした。既に樹立した転座アッセイ用のLacO-I-SceI-TetO細胞株を用い、4OHTによるI-SceIの発現誘導によりDSBを作成した。4OHT添加72時間後にDNAを回収し、LacO-TetO間をまたぐプライマーを用いたリアルタイムPCRにより転座効率の測定を試みた。しかし、リアルタイムPCRによる定量的な解析を行うことは技術的に困難であることが明らかとなった。そこで、主に顕微鏡を用いた解析を行うこととした。長崎大学・山内基弘博士及び群馬大学・柴田淳史博士らとの共同研究により、mCherry-53BP1を発現するヒト正常繊維芽細胞(BJ hTERT)では放射線誘発53BP1がペアリングすることを見出した。ペアリングは必ずしも転座を反映しないが、転座が起こるための十分条件だと考えられる。そのため、fociのペアリングをタイムラプス蛍光顕微鏡により計測することで転座頻度の測定が可能と考えられた。また、さらなる解析を行う目的で、53BP1の各ドメインに対して変異体の作成を行った。 以上の結果から、当該年度の目標は当初やや遅れを生じたものの、最終的にほぼ達成できたと考えられる。 よって、本研究課題の現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、既に見出された放射線誘発53BP1のペアリングが、双方のDSB部位からの損傷シグナルにより成立するかどうかをLacR-野生型53BP1及びTetR-変異型53BP1を用いて検討する。53BP1変異体は各ドメインに対して作成する。検出方法はmCherry-野生型53BP1及びEGFP-変異型53BP1を発現後、二つのfociのペアリングをタイムラプス蛍光顕微鏡により計測する。本実験により、一方のDSB末端が正常な53BP1シグナルを有する場合においても、転座のパートナーとなるもう片方のDSB末端からのシグナルの必要性が明らかとなる。 次に、DSB近傍のクロマチン状態が転座に及ぼす影響を、I-SceI解列近傍を強制的にヘテロクロマチン化することで解析する。片側のDSB近傍をヘテロクロマチン化するためLacR-HP1を細胞内で発現する。また、LacR-HP1が有するメチル化ヒストン結合領域に変異を導入することで、LacR-HP1のLacOリピート配列以外への影響を最小限化する。更に内在性53BP1をノックダウンし、転座形成時のクロマチン構造変換における53BP1の重要性を解析する。 また、本研究で着目している「二つのDSB末端の探索と会合」についてDSB末端の存在が必要かどうか明らかにするために、I-SceIを誘導しない条件下において、LacR-MDC1及びTetR-MDC1を発現することでDSB非依存的DNA修復を誘導する。DSB非依存的な損傷シグナルがお互いを探索及び会合するかどうかを、LacR-mCherry-MDC1とTetR-EGFP-MDC1によるペアリングをモニターすることで検討する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] BRCA1 directs the repair pathway to homologous recombination by promoting 53BP1 dephosphorylation2017
Author(s)
Mayu Isono, Atsuko Niimi, Takahiro Oike, Yoshihiko Hagiwara, Hiro Sato, Ryota Sekine, Yukari Yoshida, Shin-Ya Isobe, Chikashi Obuse, Ryotaro Nishi, Elena Petricci, Shinichiro Nakada, Takashi Nakano, Atsushi Shibata
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Journal Title
Cell Reports
Volume: 18
Pages: 520-532
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Regulation of pairing between broken DNA-containing chromatin regions by Ku80, DNA-PKcs, ATM, and 53BP12017
Author(s)
Motohiro Yamauchi, Atsushi Shibata, Keiji Suzuki, Masatoshi Suzuki, Atsuko Niimi, Hisayoshi Kondo, Miwa Miura, Miyako Hirakawa, Keiko Tsujita, Shunichi Yamashita, Naoki Matsuda
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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