2016 Fiscal Year Annual Research Report
土壌環境のヒ素汚染に関与する微生物要因の解明と汚染リスク評価への応用
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15H02842
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱村 奈津子 九州大学, 理学研究院, 准教授 (50554466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
光延 聖 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70537951)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒ素汚染 / 微生物ヒ素代謝 / 土壌微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
猛毒のヒ素は、世界でもっとも深刻な化学汚染物質の一つであるが、ヒ素汚染の原因の中でも微生物の関与については不明な点が多く、汚染リスクを把握する際の障害となっている。そこで本研究では、汚染土壌のヒ素汚染リスクを適切に予測し安全性の評価につなげるため、ヒ素溶出に関与する微生物要因の定量的な検出手法を開発し、環境要因の変化が引き起こすヒ素汚染プロセスの解明を目的としている。当該年度は、環境中ヒ素挙動に影響を及ぼす微生物要因を同定するため、酸化還元代謝に関与する酵素を標的とした定性定量的手法を検討した。特に、近年同定された嫌気的ヒ素酸化酵素(Arx)は、主にアルカリ塩湖や温泉などの極限環境から検出された経緯もあり検出手法も限られていたが、本研究で確立したプライマーを用いることで、ヒ素汚染土壌中にも分布していることが確認された。これら嫌気的ヒ素代謝経路も含め、汚染土壌におけるヒ素挙動への関与を調べるため、土壌カラムを用いてヒ素添加後に酸素供給量を変化させた状況下でのヒ素挙動および微生物群集への影響をモニタリングした。その結果、ヒ素酸化活性の検出とともにヒ素酸化酵素遺伝子型の推移が確認され、また、実験に用いた土壌カラムからは多系統に分布するヒ素酸化細菌群を分離培養しており、これら細菌群が土壌ヒ素挙動に関与していると考えられる。本結果は、酸素供給量などの環境要因変動への応答として、異なるヒ素代謝遺伝子型に反映される生理生態特性の異なるニッチに適応した細菌群が優占化していることを示唆しており、汚染土壌環境における潜在的な環境適応能力を評価する上で重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌中のヒ素挙動に影響を及ぼすヒ素代謝微生物群の検出および同定については実施済みであり、また環境要因の変化に伴う微生物ヒ素代謝変動についても検討済みである。今後さらに定性定量データと比較検討し、汚染土壌におけるヒ素溶出リスクの検討を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、多系統に分布しているヒ素代謝分離株の特異的なヒ素代謝活性データを取得するとともに、代謝遺伝子発現の定性定量的な変動解析結果に基づき、ヒ素挙動変動への影響を明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)