2016 Fiscal Year Annual Research Report
湿式精錬による希土類高純度化とイオン液体電析の連携による新規希土類回収技術の開発
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15H02848
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松宮 正彦 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (00370057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綱島 克彦 和歌山工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90550070)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有価物回収 / イオン液体 / 湿式精錬 / 電解析出 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類資源の安定供給策は国家規模での重要課題に位置付けられ、我が国独自の希土類回収技術の開発は喫緊の課題である。「湿式精錬技術」と「電解析出技術」の統合に向けて、平成28年度は「希土類錯体種の分光学的解析及び核生成挙動解析」に関する研究を主体的に実施した。 1)希土類錯体種の分光学的解析 ラマン分光法と紫外可視分光法を併用して、希土類種の二座配位子となるTFSAアニオンの配位環境を希土類元素系及び鉄族元素系に対して解析した結果、希土類元素系では[Nd(TFSA)5]2-, [Dy(TFSA)5]2-であり、鉄族元素系では[Fe(TFSA)3]2-のような錯形成状態を構成し、TFSAアニオンの配位数は鉄族元素<希土類元素であることが判明した。また、密度汎関数計算「ADF」を希土類錯体に対して適用した結果、TFSAアニオンは単座配位と二座配位の混在であることが判明した。このようにイオン液体中での希土類種に対する錯形成状態を分光学的手法により解析することで、還元過程で関与する希土類錯体種を明確化することができた。 2)希土類金属の核生成挙動解析 金属種の電析過程において、電析初期段階における核の生成・成長機構が重要となる。本研究では希土類錯体を含むイオン液体系での電気化学測定及び半積分・半微分解析法を適用して、希土類種の核生成機構を解析した。その結果、[Nd(TFSA)5]2-, [Dy(TFSA)5]2-からの還元過程では、核生成機構に過電圧依存性が見受けられ、過電圧を増加させることにより同時核生成機構~逐次核生成機構へ移行することが明らかとなった。このように、電析過程では過電圧の調節により、電析物の形態制御を行うことが重要であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は全て達成しているだけではなく、共同研究先との連携により、「湿式精錬技術」と「電解析出技術」の基盤となる特許の審査請求まで進行できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は「廃磁石からの鉄族元素及び希土類元素回収プロセスの適用性検討」に向けて、以下の研究を計画している。 1) 平成28年度までの研究成果をプロセス技術に反映するため、「イオン液体電析」に関する研究開発を中心的に遂行する。ここで、、核生成挙動解析から得られた試験結果に基づき、Nd, Dy混合系におけるイオン液体電析を実施する。定電位電解試験ではNd, Dyの過電圧を変化させて、両希土類金属種の電解析出における選択的分離及び効率回収を目指す。得られた電析物は、SEMで表面形態を観察し、EDXにより元素分析を実施する。表面形態はμmオーダーの粒子状であることが予測されるため、粒度分布についても考察する。また、電析物の深さ方向解析において、特に希土類種の化学結合状態の評価はXPSを活用する。さらに、酸化物形成が少ない電析条件を探索していき、より優れたプロセス技術の開発を目指す。 2) 上記項目1)の希土類混合系だけではなく、実際の廃磁石を利用した一連のプロセスによる鉄族元素及び希土類回収試験を行う。本試験は【改良型湿式精錬工程】により実施し、鉄族元素の分離率、希土類種の電解回収における電流効率、回収率、電解エネルギーを評価する。湿式精錬工程で回収する希土類塩の純度を90%以上に高めることで、後続の電解回収に要する電流効率及びエネルギー効率を高め、省エネルギー型のプロセス技術を目指す。最終的な希土類種の回収物形態を評価するだけではなく、「湿式精錬工程」と「イオン液体電析工程」を連携させた全プロセスの総合コスト評価を合わせて実施する。
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Research Products
(9 results)