2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射線被ばくへの効果的な対策に資する問題解決型リスク評価手法・過程の検討と実践
Project/Area Number |
15H02854
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
内藤 航 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (10357593)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 敏弘 福井県立大学, 経済学部, 教授 (00231209)
小野 恭子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (90356733)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 個人線量 / 避難地域 / 福島 / 被ばくリスク / 健康リスク / 除染費用 / 費用対効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島県川俣町山木屋地区と飯舘村の住民や行政と協力して約40人の個人線量データを取得した。個人線量データと行動記録・GPS情報との突合作業を行い、避難地域における場所や行動別の個人線量特性を把握した。航空機モニタリングによる空間線量との関係より、個人線量は空間線量の1~3割程度であることがわかった。 原発事故後に生じた放射線被ばくと身体的健康リスク等について、それぞれがどの程度大きいのかを比較した。放射線被ばくによるリスク増加のみならず、震災後は仮設住宅への入居等、生活環境の変化が身体的健康リスク増加につながる可能性がある。本研究では、糖尿病の有病率に関して震災前後のデータが入手可能であったことから、「震災の影響で新たに糖尿病に罹患した」というシナリオのもと、損失余命を計算した。また、糖尿病リスク削減対策の費用について調査した。 様々な被曝回避方法の効果と費用とを結びつける研究の第1段として、除染という最も大掛かりな方法の実際にかかった費用の情報を、すでに除染の終わった楢葉町について集め、整理した。農地で368円/m2、森林で1160円/m2、建物で1597円/m2、道路で680円/m2、仮置場での保管費を含めた直接費計で1833円/m2といった結果を得た。被曝量軽減と対比する作業が未完である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個人線量計とGIS/GPS 技術を活用した被ばく線量の実態把握および線量理論とエビデンスに基づく被ばく線量推定手法の構築に関しては、自治体や住民の協力によりデータの蓄積が進んでおり概ね順調に進展している。被ばく線量対策の社会経済性評価については楢葉町の実績をベースに費用算出を試みており、今後必要な情報や作業の確認ができている。国内外における放射性物質の被ばくリスク対策及び事例研究の実態調査については担当研究者の異動等でやや遅れているものの情報収集に必要な体制の構築やアンケート案の検討は進んでおり、平成28年度は順調にデータ収集が進められる見込みである。
|
Strategy for Future Research Activity |
実施内容や推進方法について当初の予定と特に変更はない。 個人被ばく線量の実態把握と推定に資するデータ収集については、今後のデータ解析において必要となる活動や場所を中心にデータ取得を進めていく。さらにデータ収集については関係する自治体等の関係者と相談しながら進めていく。被ばく線量対策の社会経済性評価については自治体関係者等へのヒアリングにより被ばく低減オプションの費用を調査する。国内外における放射性物質の被ばくリスク対策及び事例研究の実態調査については、これまでに検討した体制とアンケート案・質問案に基づき関係者へのヒアリングを実施する。
|
Research Products
(6 results)