2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02860
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
醍醐 市朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (20396774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 英男 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部地域技術支援部城南支所, 主任研究員 (10385536)
畑山 博樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (30612733)
葛原 俊介 仙台高等専門学校, 専攻科, 准教授 (60604494)
山末 英嗣 立命館大学, 理工学部, 准教授 (90324673)
中島 謙一 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (90400457)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 合金成分 / 不純物 / 物質循環 / 金属リサイクル / 鉄スクラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本において500点以上の鉄鋼材をサンプリングし、品種別に成分を同定することで、鉄鋼材に意図せず混在している不純物の代表値を得た。それら試料中の不純物のうち、Crは、時系列で濃化してきたことが観察された。さらに、リサイクルされた鉄鋼材中に意図せず既に混在している不純物成分濃度の新しい分析手法を開発し、今まで把握されていなかった不純物濃度の現状を評価した。鉄鋼リサイクル材に含まれる極微量貴金属類の検出を目的とし、LA-ICP-MS を用いて試料に存在する極微量元素の元素分布を把握する方法を構築した。さらに、GD-MS法による鉄鋼材分析を試み、極微量に含まれるAu濃度について相対感度係数を用いて半定量値を得ることが可能となった。鉄鋼リサイクル材において Cuと貴金属類の共存挙動を把握することを目的とし、SEM-EDS、LA-ICP-MS を用いて、試料表面の元素分布を観察した。ピーク強度からの金属の半定量分析を通じて、濃縮度合いの定量的な評価を行った。鉄鋼材とともに使用済み製品に含まれるCu, Au, Agのうちそれぞれの資源として回収されていないもののうち鉄鋼材に混入する割合は、それぞれ4%、20%、13%程度と定量できた。一方で、それらの動的SFA(substance flow analysis)ならびにWIO (waste input output)-MFA (material flow analysis)を用いることで得た製品の組成情報から、医療用機械器具、電気音響機器、携帯電話などは雑品として輸出されている可能性が高く国内で処理され鉄鋼スクラップになっていない可能性が示唆された。また、動的SFAに必要かつ重要なパラメータとして、電子機器の製品寿命について、ベトナム、日本、メキシコ、その他のASEAN諸国で比較し、経済状況の異なる国における製品寿命の違いを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、主に3つのパートから構成される。1つ目の「不純物合金元素の現状の把握」については、不純物成分濃度の新しい分析手法を開発し、今まで把握されていなかった不純物濃度の現状を評価できた点で、計画以上の成果を挙げた一方、限られた対象国への分析にとどまったため、ほぼ計画通りの進捗であった。 2つ目の「サブモデル」については、SFAやWIO-MFAによって、日本における使用済み製品の排出後のフローについて、今まで得られなかった知見が得られており、計画以上に進捗した。 3つ目の「循環システムにおける最適化」については、1つ目の結果から、濃化の実態が観測されたことに大きな進捗があったものの、限られた元素でしか観測されなかったことを踏まえ、実態に合ったモデルを構築する必要性が抽出された。
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Strategy for Future Research Activity |
1-1 WIO-MFAの手法の改良と分析手法の開発で定量できてきた元素についてのデータ精度の向上を実施する。 1-2 スクラップ中の合金成分の濃度分布も含めた分析では、日本での分析結果から、品種を限った分析ではなく、全品種の試料採取が望まれることがわかったため、国を限定し(米国、西欧)し、現地での試料の採取ならびに分析を引き続き実施する。また、従来の分析技術では検出できない極微量元素分析手法が開発できたため、その手法を確立する。 2-1 表面処理に用いる元素量f1、意図して添加した元素量f2、意図せず混在している元素量f3、リサイクル時に意図せず混入した元素量f4の4つに区分したトランプエレメントの挙動サブモデルを構築する。経済の発展とともにリサイクルシステムが異なることをパラメトリックに理解することと、同じ先進国間、途上国間であってもリサイクルシステムが異なることをパラメトリックに理解することの2つを実施する。 3-1 多国間比較により不純物元素濃度の決定要因を解明し、明らかになった要因をもとにサブモデルを構築する。時間とともに経済も発展していくため、それらの要因は従属であることのモデルへの反映が課題である。 3-2鉄鋼材中の不純物元素が今後濃化していくか、また濃化が起きるならばどのような方策を取れば濃化を防ぐことができるかを明らかにする。さらには、鉄スクラップは発生源がバラバラであり、同じようなスクラップであっても、その中の不純物成分には大きな分散の分布があることがわかってきた。そのため、生産現場では、不純物によって生産プロセスで問題を生じさせない操業技術と、原料としての鉄スクラップのシステム的制御の2つが方策として考えられる。2つの方策それぞれの容易さを技術面と経済面から分析し、リサイクルによる不純物濃化に問題を生じさせない、リサイクルシステムへの提言をおこなう。
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Research Products
(43 results)