2015 Fiscal Year Annual Research Report
環境に関する情報と政策的課題の対称性を担保する仕組みとしての意思決定支援システム
Project/Area Number |
15H02864
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 幹康 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (10217945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山敷 庸亮 京都大学, 総合生存学館, 教授 (20335201)
坂本 麻衣子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (50431474)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報の対称性 / 政策課題の対称性 / 意思決定支援システム / メコン川 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
国家や地方自治体のような「狭義の政策決定者」と「広義の政策決定者」である一般市民の間での「情報」と「政策的課題」の共有を担保することも「意思決定支援システム」が果たすべき機能であるとの見解に本研究は立脚している.本研究では,「意思決定支援システム」を構築するための方法論を開発し,交渉の当事者間と一般市民に提供される「情報」と「政策的課題」の共有(対称性の担保)に関する情報が,交渉を進展させる為に有用であることを明らかにすることを志向している. 「情報」と「政策的課題」が共有されている(対称性が担保されている)度合いを,マスメディアでの報道等の公開されている情報から指標化する手法を確立することを本研究では目指している.事例研究として想定していた「福島県の中間貯蔵施設建設」に加えて,同県での避難者による元の居住地への「帰還」を事例研究とする事を検討した. また,複数の「国内外での送電事例」について,その問題の所在と構造を明らかにし,4報の学術論文として公刊した. また,「政策的課題の対称性」を数量化する手法について検討を行い,テキストマイニングによる対応分析より,議論に参加する当事者の見解が「どの程度近いか」について数量化する可能性について検討した.その一環として,福島県に於ける避難者の「帰還」に関わる議論と,電力貿易に関わる一事例について,数量化を試行した.更に,二つの文章の類似度を数量化する方法論に関する既存研究を概観し,本研究への適用性を検討した. 複数の国際河川での水資源を巡る国家間での係争について,事例としての妥当性を検証する為に,問題の所在と構造の解析を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「政策的課題の対称性」について,福島県での「中間貯蔵施設」建設計画を含めて複数の事例について,対象事例としての妥当性について検討した結果,同県における「避難者の帰還」に関する議論が「政策的課題の対称性」を数量化する事例として適していることが明らかになった.数量化の方法論として,テキストマイニングによる対応分析の結果から,議論を行っている二者の見解について,その「近さ」を数量化する手段について検討を行った.電力の国内外での貿易に関わる議論については,アイスランドから英国への送電計画,タジキスタンからパキスタンおよびアフガニスタンへの送電計画,米国ハワイ州での島嶼間での送電計画など,幾つかの事例について,その問題の所在と議論の構造について分析を進めた.「情報の対称性」を数量化する為の方法論については,幾つかの国際流域での実例を調査すると共に,専門家からのヒアリングを重ね,適切な方法論を構築する為の手掛かりを得る事に努めた.
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Strategy for Future Research Activity |
「政策的課題の対称性」に適切な事例を選択する為に,福島県での「中間貯蔵施設」建設計画に加えて同県での「避難者の帰還」に関与する中央政府および地方自治体に関わる文献調査とヒアリングを実施し,問題の構造を把握する.また,国際河川に於ける事例についても,メコン川流域でのサヤブリ・ダム建設を含む複数の事例について,事例としての妥当性を検討する.更に,電力の国内外での貿易に関わる議論についても,複数の事例について対象事例としての妥当性を検討する.「政策的課題の対称性」を数量化する為の方法論の開発を更に進める.殊に,テキストマイニングにより得られる出力から二者による「議論の接近の度合い」を指数として得る為の方法論について検討を進めると共に,「文章間の類似度」を数量化する方法論の適用性についても検討する.また,「情報の対称性」を数量化する為の方法論についても更なる検討を行う. 本研究に参加している研究者による個別の会合を適宜行うと共に,「全体会」を2016年度中に開催し「意思決定支援システム」構築の方向性,個別の方法論開発の進捗と展開,次年度以降の活動等について討議する.
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Research Products
(13 results)