2016 Fiscal Year Annual Research Report
原発事故被害の創造的回復に向けた協働的政策形成に関する学際研究
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15H02866
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
下山 憲治 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00261719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 邦彦 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00143347)
紙野 健二 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10126849)
吉村 良一 立命館大学, 法務研究科, 教授 (40131312)
大坂 恵里 東洋大学, 法学部, 教授 (40364864)
稲葉 一将 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (50334991)
横山 彌生 (礒野彌生) 東京経済大学, 現代法学部, 教授 (60104105)
除本 理史 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 教授 (60317906)
神戸 秀彦 関西学院大学, 司法研究科, 教授 (70195189)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子力損害賠償 / 帰還政策 / 区域外避難者 / リスクコミュニケーション / 原発事故被害 / 規制権限不行使 / 中間貯蔵施設 / 除染 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原発事故から6年経過し、未解決のまま深刻化するさまざまな社会的課題、新たに発生した課題などを的確にとらえ、法制度や政策提言等へと展開するため、損害・責任・除染・医療・住宅支援等に関する問題について、テーマに即して研究班を編成し、研究を進めている。あわせて、全体研究会を通じて、研究班で深められた学際的研究成果を持ち寄り、相互の連携と発展を目指している。 その結果、2016年度は、全体研究会のテーマとして、「原発事故被害の賠償について」(4/23)、「原発関連訴訟の到達点と課題」(5/22)、「原発『自主避難』と仮設住宅打ち切り問題」・「栃木県北地域調査報告」(医療班)(9/24)、「原発『自主避難』の合理性・相当性と損害論」等(12/4)をとりあげた。一方、個別研究班について、責任論班は、「国家賠償責任」・「共同不法行為」(7/17)、「各訴訟における『損害論』の比較検討」等(11/20)について、研究者及び訴訟実務に携わる弁護士等の意見交換・研究会を開催した。また、被害班は、「区域外避難者・滞在者の被害とリスクコミュニケーション論」(8/13)、「福島原発事故6年目:地域再生に向けた研究の新たな協働をめざして」(9/9)、住宅班は、新潟県(7月)、山形県米沢市(10月)、山形県山形市(3月)を訪問し、避難者、支援者・弁護団、受入自治体などとの交流、懇談、ヒアリング調査等を実施した。そして、除染班は、中間貯蔵施設用地の地権者・周辺住民の動向の観察及びヒアリング、原発周辺地域20キロ圏内の住民の動向把握並びに原子力法及び放射性廃棄物処理に関する日韓ワークショップ(2/25)を開催した。 このように、問題状況の把握、分析・検討の結果を報告し、全体的な議論を深めてきた。その成果の公表は、学会発表、研究論文の公表や著書の公刊、招待講演等によって積極的に行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前記研究実績の概要を踏まえ、各研究班における調査・検討や研究成果、全体研究会での報告では、それぞれが担当する重要な課題に積極的に取り組み、着実に研究成果を上げつつある。また、国際学会での報告のほか、国際ワークショップの開催により、韓国をはじめとするアジア地域での本研究課題に対する関心の高さを確認できた点は、本研究にとっても大きな成果であり、今後の研究の進捗に有益に作用するものと思われる。 除染に伴う放射性廃棄物など、今後長期にわたり管理を要する課題にあっても、日本のみではなく、諸外国でも共通の重要な課題となっている。この点にかかわるドイツをはじめとする海外調査等も実施することができた。 昨年度に続き、本年度も、福島第一原発事故とそれに伴う被害発生、避難生活などに関し、時間の経過や状況の変化などに伴って、国や福島県などの各種政策や支援措置の創設・終結などの変化、緊急に取り組むべき課題や帰還区域の拡大に伴う区域内と区域外避難者に関わる課題の変化・顕在化なども見られた。また、原発事故損害賠償請求訴訟のうちのいくつかが結審し、初めての判決の言い渡しもあった。このような課題・問題についても、残されている課題はあるものの、できる限り、柔軟かつ適切、適時に対応できたものと思われる。 以上の点から、本年度の研究実施計画はおおむね達成していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初からの本研究の目的は変更する必要がなく、福島第一原発事故に起因する損害賠償や被害者の生活再建等にかかわって新たに発生したり、顕在化した社会的取り組み課題などを中心に、学際的研究を進め、今後の創造的回復に向けた各種支援や政策提言等に資することとしたい。 来年度は、本研究課題の最終年度であり、また、原発事故損害賠償請求訴訟も結審ないし判決言い渡しが予定されている。これら事実状況を適切に把握し、できるだけ速やかに本格的な検討に着手するとともに、適時の研究成果の公表につなげていきたい。 また、時間の経過や状況の変化などに伴って、各種政策や支援措置などの変更、緊急に取り組むべき課題の発生や問題状況の変化なども考えられる。これらについては、各研究班の間で情報交換と連携を密にしつつ、意見交換・議論を行い、研究総括班を中心にして、全体研究会のテーマとしても取りあげるなどすることにより、研究を深化することとしたい。
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Research Products
(27 results)