2016 Fiscal Year Annual Research Report
Practical study for Environmental Design and space usage based on people's direct experience in the nature
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15H02870
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊東 啓太郎 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (10315161)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自然再生 / グリーンインフラ / 環境学習 / 学習プログラム / 環境再生ワークショップ / 生物多様性 / 環境創造 / 身体的体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
子どもにとって「遊び」は、自然のしくみを知り、生活の知恵を身につけるための重要な体験である。しかし、特に日本の都市部では、かつて誰もが体験できた遊びや体験型の環境学習*を実践していくことは難しいのが現状である。本研究では、身近に残された緑地や河川といった自然空間やオープンスペースを、生物多様性を保全しながら、子どもの「遊び」と「環境学習」を目的として再生・創造している。さらに、実際の計画・設計プロセスと日欧の比較研究を通して、身近なオープン・スペースを、「地域の自然環境の修復・再生」、「環境学習」、「住民参加」、「子どもの遊び」の場として活用できるような新しい環境デザインの手法と同時に日本の風土に適した継続的な環境学習プログラムを開発することを目的として研究を推進している。 平成27年度から28年度の2年間にわたって、実際に設計を行ってきた空間の植生変化、生物の生息状況と子どもたちの行動との関連についてのモニタリングなど身体スケールからのアプローチを行った。この際、地域の子どもや保護者、小学校の教諭、地方自治体の技術者、日本・ドイツ・ノルウェー・ミャンマーの各分野の研究者が協力し、「自然の仕組みを知るための直接的な身体的体験や心理的体験ができる環境デザイン」と、その効果を高めるための「環境学習プログラム」を作成、実践してきた。また、大学院生をプロジェクトメンバーとして組織化し、ワークショップを実施することにより小学校や地域との協力体制を形成し、計画を遂行、継続している。 本研究の成果から得られるのは、1)子どもや地域の人々、教育現場の教師が、遊びや環境学習のためにどのような環境を望んでいるのかということ、2)子どもたちの学習へのモティべーションと教科教育が結びつくような環境学習プログラムの開発 3)学際的、国際的な議論から生まれてくる新しい環境計画や環境活用方法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境学習ワークショップ(以下、WS)を継続しながら、環境マネジメントを進めた。環境活用計画WSでは、設計とマネジメントを行ってきた、夜宮公園、遠賀川魚道公園、壱岐南小学校において、子どもたちをグループに分けて身の回りの自然環境について学びながら、身近な自然の現状把握と環境改善提案を行った。各グループごとに目標を語ってもらうことにより、参加者同士がイメージを共有した。これまでWSの成果と、各グループが自分たちで考えた活用計画を発表してもらい、計画を実現するための方法を話し合いながら、地域環境シンポジウムで発表した。また、ソフト面の整備として、教材として使用する環境学習プログラムを作成した。また、日本、ノルウェー、ミャンマーにおいて環境教育の実態調査を行った(伊東、Fjortoft、須藤、Linが担当)。福岡市の壱岐南小学校とノルウェーの小学校における近隣の自然公園を利用した野外環境教育プログラム、教材の調査を行った。本手法は既にFjortoft、伊東ら(Fjortoft&ito, 2010,201)によって確立されているため、同じ手法を用いた比較研究が可能となった。ノルウェーにおいては、9カ国の学生30名と子どもと自然環境、環境活用のワークショップを行った。また、PlanlandのDr.Langerの協力を得て、ドイツの緑地環境と環境学習プログラムの調査を行った。これらのことから、日本・ノルウェー・ドイツ・ミャンマーにおける自然観や環境観の違いについても新しい知見を得ることができた。これらのプロセスを整理し、日本景観生態学会(北海道)、Urban biodiversity and Design(Panama)、日本森林学会(鹿児島)で発表を行うことができた。また、本研究の一部は、日本景観生態学会の論文「風土性と地域のランドスケープデザイン」として掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後2年間で、これまでのプロセスをとりまとめて、都市における生物多様性の保全、環境学習と遊び環境デザインのための設計指針の提案を行う(Ito,Fjortoft,Sudo, Lin,Langer)。さらに、出版物として「都市における自然環境保全とデザイン手法」、「学校のまわりの自然や学校ビオトープの活用(環境教育教材)」、「日本・ドイツ、ノルウェーにおける子どもたちの身近な環境づくりへの参画とその意味」の出版を計画している。本研究では、継続してそれぞれのサイトの利用状況をモニタリングしながら、さらに教育効果の高い緑地環境を創造していくことを検討している。 また、子どもたち、住民参加による植林等を行った空間については、10年~20年の時間スケールで維持管理のしくみを考えていく必要がある。長期にわたる本研究の成果から得られるのは、1)子どもや地域の人々、教育現場の教師が、遊びや環境学習のためにどのような環境を望んでいるのかということ、2)子どもたちの学習へのモティべーションと教科教育が結びつくような環境学習プログラムの開発 3)学際的、国際的な議論から生まれてくる新しい環境計画や環境活用方法である。2017年度も、ノルウェーにて、日本の学生を含む9カ国の学生30名と子どもと自然環境、環境活用のワークショップを行う。今後もお互いの研究サイトにおける研究結果の比較や、共同マネジメントを行ってゆく。また、本年度には、ドイツの出版社Springer社から、「Landscape Design and biodiversity for future cities」として、発刊予定である。 また、これからの2年間で、論文・著書のみではなく、実際の環境デザインを地域の子どもたちや住民に提供し、またプロジェクトについては、ブログやインターネットで情報を共有し、著書、DVDを作成し社会に発信する。
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Research Products
(21 results)