2017 Fiscal Year Annual Research Report
子育て支援プロダクト創出のための科学的エビデンスの構築
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15H02876
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤 智亮 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (60274544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿貫 茂喜 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00158677)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 少子化社会対策 / 工業デザイン / プロダクトデザイン / 生理人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実績の概要は以下の通りである。 (1)揺動刺激と音刺激が児に及ぼす鎮静効果の検証 前年度までに、被験児を、月齢3~4ヶ月、5~6ヶ月および7~8ヶ月の3区分に分け、各区分最低6名を目標に実験を行ってきた。本年度は前年度までに遂行できなかった月齢5~6ヶ月の被験児に対する実験を行い、すべての実験を完了した。 実験は、九州大学大学院芸術工学研究院内の実験室で、気温・湿度などを適切に設定管理して行った。実験条件は、被験児1名につき、揺動3条件(母親の抱っこ・機械的な単振動・揺れ無し)×音2条件(ブラウンノイズ・音無し)の計6条件とした。児が1時間以上覚醒しており、且つ授乳後1時間以内のときにぐずりだしたときに4分間刺激を与え、児の鎮静効果を記録した。具体的な測定項目は、児の表情・泣き声(ビデオ映像)および児と母親の心電図とした。これらのデータを分析することにより、各条件における児の鎮静効果・児と母親のストレス反応を明らかにしていく。 (2)子育てをサポートするためのプロダクトに必要なデザイン要件のまとめ 前年度までに、児の輸送反応(母に抱かれて移動するときに鎮静する反応)をプロダクトに活かせる可能性を見出した。このことついて、母に抱かれて移動するときに児が感じる加速度データを得たところ、鉛直方向運動が支配的であることが知られ、このデータを基にした児の鎮静化に有効なプロダクトの設計・試作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
心電図の測定に、被験者が乳児であることを考慮して無線方式を採用していたが、ノイズが多いため有線方式に切り替えた。この測定装置の再設計・製作に2ヶ月程度を要したため、すべての実験を終了するのがやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)揺動刺激と音刺激が児に及ぼす鎮静効果を検証する 前年度までに、月齢3~4ヶ月の児8名、5~6ヶ月の児6名、7~8ヶ月の児8名に対して、揺動3条件(母親の抱っこ・機械的な単振動・揺れ無し)、音2条件(ブラウンノイズ・音無し)の計6条件の刺激が児に及ぼす影響を調べる実験をおこなった。今後は、上記の計22名×6条件の実験データを基に、以下の3つの指標を用いて鎮静効果を検証する。① 行動観察: 児の表情と泣き声を基に5秒毎に点数化して評価する。なお点数化は、実験中に撮影したビデオ映像を再生して複数人でおこなうこととする。② 心電図: 精神的もしくは身体的な急性ストレスが生じた場合には交感神経活動が優位となり心拍数は増大、心拍変動性の高周波成分が減少することから、ストレス指標となる。分析には周波数解析とローレンツプロット解析の両方をおこなう。③ 主観評価: 生理反応値との比較検討のために、実験後にとったアンケート結果をまとめる。 (2)児をなだめるために有用なプロダクトを提案する 前年度までにまとめたプロダクトのデザイン要件を基に、提案するプロダクトの設計仕様をまとめるとともに、児をなだめるために有用なプロダクトを提案する。さらに、機能試作モデルを製作し、提案したプロダクトの有用性を(1)と同様の測定項目によって評価する。 (3)研究の総括 構築した科学的エビデンスが、児の泣きに対応するために普遍的で必要十分であるかを検討・整理し、研究を総括する。
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