2016 Fiscal Year Annual Research Report
「パワーUP!アート」による生活機能の維持向上デザイン研究
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15H02881
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
吉岡 聖美 明星大学, デザイン学部, 准教授 (80620682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 俊朗 筑波大学, 芸術系, 准教授 (50334058)
三谷 篤史 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (70388148)
宮坂 裕之 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 研究員 (00440686)
谷野 元一 藤田保健衛生大学, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (70631753)
蓮見 孝 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (60237956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / リハビリテーション / インタラクション / フィードバック / アートプログラム / Active Art / 能動アート / 心理評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
能動的にアートと関わる創造的なプログラムにリハビリテーション動作を取り入れた「Active Artリハビリテーションプログラム」と総称する生活機能の維持向上に有効なアートプログラムおよびリハビリテーションデバイスを開発する。本プログラムは,リハビリテーションとアート制作を連動させることによってリハビリテーション動作を誘導する。アートと関わることによって感性に働きかける心理的効果や,リハビリテーションの達成度をアート作品の出来栄えにフィードバックすることによって,リハビリテーションにおける単純繰り返し動作に対するモチベーション維持に繋がる。 2016年度は,身体機能や動作の改善を目的とする理学療法のひとつである立ち座り動作のリハビリテーションに活用する「立ち上がって空に描こう!」,および,日常生活動作の改善を目的とする作業療法のひとつであるサンディングと呼ばれる上肢の動作のリハビリテーションに活用する「拭いて拭いて絵を描こう!」のアートプログラムを開発し,リハビリテーションデバイスを制作した。 学生を実験協力者として,バーチャルリアリティ(VR)デバイスを使用した「立ち上がって空に描こう!」のアートプログラムを用いたスクワットと用いないスクワットを実施した際の心理評価を調査する基礎実験を行った。その結果,プログラムを用いたスクワットでは,運動後に「快適度」の評価が有意に大きくなり,気分が改善することを確認した。加えて,プログラムを用いてスクワットを実施した場合は,プログラムを用いなかった場合よりも「活性度」および「快適度」の評価が有意に大きく,プログラムを用いることによって,スクワットという単純繰り返しの運動をイキイキと活力に溢れ,快適な気分でポジティブに行うことができることが示された。 2015年度および2016年度の研究成果について論文および国内外の学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立ち座り動作のリハビリテーションに活用する「立ち上がって空に描こう!」,および,サンディングと呼ばれる上肢の動作のリハビリテーションに活用する「拭いて拭いて絵を描こう!」のアートプログラムを開発し,リハビリテーションデバイスを制作した。 学生を実験協力者として,「立ち上がって空に描こう!」のアートプログラムを用いたスクワット運動を実施する基礎実験を行ったところ,プログラムを用いることによって,スクワットという単純繰り返しの運動をイキイキと活力に溢れ,快適な気分でポジティブに行うことができることを確認した。本研究結果に基づき,回復期リハビリテーション病院において臨床試験を実施するための予備実験を行った。その結果,アートプログラムを用いたリハビリテーションの前後で,患者のリハビリテーションに対する「楽しさ」の評価が大きくなることが示され,加えて,長期間のリハビリテーションにも同様に「楽しさ」の評価が保たれる研究結果が得られた。予備実験に基づいて臨床試験を実施するに際し,アートプログラムの効果を検証するための実験協力者の確保に時間を要したため,研究期間を延長して評価に必要な人数を確保した。 咳嗽,嚥下機能の改善に繋がる強制呼気によるインタラクションを取り入れたアートプログラムの開発では,呼気に反応して音や光を生成して呼気情報を記録するモジュールを制作した。本モジュールを用いてアート作品を制作するワークショップを実施してアートプログラムの効果を評価する研究を実施するため,協力機関となる高齢者施設の関係者との打ち合わせを実施した。 生活機能の維持向上となるアートプログラムおよびアートデバイスの開発はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
回復期リハビリテーション病院において,「立ち上がって空に描こう!」および「拭いて拭いて絵を描こう!」のアートプログラムを入院患者のリハビリテーションに使用する臨床試験を実施する。2016年度に実施した学生を実験協力者とした基礎研究において,「立ち上がって空に描こう!」のアートプログラムを用いることによって,運動後に「快適度」の評価が有意に大きくなって気分が改善し,また,プログラムを用いてスクワットを実施した場合は,プログラムを用いなかった場合よりも「活性度」および「快適度」の評価が有意に大きく,プログラムを用いることによって,スクワットという単純繰り返しの運動をイキイキと活力に溢れ,快適な気分でポジティブに行うことができることが示されたことから,回復期リハビリテーション病院において臨床試験を実施して,アートプログラムの心理的・身体機能的効果を明らかにする。 加えて,「立ち上がって空に描こう!」「拭いて拭いて絵を描こう!」等の「Active Artリハビリテーションプログラム」として開発したリハビリテーションデバイスを福祉機器に関連する展示会に出展して公開する。 呼気に反応して音や光を生成して呼気情報を記録するモジュールを用いて,アート作品を制作するワークショップを高齢者施設において実践して評価する。呼気情報をモジュールに記録することによって,要介護高齢者における継続的なインタラクションの生成状況を調査・分析し,咳嗽,嚥下機能の改善に繋げるための研究を行う。 また,リハビリテーション動作を誘導したり,リハビリテーションに対するモチベーションに繋がる心理的効果を活用した医療機関における環境デザインを開発し,制作・施工を行う。
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Research Products
(13 results)