2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02885
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
矢野 友啓 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50239828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮越 雄一 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (00343533)
太田 昌子 (挾間昌子) 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (40442058)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨質劣化 / 骨折 / MTHFR遺伝子多型 / リジルオキシダーゼ / ホモシステイン / ペントシジン / 骨芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究に同意いただいた女子長距離選手を対象に、骨質の劣化が骨折に関係があるか検証するために、骨質劣化の鋭敏なマーカーとされる血中ペントシジンレベルと骨質劣化を引き起こすとされるホモシステインレベルの関係と骨折歴の有無を解析した。その結果、血中ペントシジンレベルとホモシステインレベルには正の相関関係が認められ、骨折歴が有りのグループのこの両パラメーターが高く、今回の解析結果から、この両パラメーターの血中レベルに骨折を起こす閾値の存在が推測された。また、葉酸代謝に関係するメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)の遺伝子多型(677番のC塩基がT塩基に変異)はその酵素活性が野生型に比べて、ホモ型変異で30%に低下して、高ホモシステイン血症を引き起こす要因になるが、MTHFR遺伝子多型が骨質劣化による骨折のリスク因子であることが明らかになった。また、葉酸代謝や抗酸化ビタミンの血中レベルとDHQ-Lによる摂取ビタミン量の相関を解析したところ、唯一ビタミンB2摂取量と血中ビタミンB2レベルに相関が認められた。一方、細胞培養系を用いた研究では、ホモシステインが惹起する骨質劣化の主要因は、骨芽細胞におけるリジルオキシダーゼ(LOX)活性低下によるコラーゲンの生理的架橋形成の阻害作用がある。マウス由来の骨芽細胞培養系を用いて、ホモシステインのLOX発現に及ぼす影響を検証したところ、LOXの発現抑制傾向が認められた。さらに、ヒト骨芽細胞由来の高分化型骨肉腫細胞を用いた解析から、この細胞は、骨芽細胞におけるホモシステインを暴露によるLOX発現低下に関与するシグナル伝達系が活性化されることにより、LOXが低下していることが確認された。したがって、この高分化型骨肉腫細胞培養系を用いて、LOX発現抑制回復を指標にした骨質劣化予防成分のスクリーニング系が構築できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト試験に関しては、女子長距離選手における骨質劣化による骨折のリスク因子としてMTHFR遺伝子多型と血中高ホモシステインレベルが、そのリスクバイオマーカーとしてのペントシジンが特定でき、女子長距離選手における骨質劣化による骨折の病態が、高齢者における骨質劣化による骨折の病態であることが確認でき、女子長距離選手における骨質劣化による骨折予防成分の特定が、本研究の最終目標である高齢者における骨質劣化による骨折予防成分の開発につながる可能性が推測された。また、MTHFR遺伝子多型による骨質劣化による骨折予防栄養素として、ビタミンB2が推定された。さらに、LOX発現回復を指標にした骨質劣化予防成分のスクリーニング系の構築の可能性が推測された。これらの成果は事前に計画したほぼすべての検討予定課題を網羅するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
骨質劣化による骨折のハイリスクグループである女子長距離選手のMTHFR遺伝子多型保有者を対象にした介入研究として、MTHFRの活性回復に必要でかつ摂取による血中ホモシステインおよびペントシジンレベルに対する効果を検証する。この介入研究の結果を受けて、骨質劣化の主要因の1つである酸化的ストレスの軽減のための抗酸化ビタミン類とビタミンB2摂取によるMTHFR機能の回復の相乗効果による骨質劣化予防における有効性を検証し、骨質劣化予防につながるサプリメントの開発につなげる。細胞培養系を用いた検討では、ホモシステインの下流に位置し、LOX低下につながるシグナル伝達系の全容の解明を行い、その解析結果に基づいて、そのシグナル伝達系に有効に作用する食由来の機能性成分をスクリーニングし、スクリーニングされた機能性成分を用いた骨質劣化予防につながるかを検証するヒト介入試験の実施の可能性を探る。
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Research Products
(2 results)