2016 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体の翻訳後修飾と相互作用因子の局在を介した新たな転写制御機構の解明
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15H02896
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科, 招へい教員 (30432446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 健史 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (00211409)
石本 憲司 大阪大学, 薬学研究科, 招へい教員 (00572984)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子代謝学 / 核内受容体 / 翻訳後修飾 / 活性化剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
健康長寿社会を実現するためには、心疾患や脳血管疾患などの原因となる動脈硬化性疾患の発症を防ぐことが重要である。核内受容体PPARやLXRは栄養成分である不飽和脂肪酸やコレステロールなどをリガンドとする転写因子であり、様々な因子と直接あるいは間接的に相互に影響を及ぼし合うことによってその機能が制御されており、脂肪細胞の分化や脂質の蓄積、肝臓や骨格筋での脂質の代謝などの役割を担っている。 これまでに我々は、脂肪細胞の分化に関わるヒストンメチル化酵素SETDB1について、リン酸化を受けること、核から細胞質に排出されること、核内においてプロテアソームにより分解を受けることを明らかにし、SETDB1の局在と安定性に関する知見を得てきた。さらに研究を進めた結果、SETDB1のC末端側が翻訳後修飾を受けること、その修飾がユビキチン化修飾であることが示された。さらに、867番目のリジン残基がユビキチン化修飾を受け、その結果ヒストンH3の9番目のリジン残基に対するメチル化酵素活性が増強すると共に、標的遺伝子の発現を制御していることを明らかにした。今後、SETDB1の翻訳後修飾を制御する仕組みが明らかになれば、脂肪細胞の分化を明らかにできる可能性がある。 一方、我々は独自に構築したPPARリガンド評価系を用いて、植物抽出液からPPARを活性化する成分の単離を行ってきた。今回、化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを実施した結果、既存のリガンドとはまったく異なる構造を持つ化合物が得られた。実際に本化合物がPPARを活性化することは、培養細胞を用いた標的遺伝子の発現量の変化を解析することで確認することができた。今後、本活性化剤の解析を進めることで、生活習慣病を予防・治療できる薬剤の開発に繋がる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、脂質代謝制御に深く関わっている核内受容体やそれらと関連する因子について、翻訳後修飾や局在などに着目して解析し、生活習慣病の予防・治療に繋がる新たな活性化剤を開発するための研究基盤を確立することを目的とする。 脂肪細胞において、核内受容体PPARγとヒストンメチル化酵素SETDB1は互いに影響を及ぼし合いながら分化を制御している。今回、SETDB1の翻訳後修飾と活性との関連を解析した結果、SETDB1のユビキチン化がH3K9のメチル化酵素活性を制御していることを明らかにした。SETDB1によるH3K9のメチル化によって脂肪細胞の分化が抑制されていると考えられており、今回明らかにしたSETDB1の翻訳後修飾による活性を制御するシステムは、脂肪細胞分化の制御機構の解明に繋がることから、重要な成果と考えられる。 生活習慣病の予防・治療薬を開発するためには、PPARの転写を制御できる活性化剤の開発が重要である。今回我々は、独自に構築したPPAR活性化剤の評価系を用いて、化合物ライブラリーより新規PPAR活性化剤を得た。本化合物はこれまでのPPARリガンドとは全く異なる構造であり、新たな生活習慣病の予防・治療薬になり得る可能性があり、非常に意義深い結果である。 このように本研究は、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに、PPARの新たな活性化剤を得ることに成功した。そこで平成29年度は、得られた化合物が実際に薬効を発揮するか否かを、病態モデル動物に投与することで評価する。また、脂質代謝や脂肪の蓄積等に関わる因子としてSETDB1以外の他の制御因子に関しても同様の解析を進め、新たな制御機構を明らかにする。これら研究を推進することで、PPARを中心とした活性を制御する分子の開発、翻訳後修飾や局在変化を介した機能制御メカニズムの解明を行う。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Ubiquitination of Lysine 867 of the Human SETDB1 Protein Upregulates Its Histone H3 Lysine 9 (H3K9) Methyltransferase Activity.2016
Author(s)
Ishimoto K, Kawamata N, Uchihara Y, Okubo M, Fujimoto R, Gotoh E, Kakinouchi K, Mizohata E, Hino N, Okada Y, Mochizuki Y, Tanaka T, Hamakubo T, Sakai J, Kodama T, Inoue T, Tachibana K, Doi T
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Journal Title
PLoS One
Volume: 11
Pages: e0165766
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 脂質異常症治療薬の開発を目指した新規PPARα活性化化合物の薬効と毒性の評価2017
Author(s)
田畑遼太朗, 橘敬祐, 杠智博, 前川貴志, 福田昭平, 石本憲司, 小林直之, 田中十志也, 児玉龍彦, 宮地弘幸, 土井健史
Organizer
日本薬学会 第137年会
Place of Presentation
仙台
Year and Date
2017-03-27
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[Presentation] 核内受容体PPARαを標的とした新規脂質異常症治療薬の開発2016
Author(s)
田畑遼太朗, 橘敬祐, 杠智博, 前川貴志, 福田昭平, 石本憲司, 小林直之, 田中十志也, 児玉龍彦, 宮地弘幸, 土井健史
Organizer
第15回 次世代を担う若手ファーマ・バイオフォーラム2016
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2016-09-10
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