2015 Fiscal Year Annual Research Report
ケトン食摂取による脳内の糖脂質発現動態に関する研究
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15H02907
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
奥田 徹哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (20443179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60371085)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖脂質 / 脳神経疾患 / ケトン食 / 糖鎖 / ガングリオシド / 糖タンパク質 / てんかん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、古くからてんかん治療に用いられてきた低炭水化物食(ケトン食)の摂取が、脳内の糖鎖/糖脂質の発現量に及ぼす影響について明らかにする。特に、遺伝性てんかんの発症因子として新たに見出された糖脂質の分子種(ガングリオシド)の発現量への影響を中心に解析を進め、食事によるてんかん抑制効果を評価できる分子マーカーとしての応用について検討する。 今年度までの主な研究実績として、(1)糖脂質の統計解析に必要な個体数の肝臓試料を調製した。(2)調製した試料に含まれるガングリオシドをHPLCにて定量的に分析する方法を確立した。マウスではガングリオシドは脳や肝臓に豊富に存在しており、本検討では扱いやすい肝臓試料を用いることで方法論を確立した。また確立した方法にて、ケトン食摂取による肝臓ガングリオシドの発現量への影響を調べたところ、TLC解析による予備検討の結果通りケトン食の持続的摂取によりガングリオシドの発現量が増加することを、統計学的な有意差を持って明らかにした。(3)見出したガングリオシド増加のメカニズムについてDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析によりアプローチし、目的のガングリオシドの生合成に関わるシアリル転移酵素遺伝子の転写量が増加していることと、分解に関わる活性化タンパク質の転写量が減少していることを発見した。(4)検体数を増やしたReal Time PCR解析においてもこれらの遺伝子発現が統計学的有意差を持って変化していることが確認した。(5)将来的なヒトでの検証実験を見据えて、ヒト由来培養細胞を用いてマーカー開発に必要な各種技術開発について検討し、モノクローナル抗体を用いた糖脂質、糖タンパク質の糖鎖解析技術を確立した。 以上の成果は、学会発表ならびに学術論文として成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としたモデルマウス組織からの糖脂質試料の調製方法及びHPLCを用いたその定量的分析法の確立を達成し、肝臓由来のガングリオシドの統計学的解析を完了した。一方で、種特異的なガングリオシドの微細構造の違いにより当初計画した免疫組織染色法によるガングリオシドの解析は困難となったが、網羅的遺伝子発現解析によるアプローチに研究方法を変更したことで当初の予測を超えた多くのデータが得られており、すでに最終目標とするマーカー候補に関する有用な知見を得ている。加えて、技術の将来的な応用のために必要な抗体による糖鎖解析技術についても検討し、学術論文公表にいたるなど具体的な成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓にて見出したガングリオシドの変化がてんかん発症の中枢である大脳皮質においても起こりうるか検証を進める。またこの変化の分子基盤を解明するため、マイクロアレイ解析にて見出した遺伝子が実際に機能しているか検証する。よって得られるデータをもとに、目標とする分子マーカーとして最適な性質を有する糖鎖、糖脂質、もしくはこれらの合成に関わる因子の同定を目指す。
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Research Products
(10 results)