2015 Fiscal Year Annual Research Report
日米6大学連携で能動的学習型へ教授法の質的転換を図る大学物理教育イノベーション
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15H02913
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
土佐 幸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40720959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
興治 文子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60409050)
小林 昭三 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 名誉教授 (10018822)
五十嵐 尤二 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 名誉教授 (50151262)
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50242392)
岸本 功 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60399433)
植松 晴子 (小松晴子) 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (70225572)
佐藤 実 東海大学, 理学部, 講師 (10328099)
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 助教 (70377943)
安田 淳一郎 山形大学, 基盤研究院, 准教授 (00402446)
山田 吉英 福井大学, 教育地域科学部, 准教授 (30588570)
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90319377)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高等教育(物理) / 教授法の実践と開発 / アクティブ・ラーニング / レッスンスタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
①新潟大学、福井大学、岐阜大学、東京学芸大学、山形大学の5大学それぞれにおいて、本研究代表者と分担者が主となって大学物理の教授法を検討するグループを組織し、レッスンスタディ活動を行った。例えば、新潟大学では物理教育と理科教育の教員6名が定期的に集まり、互いの授業の様子を伝え合い助言し合った。さらに、研究代表者が各大学を訪問し、授業見学や授業後協議を通して、授業検討を具体的に行った。また、活動毎にインターネット上に作成したフォーラムにおいて、その内容や課題点の共有化を図った。これらの活動により、物理を専門とする教員がアクティブラーニング(AL)型授業を実践するにあたり、学校の枠を越えて課題を共有し、方策を討議する場を構築することができた。 ②国際的標準調査問題による教授法の効果検証を開始した。各大学において、講義ごとに国際的標準調査問題(力学はFCI、電磁気学はBEMAなど)を用いて、学期始めと学期末に学生の概念理解調査を実施した。H26年度のデータと併せ、それらを今後の研究のベースラインデータとして活用する予定である。また、教授法と連携に関する教員の意識変化を調べるために、オンラインで回答できるアンケートを作成し、事前調査を行った。 ③H28年3月5日に新潟大学において物理のアクティブラーニングとレッスンスタディのシンポジウムを開催し、全国から34名の参加者があった。シンポジウムではAL型授業の実践と成果について大学研究者2名の発表と、高校物理の授業の模擬授業とレッスンスタディを行った。授業後協議会では、学習者にALを促す好機を利用することの重要性という深い問題が話し合われ、刺激的だったとの感想があった。 ④7月に研究代表者と分担者が米国の学会(全米物理教師学会)で論文発表を行った。また、3月にボストン大学とコロラド大学を訪問して、AL型授業の研究と実践について見識を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①各大学におけるレッスンスタディ活動において、研究分担者以外の同僚に参加してもらうことが難しく、孤立した状態であったため、研究代表者と定期的にビデオ会議を行うことで対応した。例えば、福井大学では教員2名が教える一般教養の光学の講義について、研究代表者と毎週ビデオ会議を開いて授業検討を行った。岐阜大学では教員1名と院生・学部生3名が担当する「科学的なものの考え方」の物理授業について、研究代表者と毎週のビデオ会議を通して、ワークショップ形式を用いて学生同士の議論を活性化し、概念理解を深めるための方策を検討した。人数が少ない話し合いでは、多角的な視点で授業を捉えることが難しくなるが、少なくとも授業者以外の研究者と議論をすることにより、課題点を明らかにし、他者からのフィードバックを得て授業を実践し、翌週にその成果を検討することができた。また、オンラインのフォーラムにおいて、各大学の活動や課題をいつでも共有することができ、相互支援体制の構築につながっている。 ②AL型授業を実践するために、学習者の状況に合わせてどのような指導形態や手法をとることが相応しいか、判断するのは易しいことではない。より多くの指導形態や研究成果について見聞を広めることは、自身の指導法を考慮する際の大きな助けになる。特に目的としているスケールアップ形式の物理講義は、まだ日本では実現しておらず、米国での実地見聞が重要である。そこで、H28年3月に研究分担者1名と代表者は、ボストン大学とコロラド大学を訪問し、スケールアップ形式の授業見学、教員とのディスカッション、チュートリアルの授業見学、ラーニングアシスタントと呼ばれる学部生の補助を養成するセッション見学などを行い、AL型授業を実現するための様々な方策について見識を深めることができた。この内容は、学術誌に投稿することにより、物理教育界に広く伝えていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①各大学におけるレッスンスタディを活発化したい。既にレッスンスタディの活動を始めた大学では、同僚に声をかけるなどして人数を増やしたり、院生・学生を参加させることにより、参加者の層を厚くするように努める。レッスンスタディの内容については、今までもそうであったように、教科の内容よりも教授法について議論を深めるように心がけ、学習者主体の学びを実現するとは一体どういうことなのかを、教員が納得できるように支援することを代表者の務めとしたい。まだレッスンスタディを始められていない大学とも連絡を密にとり、少しずつ定期的なディスカッションを始める予定である。 ②目的とするスケールアップ型授業について、研究分担者の担当する講義の多くが少人数であり、またスケールアップ型の授業には、設備的な問題もあることから(通常、スケールアップ教室は9人掛け10個の円卓、壁面にはスクリーンとホワイトボードを設置)、その実現は難しい様子である。そこで、スケールアップに近い形式の授業として、例えば、少人数のワークショップ形式や、椅子の固定された大講義室を利用したグループ活動の実現を目指したい。 ③学生の概念理解、および教員の教授法と連携に関する意識変化についての調査は始まったばかりであるが、これから比較分析を行うことにより、研究成果を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(21 results)