2015 Fiscal Year Annual Research Report
自己調整学習を支援するツール「セルフレギュレータ」の開発と効果的運用に関する研究
Project/Area Number |
15H02935
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
宮川 裕之 青山学院大学, 社会情報学部, 教授 (10157597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 浩 放送大学, 教養学部, 教授 (80332146)
松田 岳士 首都大学東京, 大学教育センター, 教授 (90406835)
合田 美子 熊本大学, 大学教育機能開発総合研究センター, 准教授 (00433706)
山田 政寛 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (10466831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己調整学習 / セルフレギュレータ / フェーディング / 学習計画遵守支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己調整学習ができる学習者の育成であり、その手段としてセルフレギュレータ(以下、SR)と名付けた支援システムの開発・評価し、活用方法を検討する。本研究ではそのために、以下のような4段階の計画を立てて進捗を確認していく予定である。 1.システムに必要な要件を研究し、仕様書を作成してSRのβ版を開発する。2.パイロットコースにおける効果検証および形成的評価を経てカスタマイズする。3.多様な授業においてSRの使用法を研究する。4.1~3の知見に基づいた最適学習計画立案方法をモデル化する。 平成27年度は、前期にシステムの要件・仕様を検討し、その後、後期に試作版(β版)を開発した。SRは、学習者自身が計画した時間に限ってオンラインコンテンツを受講できるシステムであり、学習リソースへのアクセスを制限する。制限の対象として、大学で広く使われている学習管理システム(Moodle)上のコンテンツを設定した。β版には、学習者側の主要機能として、受講計画の登録、受講計画のメールによる告知、受講可能時間の確認、登録した受講計画の(1回限りの)修正が実装された。 これら機能を備えたβ版は年末に完成したので、後期授業のひとつに1月から実験的に導入して、受講学生による形成的評価を受けた。したがって、平成27年度には、4段階の研究フェーズのうち、フェーズ2の途中まで達したことになる。その結果、インターフェースは、PC・スマートフォンどちらでも問題ないと判断され、使用した機能は計画的な受講に役だったとみなされた。一方、受講時間通知機能や、受講機会が一回だけである点については不満が多く寄せられ、改善の余地が示された。また、形成的評価ではコンテンツ数(3本)や受講可能期間(約3週間)が限定されていたので、学習者に学習計画遵守の習慣が身についたかどうかや、フェーディング機能の効果までは試すことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、平成27年度には、セルフレギュレーターβ版の開発および、授業を通した形成的評価まで進めることができた。これは、申請書に記した当初の予定に沿った進捗であり、システムの特許も出願できた。特許出願は研究費の申請書執筆時から計画してきたものであるが、代表者・分担者間で出願書類をまとめる作業が、結果的には、仕様検討等の経緯やβ版を用いた研究計画等に関する早期の成果発表につながった。また、形成的評価の結果も平成27年度内に論文として投稿し、査読を受けているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度末における研究の進捗は順調であるので、平成28年度も基本的に申請書に記した計画に従って、研究を進めていく。その際二つのテーマがあり、代表者・分担者で適切に役割を分担する予定である。 第一に、形成的評価の結果に基づいた追加機能・インターフェース開発で、第2フェーズの研究である。まず、追加開発する機能として、受講計画通知メール設定の自由度アップと教材視聴回数増加の工夫を優先したい。単にこれらへのニーズが高かったばかりでなく、前者は受け忘れ防止効果、後者は繰り返し学ぶことによる定着効果が考えられるからである。また、インターフェースについては、スマートフォンを使う学生が多いことから、新たに(現在は存在しない)スマートフォン版の画面を作成し、アクセス時点でその学習者にとって必要な情報がコンパクトに表示されるようデザインしたい。 第二に、長期間、多様な環境で用いることによる効果の確認であり、第3フェーズの研究である。セルフレギュレータは、修了率の向上、自己調整力、特に学習計画力の向上、学習計画習慣の形成、教員・学習支援担当者の負担軽減という4つの効果を期待して開発されている。したがって、平成28年は、これらの本来的効果発揮するために、どのように用いればよいかも確認するために、コンテンツの数と種類、システム使用期間、学習者数などをいくつかのパターンで調整して、効果的な使用法の実証を試みる。
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Research Products
(9 results)