2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H02948
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 晋 京都大学, 文学研究科, 教授 (40156443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久木田 水生 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (10648869)
加納 靖之 京都大学, 防災研究所, 助教 (30447940)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古文書のWEB / 古地震学 |
Outline of Annual Research Achievements |
分担者加納靖之が重要な役割を担っている京都大学古地震研究会と連携して、研究を進めた。具体的には、既存ツールであるSMART-GSを古地震研究会における過去の地震関連史料の解読に利用してもらい、その使用経験から、古文書の翻刻支援に必要な機能を割り出し、その内、直ぐに実現できるものは実現し、そうでないものは、それを実現する方法を研究した。 前者としては、画像の開始位置の指定機能や、行きりだし情報ファイルの形式指定の方法などがあり、後者としては、手書き漢字の部首による検索などがある。前者は、直ぐに対応したが、後者は研究を進めているところで、まだ、実装には至っていないが、画像の何種類かの分割によるサーチや、画像サーチではなく逆に、翻刻結果から、ユーザが考える部首候補に類似した崩し字の部首を持つものを表示するという方式を考案したが、まだ実装には至っていない。また、このニーズ割り出しのために、タブレット型PC、Microsoft Surface Pro 3, 4 などを購入し、それに SMART-GSの現在の版を搭載して、古地震研究会に貸与した。 また、これと並行して、現在の SMART-GSの横書きテキストしか作れないという限界を破る、縦書き対応、かつ、TEI対応の、XMLベースのテキストエディタを搭載した、新しいSMART-GS の開発を進めた。これは、本研究の開始前より進めていた作業で、当初は、6月頃には完了するものと考えていたが、設計・実装に不具合が見つかり、ほぼ、一年度をかけて、その対応に追われる結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では、主に、退職者などの高齢者などの情報弱者を対象として、手書き入力を中心とした古文書翻刻支援システムのプロトタイプを、27年度中に完成して、アルバイトなどを使って、その使用感の向上を行う予定であったが、実際に研究を開始してみると、古文書のITを利用した解読に興味を示すのが、意外に、中年以下の世代であることが判明した。これには、最近「刀剣女子」という名前で、その存在がマスコミなどでも取り上げられた、20代の女性たちが含まれる。また、古地震研究会でも、その中心メンバーは、若い院生やPDたちであった。 さらには、次の「今後の研究推進方策」で示す、代表者、林の院生、橋本が作成した大阪大学のシステムで得られた、古文書解読教育への知見からすると、当初の「老人を主な対象とする」という仮定自体が、誤っていたと言わざるを得ない。本年度の遅滞の理由は、主となるプログラマの一人である代表者が体調と管理的多忙のために十分な作業を行えなかったとともに、当初の想定と異なる現実があったからであるが、現実の古文書に興味を示す人たちの把握に失敗していたこともあると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、主に、退職者などの高齢者などの情報弱者を対象として、手書き入力を中心とした古文書翻刻支援システムのプロトタイプを、27年度中に完成して、アルバイトなどを使って、その使用感の向上を行う予定であったが、京大古地震研究会との交流や、林の研究室の院生が大阪大学の科学研究費プロジェクトのために作成した古文書SNSの運用実績などから、「高齢者や、一部の専門家が、文書の所有者の依頼を受けて翻刻を行う」というモデルから「文書の所有者が、古文書を詠める様になることを手助けする」というモデルに、基本構想を変更しつつある。この林の院生が作成したツールは、本研究でも自由に使ってよことになっているため、これを元に、今年度の遅延を挽回する予定である。
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