2015 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴルのアイラグ(発酵馬乳)の製造法の地理学的・生態学的検証
Project/Area Number |
15H02963
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
森永 由紀 明治大学, 商学部, 教授 (20200438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高槻 成紀 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00124595)
尾崎 孝宏 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (00315392)
河合 隆行 新潟大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20437536)
石井 智美 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (50320544)
田村 憲司 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70211373)
上村 明 東京外国語大学, 外国語学部, 研究員 (90376830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アイラグ(クミス) / 伝統知 / 遊牧民 / モンゴル / 発酵食品 / Non Cow Milk |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、モンゴル人と問いを共有しながら名産地でアイラグ(馬乳酒)の製造法を記録し、製造法・栄養価や名産地について地理学的・生態学的な視点から検証する。初年度の平成27年度には、主に以下の結果が得られた。 1)名産地モゴド(Mgd、ボルガン県)および名産地以外の地域であるバヤンウンジュール(BU、トウブ県)とブルド(Brd、ウブルハンガイ県)の馬乳と馬乳の比較(2015年夏季調査、河合班)。1.名産地であるMgdでは,BUやBrdよりもアイラグを多量に生産,販売,消費していた。また,Mgdでは種菌を遠方の名産地から入手する家が多く,平均撹拌時間も他地域より長いなど,製造に手間暇をかけていた。これはMgdでは販売を目的に製造する家が他地域よりも多いためであると考えられた。2.馬乳とアイラグの成分のうち,Ca, P, Mgの濃度は,馬乳とアイラグで違いがないが,地域間では違いが見られた。地域の自然環境や飼育環境が馬乳に影響を与えている可能性が示唆された。 2)モンゴル国以外のアイラグ製造状況について(2015年夏季調査、尾崎班) 1.内モンゴル自治区においても1980年代以降、アイラグを都市部へ流通させる牧民が出現し始めたが、本格的な流通は過去10年の現象である。生産地域はシリンホト市とアバガ旗に限定され、その中で都市に近い少数の牧民が販売目的で生産している。2.内モンゴルにおいては、牧地面積を主要因として郊外および遠隔地の牧畜戦略に二極化しているが、アイラグは郊外の富裕な牧民にとっての選択肢の1つとして位置付けうる。遠隔地でのアイラグ生産も継続しているが、生産地域が限られるうえ、地域内でもごく少数の牧民が自給的に生産しているのが現状である。 3)アイラグ名産地における搾乳用の牝ウマの行動について2013年に観察したデータの解析より、移動距離や行動範囲が明らかになった(伊藤班)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)アイラグ製造法の記録と検証:特にウマの飼養に関する調査を重点的に行った。 (2)名産地での自然環境調査:良質な馬乳を産む自然環境(大気・草・水・土)の特徴の解明は、名産地とそれ以外の地域の馬乳およびアイラグの比較によりすすめた。 (3)名産地での社会科学調査:アイラグの製造法の歴史的変遷、ボルガン県のサイハン郡とモゴド郡が名産地となった由来の解明を、現地のインタビューによりすすめた。 (4)他地域との比較:モンゴル以外の国として、中国内モンゴル自治区でのアイラグ製造の状況を調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アイラグ製造法の記録と検証:発酵法について調査を進める。 (2)名産地での自然環境調査:良質な馬乳を産む自然環境(大気・草・水・土)の特徴の解明を、同一個所におけるアイラグ、馬乳、草、水、土の分析をすすめることで試みる。 (3)名産地での社会科学調査:アイラグの製造法の歴史的変遷、ボルガン県のサイハン郡とモゴド郡が名産地となった由来の解明を、現地のインタビューによりさらにすすめる。 (4)他地域との比較:ウマは多いがアイラグを多くは作らないモンゴル東部地域についても調査をすすめる。 上記に加えて、アイラグの「おいしさ」を検証するために、名産地で開催されるアイラグコンテストにおいて、高評価のものとそれ以外のものの成分分析を実施する。
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Research Products
(14 results)