2018 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッドメタ戦略に基づく汎用最適化ソルバー群の構築
Project/Area Number |
15H02969
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳浦 睦憲 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10263120)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今堀 慎治 中央大学, 理工学部, 教授 (90396789)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 組合せ最適化 / メタ戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,インターネットの整備,携帯端末の普及,計算機性能の進化など,情報技術が急速に発展し,大量の情報が身の回りにあふれている.それらから意味のあるデータを抽出したりそれらに基づく意思決定を行うため,大規模なデータを対象とした問題解決が欠かせないものとなってきている.その際に解くべき重要な問題として組合せ最適化問題がしばしば現れる.また,最近では携帯端末やタブレット端末などが普及し,それらを用いることで,最適化による計画のとおりに人や物を動かすことが実現しやすくなってきている.その結果最適化の重要性はますます高くなってきている.しかし,NP困難性に代表されるように,多くの組合せ最適化問題に対し,問題の規模が大きい場合,厳密な最適解を求めることは極めて困難であることが認知されている.このような問題に現実的に対処するための手法として,最適性の保証はないが,良質の解をできるだけ速く求めようとする近似解法がある.メタ戦略は探索型の近似解法を設計するパラダイムであり,その有用性は広く知られている.また,メタ戦略に種々の最適化手法を組み合わせたハイブリッドメタ戦略と呼ばれる枠組みが注目されている.しかし,この手法を用いて高性能なソルバーを開発するには職人的なセンスと大きな労力が必要である.そこで,多くの問題を解決できる最適化ソルバーがあれば便利であるが,1つのソルバーであらゆる問題にまんべんなく高い性能を得ることは難しい.本研究では,代表的な問題タイプごとに最適化ソルバーを開発することにより,幅広い問題の解決に役立つ汎用最適化ソルバー群の構築を目指すして研究を進めている.本年度は,カバー型の問題として代表的な集合被覆問題の一般化,車両のスケジューリングに関する複合問題など,一般的で複雑な問題に対する研究に重点を置き,一定の成果を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,多くの問題を定式化できる高い汎用性を備えつつアルゴリズムの性能向上に役立つ構造を持つ問題を複数選び,そのそれぞれに対してハイブリッドメタ戦略に基づくソルバーを開発する,すなわち,汎用最適化ソルバー群を用意しておき,解きたい問題のタイプに応じて適したソルバーを選ぶことで,幅広い問題に対応できるようにすることを目指している.ただし,汎用性を高めることを目的として,既存手法を単に一般化しただけでは,汎用性を高めることはできるものの性能が落ちてしまう懸念がある.本研究では,ハイブリッドメタ戦略の枠組みを基礎として新しい手法を導入することにより,各最適化ソルバーの性能・汎用性の両面を高いレベルで実現することを目指している.とくに,既存の数理計画ソルバーが苦手とする大規模な問題に対処できるような手法を実現するための技術の開発に重点を置いている.本年度は,カバー型の問題として代表的な集合被覆問題をより一般的に拡張した一般化上界制約付き集合多重被覆問題に対する研究や,車両のスケジューリングとメンテナンスのスケジューリングを統合した複合問題など,一般的で複雑な問題に対する研究を進めた.また,詰込み型の問題に対する研究も継続的に進め,とくにレクトリニア図形の詰込み問題に対する厳密解法の開発において一定の成果を得た.より大規模な問題例への対応を可能にするなどの課題はあるものの,概ね順調に研究が進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
詰込み型の問題に対する厳密解法の開発において一定の成果を得たので,今後はこのタイプの問題に対するメタ戦略ソルバーの性能を高めるためにその成果の利用を検討するとともに,汎用性を高めるための技術の開発に力を入れたいと思っている.また,組合せ最適化の代表的な問題構造として,グラフの独立集合のうち大きなもの求める問題が挙げられるが,これも詰込み型問題のひとつである.今後は図形の詰込みのみならず,このような詰込み型問題の代表例として,重み付き独立集合問題に対しても研究を進めたいと思っている.この問題の構造は比較的単純であるが,一見見かけの異なる多くの問題を記述できることが知られている基礎的な問題で,重要な問題の一つであり,この問題に対する高性能アルゴリズムの開発は重要な課題である.また,配送計画型の問題に対しても,1日単位でなく,より長期にわたる配送計画のスケジューリングを考慮する問題にも取り組む予定である.このタイプの問題は,エレベーターのメンテナンス,廃油の回収,ごみ収集,ガスボンベの配達など,多岐にわたる応用を持ち,それぞれの応用において様々な要望がある.それらをできるだけ広くカバーできるような汎用的な問題設定を考えたい.ハイブリッドメタ戦略はメタ戦略よりもさらに高度で複雑であるため,この考え方に基づいて高性能なアルゴリズムを設計することはしばしばアートであるといわれる.本研究では,以上のような具体的な検証を積み重ねるとともに,ハイブリッドメタ戦略の枠組みを整理し系統的な知見を蓄積することで,効果的なアルゴリズムの設計指針を与え,このような設計をアートから工学的手法へ改変することを目指したいと考えている.
|
Research Products
(6 results)