2015 Fiscal Year Annual Research Report
巨大災害下における避難民の生命・健康維持のための海陸一貫大量輸送システムの開発
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15H02970
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野 憲司 京都大学, 防災研究所, 教授 (10641235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 兼太郎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (10391682)
照本 清峰 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構, その他部局等, その他 (10416399)
赤倉 康寛 国土技術政策総合研究所, その他部局等, その他 (70462629)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マルチエージェントシミュレーション / 海陸一貫輸送 / ロイズ船舶動静データ / 自動船舶識別装置 / GPSトラッキングシステム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度は,1.大規模災害時の海陸一貫緊急支援輸送シミュレーションモデルの概念設計,2.大規模災害時の緊急支援物資輸送船の船型及び対応港湾施設の必要諸元の検討,3.マルチエージェントシミュレーションのパラメータ設定のためのデータ測定,を実施した. 1.については,災害時の混乱期に発生する様々な偶発的事象の下で,また港湾に被災による入港、接岸等制約の中で、緊急支援輸送に従事する船舶やトラックがどのような動静をみせ、どの程度の効率性を発揮するかに視点をあてたマルチエージェント型の数値シミュレーションモデルの開発を目指してその全体構成の決定を行った他,支援物資輸送トラックの行動モデルとして①車線数,右左折規則を含む街路データの構築,②災害発生下の交通環境・行動モデルの設定(容量低下・閉塞・回避,歩車錯綜,信号制御),③対象地域に発生・流入する交通量モデルの設定を行った.また,2.については,ロイズ船舶動静データやAIS(自動船舶識別装置)データ等を用いて東日本大震災時に自衛隊や重機類、緊急支援物資の輸送を行った船舶の船種,船型(総トン数,全長,満載喫水等)等データの収集,分析を行うとともに,震災時の緊急救援輸送実績に関する国等の報告書からこれら船舶を受け入れた港湾施設(岸壁延長,水深、荷役施設等)を明らかにした.また,これらの分析結果に基づいて海陸一貫緊急支援輸送シミュレーションで考慮すべき支援船モデルの設定方法を検討した.3.については,国土交通省大臣官房参事官(運輸安全防災)主催の首都直下地震想定海洋輸送演習(平成28年2月15日~16日)との連携の下に,演習に参加した輸送トラックにGPSトラッキングシステムを設置し,緊急支援物資揚地港湾から内陸集積所までの輸送動向データを取得し,トラック走行に関するモデルパラメータの検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していた①巨大災害後の緊急支援物資海上輸送や関連する陸上輸送の動静分析について,東日本大震災時の船舶の入出港や荷揚げ等港湾管理・運営に関する記録の収集・分析,自動船舶識別装置データ等を用いた緊急支援船の動静解析,緊急支援物資輸送船等動静の特性の抽出等を予定通り実施した他,②マルチ・エージェント・システムによる緊急支援物資の海陸一貫輸送のモデル化についても,陸上輸送のモデル化やパラメーター設定のための基礎的データの収集を行うなど一定の成果を見ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,まず海陸一貫緊急支援輸送の全体モデルの構築を実施する.すなわち, (1)マルチ・エージェント・システム(MAS)による海陸一貫緊急支援輸送数値モデルの開発:平成27年度研究で明らかにした災害緊急支援輸送船の航行特性や関連陸上輸送の特徴、港湾BCPの効果等を踏まえ、緊急支援輸送船の運航と被災地の物資集結場所までの陸上輸送を再現し可視化するMAS数値モデルを開発する。モデル開発は、これまでの研究において研究代表者(小野)が考案したフェリーによる緊急支援物資輸送シミュレーション・アルゴリズムを船舶輸送と陸上トラック輸送が港湾で結ばれるMASによる海陸一貫輸送システムに拡張して実施. (2)緊急支援輸送船等の動静分析との比較・MASモデルの再現性の評価:開発したMASモデルについて東日本大震災時の災害時の緊急支援物資輸送船等のAIS等の動静記録と比較することによってモデルの再現性、妥当性を評価し、モデルの更なる精度向上を図ることに主眼を置くこととする. また,緊急支援輸送需要の時系列変化定量評価手法の開発に着手することとし,平成27年度研究で明らかにした東日本大震災時の緊急支援輸送需要の時系列変化等の分析成果に基づいて、時系列的に変化する緊急支援物資の需要量を推定するための数値モデルを作成する。その際、①緊急支援物資の必要需要量モデル、②これら物資の適切な輸送手段と輸送形態別の量の推定モデル、③海上輸送によることが好ましい物資の種類を特定するためのモデル、の3段階推計モデルの開発を念頭に置く。
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Research Products
(5 results)