2015 Fiscal Year Annual Research Report
フルスケール雪崩実験と多項式カオス求積法を用いた次世代型雪崩ハザードマップの作成
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15H02992
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西村 浩一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10180639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前野 深 東京大学, 地震研究所, 助教 (20444078)
河島 克久 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (40377205)
西森 拓 広島大学, 理学研究科, 教授 (50237749)
上石 勲 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 雪氷防災研究センター, 総括主任研究員 (60455251)
山口 悟 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (70425510)
小田 憲一 日本大学, 理工学部, 助教 (70632298)
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (80303593)
竹内 由香里 国立研究開発法人 森林総合研究所, 気象環境研究領域, チーム長 (90353755)
常松 佳恵 山梨県富士山科学研究所, 火山防災研究部, 研究員 (90722207)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 雪崩実験 / ハザードマップ / 多項式カオス求積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは、①国内ではおよそ25年ぶりとなる組織的なフルスケール雪崩実験(通称:平成雪崩大実験)を北海道のニセコで実施して雪崩の包括的データを取得する。そのうえで②雪崩発生箇所,規模,底面や内部摩擦等のモデル入力値がもつ不確定性を、多項式カオス求積法(Polynominal Chaos Quadrature:PCQ法)を応用して考慮する次世代型雪崩ハザードマップの作成を最終目標としたプロジェクトを4年計画で開始した。 本年度は、12月9日から12日にかけてニセコ町の町民センターにおいて国際シンポジウムを開催し、初日は「雪崩発生危険度を予測する」と題して、スキーヤー、スノーボーダー、スキー場管理者、行政管理者等、一般の方々を対象とした公開講演会を、また10日から12日にかけては、「積雪の構造」、「雪崩のダイナミクス」、さらには今冬からニセコで実施予定の「人工雪崩実験」をテーマにワークショップを実施した。フランス、スイス、英国、スペイン、ノルウェーから計10名の研究者を迎えるとともに、国内からも雪氷、気象、火山、地震、数理科学の分野の研究者が集い、積雪や雪崩に関する最先端の研究内容について報告と議論が行われた。述べ4日間と比較的長丁場ではあったが、初日のシンポジウムは200人超、翌日からのワークショップも日々60人程度の参加者があり、積雪と雪崩(なだれ)を多角的視点から論じる数々の興味深い発表とそれに続く活発な議論が交わされた。 また、2月から3月にかけては、当地の見返り坂と水野の沢において、実際に雪崩を発生させる試みも数回にわたり行われた。特に3月28日に水野の沢で火薬を爆破させて実施された人工雪崩実験では、地震計やインフラサウンド計測用マイクロフォンによる観測も行われたほか、ドローンによる雪崩の動態の撮影や実験斜面の数値地形情報の取得にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
12月にニセコ町で開催された国際シンポジウムでは、4日間とも多数の参加者があり、活発な議論が交わされた。特に国外の参加者からは、スイスやフランス,ノルウェーなどの大規模な雪崩とは異なる、我々のニセコでの「小さい雪崩」を対象とした実験に深い興味が寄せられ、新規の測定項目や手法,さらには自らが使用しているレーダーなどの機器の貸与に至るまで、多くの提言が会期終了後も相次いで寄せられ、今後の研究進行の幅が大きく拡大した。 また、ニセコ町や当地のスキー場関係者の全面的な支援のもと、実際に本年度も何回か雪崩を人工的に発生させる試みが行われ、その手法をほぼ確立することもできた。とりわけ、3月28日の実験では、約500mの距離を流下する雪崩の発生に成功し、その動態や地震動、空振の計測に成功した他、雪崩の実験斜面の詳細な地形をドローンにより把握するなど、予想以上の成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、下記の要領で、冬期に雪崩実験を実施するとともに、ハザードマップ作成に向けてモデルの比較検討と改良を実施する。 ① 夏季には対象とする走路上に5m程度の高さの測定タワーを建立し、秋季から初冬にかけて上記のタワーに各種測定機器を設置する。28年度の厳冬期(2月)と融雪期(3月下旬)に、それぞれ乾雪と湿雪雪崩を想定した人工爆破によるフルスケール雪崩実験を実施する。測定項目おおよそ以下の通りで、すべて出力を一台のデータレコーダ(に集中して記録させる。 1. 光センサーを用いた雪崩内部速度構造の把、2. ロードセルによる雪崩衝撃力の測定 3. 微差圧変動、Snow Particle Counter、超音波風向風速計による雪煙り層の内部構造の測定、4. 高速ビデオ撮影による雪崩全体像の把握、5. 地震計とインフラサウンドの測定による雪崩発生のモニタリングと内部構造の解明、6. 赤外放射温度の測定による雪崩熱力学の解明、7.ドローンによる雪崩発生量、走路上での削剥量、そして堆積量の把握、8. パルスドップラーレーダ(ノルウェーとの共同研究)を用いた雪崩速度の計測。 ② Titan2Dを含む浅水方程式に基づく複数の2次元雪崩モデルについて比較検討のほか、非線形物理学の観点から新規のアルゴリズムを組み込んだ粒状体流れの物理モデルの導入、雪崩モデルの3次元への拡張についても検討を進める。 ③ ハザードマップ作成シナリオについても精緻化を行い、フルスケール雪崩実験の結果と、雪崩災害データベースから得られた、底面摩擦や内部摩擦係数、発生量などの確率分布について現実的な値を用いて試験的に計算をおこない、安定性や結果の妥当性について検討を進める。
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Research Products
(12 results)