2015 Fiscal Year Annual Research Report
気流構造の解明に基づくノンスーパーセル竜巻の発生予測の高精度化
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15H02994
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
佐々 浩司 高知大学, 自然科学系, 教授 (50263968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 理恵 高知大学, 自然科学系, 准教授 (80253334)
宮城 弘守 宮崎大学, 工学部, 助教 (90219741)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 竜巻 / レーダー / 突風災害 / 室内実験 / PIV |
Outline of Annual Research Achievements |
冷気外出流模擬装置を用いたノンスーパーセル竜巻の発生環境を再現する実験について、模擬装置を全面的に改修し、詳細なパラメータワークを実施した。これにより、冷気外出流の速度を増して水平シアーを大きくしたり、上昇流の速度を上げるだけでは竜巻は発生しにくくなり、冷気外出流と上昇流の速度比に竜巻発生に適する関係があることを明らかにした。 また、宮崎大学のマルチファン型風洞を用いて、より大規模な竜巻発生環境の再現実験を開始し、初めて一般場の一様風を再現した環境で竜巻状渦を形成することに成功した。 2014年7月10日に台風のアウターレインバンド中で発生した竜巻事例について本学のレーダーや気象庁室戸レーダーを用いた詳細な解析を進めた結果、発生初期には通常のスーパーセルとは全く異なりインフローが進行方向背後から流入するものであったこと、インフローの供給が弱まった時点でスーパーセルの形態を失ったものの、アウターレインバンド内の強い水平シアーによって竜巻は長時間維持したことなどを明らかにした。これは、代表者の知る限り世界で初めて観測された特異な事例であり、今後の竜巻研究の視野を広げるものと期待している。 また、気象庁室戸レーダーを用いて過去5年間の降水システムを調べた結果、線状降水帯や団塊状のシステムなどに総計1000弱の渦を見出し、その統計的特性を明らかにすることができた。これらを今後詳細に調べることにより、激しい降水に関連するものや、竜巻の元となるものなどの特性を見極めることが可能になると期待している。 モデル解析については、2014年7月10日の竜巻親雲の発生環境について気象庁メソ数値予報モデル初期値を使った解析を行い、台風内のミニスーパーセル発生環境を満たしていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発生環境を再現する室内実験については、冷気外出流の速度と上昇流の速度との関係や、冷気外出流の温度の影響などについて竜巻発生に適する条件が明らかになり、初年度から大きな成果が得られた。 レーダー解析については2014年に発生した事例について詳細な解析が進み、台風アウターレインバンド内で通常のスーパーセルとは全く異なる形態のスーパーセルが発生したことや、その後スーパーセルの形態を崩しながらも竜巻を維持し続けた様子など、極めて重要な知見が解明された。また、土佐湾を含む高知周辺の降水システム中の渦の発生状況について詳細な統計情報を得ることができた。 一方、画像解析については一部の事例解析を明らかにするにとどまっており、パターン抽出などは進展していない。また、モデル解析についても現状は環境場の大まかな評価にとどまっている。 実験とレーダー解析については上記のように当初の計画以上の進展を見せたが、画像解析とモデル解析はやや遅れをみせていることから、総合的には、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
室内実験については、現状の方法における限界も明らかになってきた。これは冷気外出流と上昇流の対応関係についてであるが、現実の気流構造には存在している一般場の風が再現できていないことが大きな問題である。これについての解決策は宮崎大学のマルチファン風洞を用いた試験により、具体的な目処が立っている。今年度は、一般風の場を加えた実験を小型装置と、マルチファン型風洞を用いた大規模実験の二つの実験を平行して進めることにより、詳細に明らかにしていく。 レーダー解析については、本学の3台のレーダーで常時観測を続けており、事例が発生すれば詳細な観測解析を行う。2014年の竜巻事例については本年度中に査読付き論文としてまとめる予定である。また、室戸レーダーも含めて、渦の自動検出アルゴリズムを用いることにより、より客観的な渦の統計情報を高度情報も含めて解析していく。 画像解析は明瞭な映像が多数収録されているつくば竜巻の解析を進めるとともに、自動パターン認識アルゴリズムの開発を進めたい。 モデル解析については研究室所有のクラスタマシンにインストール済みのWRFを更新する作業を実施中であり、作業終了後、2014年の事例を含む解析を進める予定である。そのさい、特に親雲周辺の気流構造を明らかにすることによって、竜巻渦の発生環境を調べていく。
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Research Products
(15 results)