2016 Fiscal Year Annual Research Report
完全偏極を指向した超偏極希ガスMRIによる革新的肺機能診断システムの開発と応用
Project/Area Number |
15H03006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 敦臣 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70303972)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 超偏極キセノン / MRI / 肺機能診断 / 前臨床評価 / 難治性肺疾患 / 新薬探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
当課題にて開発した完全偏極キセノン製造装置において、光ポンピング法にて利用するガラスに酸化Rb(触媒)による劣化が生じて長期間の使用に耐えないことが問題となった。そこで、レーザー出力を落としつつ完全偏極を達成するための条件を最適化したところ、170Wの出力にて完全偏極を達成しつつ、従前通りの使用期間に耐える事を確認した。 一方、完全偏極キセノンMRIの3次元化を図ることを念頭に、マルチスライスイメージングの基礎検討を行った。この際、新たな肺機能パラメータとしてスライス内におけるキセノンの平均滞在時間を導入し、これを評価するための画像取得法および解析の数理モデルを構築した。本手法によって、健常マウスの肺機能を評価したところ、妥当な診断結果が得られることを確認した。 完全偏極キセノンMRIによる前臨床評価では、引き続き難治性肺疾患の新薬候補の探索を行うべく、肺線維症モデルマウスに対するアログリプチン(ALG)の薬効評価を遂行したが、全く奏功しないことが判明した。難治性肺疾患については、傷害関連分子パターンであるHMGB1が関与することが示唆されているが、HMGB1は活性を調節すると逆説的に組織修復作用を示す。これまで、ピルビン酸エチル(EP)がHMGB1シグナルを下方制御することで治療効果を示すことを明らかとしてきた。この結果は、EPが炎症関連因子(NF-κB)の不活化と細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1/2)の活性化を協奏的にもたらしたことによると思われた。これに対して、ALGはNF-κB不活化を伴わずHMGB1シグナルを上方制御するため、組織修復作用を示さなかったものと考えられた。このようにして、肺線維症の創傷治癒と肺機能改善機構として、HMGB1シグナル伝達制御を示唆した成果を挙げる事ができ、完全偏極キセノンMRI前臨床評価系の実効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
プロトタイプの連続フロー型完全偏極キセノン製造装置開発に成功し、MRI肺機能診断を問題なく遂行できた。撮像法としてマルチスライスイメージングの基礎検討も併せて行い、完全偏極キセノンMRIの3次元化に先鞭をつけた。ここでは、新たな肺機能パラメータとしてスライス内におけるキセノンの平均滞在時間を導入し、これを評価するための画像取得法および解析の数理モデルの妥当性を検証した。 完全偏極キセノンMRIによる肺機能診断を用いた前臨床評価では、難治性肺疾患である肺線維症モデルマウスの治療薬候補としてピルビン酸エチル(EP)およびアログリプチン(ALG)の薬効を詳細に観察・比較し、EPの創傷治癒機構を調べることができた。この結果、肺線維症における傷害関連分子パターン(HMGB1)の関与を明らかとするとともに、EPの持つ肺機能改善および組織修復機構として、NF-κB不活化によるHMGB1シグナル伝達制御とERK1/2活性化の協奏的な関与を示唆することに成功した。以上の成果は、当初計画を上回る進捗により得られたもので、超偏極キセノンMRIによる肺機能診断の高感度化・精細化、ならびに難治性肺疾患の治療戦略確立に貢献すると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
完全偏極キセノン製造装置開発の根幹部分を終了し、今後はMRI肺機能診断による難治性肺疾患の前臨床評価と新薬探索に注力する。これまで慢性閉塞性肺疾患および肺気腫、肺線維症の前臨床評価を行った結果、ピルビン酸エチル(EP)を新薬候補として見出した。このEPの持つ組織修復と肺機能改善の発現機構として、NF-κB不活化とHMGB1シグナル伝達制御、ならびにERK1/2活性化の協奏的な関与が重要であることが示唆されたので、この知見に基づいて更なる治療法探索を進める。以上の成果は、当初の予想以上に進展して得られているため、さらに難治性肺疾患として肺がんも取り上げたい。
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Research Products
(6 results)