2016 Fiscal Year Annual Research Report
免疫誘導機能の統合による高活性抗原ナノキャリアの創製と免疫治療への展開
Project/Area Number |
15H03024
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
弓場 英司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80582296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇高 恵子 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (40263066)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | pH応答性高分子 / リポソーム / 膜融合 / 樹状細胞 / 細胞質デリバリー / TGF-β / 細胞傷害性T細胞 / ナノワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度までに構築したpH応答性多糖やポリグリシドール誘導体を固定化したリポソームによる免疫誘導システムに、アジュバント分子を導入することで、そのがん免疫誘導機能の向上を目指した。さらに、免疫抑制状態を解除する低分子薬剤を包埋したリポソームとの併用に関しては、腫瘍組織内のリンパ球を解析することで、その免疫誘導メカニズムを調べた。 前年度までに強力な抗原デリバリー機能を持つことが明らかとなったカードラン誘導体修飾リポソームに、カチオン性脂質を導入すると、カチオン性脂質を含まない場合に比べて免疫細胞の活性化機能が100倍以上向上することを発見した。カードラン以外の多糖誘導体やカチオン性脂質の種類・導入量についても検討したところ、特定の多糖とカチオン性脂質の組み合わせが、免疫細胞の劇的な活性化に重要であることが明らかになりつつある。 ポリグリシドール誘導体を修飾したリポソームにMPLA、CpG-DNAなどのトル様受容体リガンドを導入するとそのがん免疫誘導効果を増強でき、担がんマウスにおいてその治療効果を確認した。特に、モデル抗原オボアルブミン(OVA)由来のペプチドを用いても強力ながん免疫の誘導に成功しており、ペプチドワクチンの効果を増強できる抗原キャリアとして期待される。 免疫抑制に関わるTGF-βシグナルを阻害する低分子薬剤・SB505124を包埋したリポソームを尾静脈投与し、pH応答性多糖修飾リポソームを皮下投与した後、腫瘍内のリンパ球の割合を解析したところ、免疫抑制に直接関わる制御性T細胞の割合は変化していなかったのに対し、細胞傷害性T細胞の割合が大幅に増加しており、その結果、抗腫瘍免疫が増強された。 ヒト由来がん抗原ペプチドのスクリーニングを行うとともに、モデルペプチドを用いてペプチド特異的な免疫を効果的に誘導するためのリポソーム組成の最適化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度までに最適化したpH応答性多糖(カードラン)修飾リポソームに、カチオン性脂質を導入することで、極めて強力な免疫活性化システムの開発に成功した。これまでに、特定の多糖とカチオン性脂質の組み合わせによって、相乗効果が得られることが明らかとなっている。また、MPLA、CpG-DNAといったアジュバント分子の組み込みによって、pH応答性高分子修飾リポソームのがん免疫誘導機能の増強に成功した。これらの成果は、免疫誘導に必要な機能を統合化することの重要性を示す根拠となる。免疫抑制状態を解除する低分子薬剤を包埋したリポソームとの併用に関しては、その免疫誘導メカニズムを調べた。リポソームを用いて低分子薬剤を全身に分布させ、TGF-βシグナルを抑制することで、細胞傷害性T細胞を効果的に活性化できることを明らかにしている。また、モデル抗原ペプチドによる免疫誘導システムを確立するとともに、次年度検討予定のヒト腫瘍由来の抗原ペプチドのスクリーニングを行い、特許出願を行った。このように、本年度予定していた実験が完了したことに加え、特定の多糖とアジュバントの組み合わせによる効果的な免疫誘導システムの発見にも成功しており、当初の計画以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において、pH応答性高分子修飾リポソームへのアジュバント機能分子の導入により、強力な免疫誘導システムの開発に成功した。特に多糖誘導体とカチオン性脂質の組み合わせによって、極めて強力な細胞活性化システムの開発に成功したため、次年度は、この活性化メカニズムを明らかにするとともに、担がんマウスに対する治療効果の検討を行う。さらに、これまでに検討したCpG DNA導入リポソームや免疫抑制解除リポソームなどの個々のシステムを統合し、強力な免疫誘導システムの構築を行う。このようにして最適化した免疫誘導システムについて、モデル抗原タンパク質・ペプチドだけではなく、がん抗原ペプチドを用いた検討を進める。具体的には、ヒト型のMHC分子を発現するトランスジェニックマウスに、ヒト腫瘍抗原ペプチドを封入した抗原キャリアを投与して、抗原特異的な免疫誘導について調べるとともに、免疫治療実験を行い、本免疫誘導システムの有用性・実用性を明らかにする。
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Research Products
(35 results)
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[Journal Article] Dual-stimuli responsive liposomes using pH- and temperature-sensitive polymers for controlled transdermal delivery2017
Author(s)
N. Yamazaki, T. Sugimoto, M. Fukushima, R. Teranishi, A. Kotaka, C. Shinde, T. Kumei, Y. Sumida, Y. Munekata, K. Maruyama, E. Yuba, A. Harada, K. Kono
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Journal Title
Polymer Chemistry
Volume: 8
Pages: 1507-1518
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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